食品安全情報blog過去記事

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原子力発電所事故の健康リスク

Health Risks f Accidents at Nuclear Power Plants
N Engl J Med 2011; 365:962-964September 8, 2011
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1108132
6月の以下のペーパーへのコレスポンデンス
Short-Term and Long-Term Health Risks of Nuclear-Power-Plant Accidents
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra1103676
原子力発電所の事故に関連する健康影響についての簡潔なレビュー)
Craig Van Dyke博士ら
このレビューに心理的社会的影響についての考察が含まれていない。福島の事故では放射線による物理的影響よりそちらのほうが遙かに大きいだろう。この事故の精神影響評価をして帰ってきたばかりだが、我々は人々の回復力に感動したが同時に不安が拡がっていることにも衝撃をうけた。多くの保護者が食品や水の安全性を心配し、自分や子どもの「除染」で頭がいっぱいである。避難地域から移ってきた人達の多くが何時帰れるのかわからないままに抑鬱状態になっている。スリーマイルやチェルノブイリでも同様の心理的問題が報告されており、時間が経つとともに悪化した。さらに我々は福島の住民が放射能をもっていると見なす他の人達から汚名を着せられ疎外されたというたくさんの事例を聞いた。第二次世界大戦の時の原子爆弾の生存者が「ヒバクシャ」と呼ばれ、汚染され遺伝子に傷害があると懸念されたために何十年も同様の仕打ちを受けた。このような心理的問題は相当な健康リスクである。
著者John P. Christodouleasからのお返事
Van Dyke博士らに合意する。原子力発電所の事故による心理的影響は重要であり、読者には最近のチェルノブイリ事故の精神衛生に関するレビューを紹介する。福島で観察されていることは、事故当時に小さな子どもがいた女性の長期精神疾患リスクが増加することを示唆したチェルノブイリ事故の場合と一致している。
他にチェルノブイリではI-131だけではなくI-133が甲状腺被ばくの30-50%を占め、Te-132がI-132になったことも甲状腺腫瘍増加に寄与しているとの指摘など。極近くの住民はそれが関係するが全体の中では食品中I-131の寄与が大きかっただろうとの著者からのお返事。
文中で紹介されているレビュー
Bromet EJ, Havenaar JM, Guey LT. A 25 year retrospective review of the psychological consequences of the Chernobyl accident. Clin Oncol (R Coll Radiol) 2011;23:297-305
(こういうのがあるので「除染」方法とか教えている人達は事態を改善しないだろう。多分気にしないのが一番なんだろうけどそれを言うと石を投げられる。)