食品安全情報blog過去記事

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蚊が「蚊帳の周りを動き回る」

Behind the Headlines
Mosquitoes 'getting around bed nets'
Thursday August 18 2011
http://www.nhs.uk/news/2011/08August/Pages/mosquitoes-resistance-insecticide-bed-nets.aspx
Daily Telegraphが「アフリカでマラリア対策のために広く推進されている殺虫剤処理蚊帳が、その地域の疾患再興と関連するかもしれない」と報道した。新聞はセネガルのある村での研究で、蚊がネットに使用してある殺虫剤に耐性を獲得したことが示されたと言う。
この研究は殺虫剤処理蚊帳の導入前後の2007年と2010年の間の504人のマラリア感染率について調べたものである。研究は質が高い。村民について、毎日熱やマラリアの症状を監視し、ネットの使用状況を評価した。また蚊を捕まえて蚊帳に使われている殺虫剤への耐性を調べた。蚊の遺伝子変異も調べた。この研究では、蚊帳の導入後最初の2年は、新たなマラリアの発症は1/5以下に減ったが、27-30ヶ月後にはもとの率に戻った。また蚊の殺虫剤耐性率が増加したことがわかった。
研究者らはマラリア頻度の再上昇は一部は蚊の耐性獲得によることを示唆している。しかしマラリアへの暴露が減ったため免疫を失ったことも理由にあるのではないかと推測している。この二つ目の理論はこの研究では検討されていない。
この重要な研究は殺虫剤処理蚊帳のみでは長期のマラリア根絶には有効ではないかもしれないことを示す。しかしこの研究はアフリカの小さな1つの村でのものであるという限界もある。他の系統的レビューでは殺虫剤処理蚊帳が子どもの死亡を1/5にしマラリア感染を半分にしたと結論している。蚊の耐性獲得も考慮した効果的戦略を見つけるためのさらなる研究が必要である。