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ペッパー(ピーマン)がパーキンソン病を予防するか?専門家の反応

SMC
Peppers preventing Parkinson’s? – Experts respond
May 10th, 2013.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2013/05/10/peppers-preventing-parkinsons-experts-respond
新しい研究が食事からのニコチン摂取がパーキンソン秒を予防する効果があるかもしれないことを示唆する。しかし独立した専門家は臨床的に意味のある効果があるかどうかは疑わしいとしている。
今週Annals of Neurologyに発表された研究で、ペッパーやトマトのような微量のニコチンを含む食品を食べることがパーキンソン病発症リスクを下げるかもしれないことを示唆した。米国の研究者がパーキンソン病患者と健康な対照群の生涯食事習慣を解析し、食事要因とパーキンソン病頻度にわずかな関連を見いだした。特に、ニコチンを含む食品がパーキンソン病保護作用があるように見えた。
英国SMCが以下の専門家のコメントを集めた。
St George’s 病院NHSトラスト主任栄養士Catherine Collins
この研究の著者らは植物由来抗酸化物質が多く炎症誘発性の脂肪が少ない食生活−いわゆる地中海スタイルの食生活−がパーキンソン病から守る作用があることを付け加えている。人々は各種野菜に多様な量のニコチンが含まれると知って驚くかもしれない。ジャガイモ、トマト、ペッパー、唐辛子、ナス、カリフラワーなどに多様な量のニコチンが含まれる。この研究で研究者らが用いたのは食べる頻度を尋ねた(量ではないことに注意)標準的食品質問票である。ニコチンについての示唆はあるもののペッパーを宣伝するほど十分なものではない。何故か?ニコチン含量は栽培条件や貯蔵、収穫、調理によって異なる。例えばグリーントマトは熟したトマトより10倍ニコチンを多く含む。ニコチンは吸収しにくく、他の食品がどう相互作用するかもわからない。著者がディスカッションで述べているように、悪魔は細部に宿る。我々が食べている植物には数千もの生理活性のある物質が含まれる。ペッパーや唐辛子を単独で食べることはあまりなく、影響があるのは一緒に調理される他の食品かもしれない。過去10年以上にわたって研究者が明らかにしてきたのは、健康にメリットがある特定の野菜や野菜グループを単独で抜き出すことは不可能である。地中海ダイエットは単なる個別食品の合計ではない。我々が現在知っているのは食生活が健康に影響するということだけで、食事の中野特定の成分を正確に同定することはできない。

英国パーキンソン協会研究コミュニケーションマネージャーClaire Bale
この研究ではペッパーを少なくとも週に2回食べる人たちのパーキンソン病発症リスクが約30%少ないことを発見した。これは意味があると思われるかもしれないが、一般人のパーキンソン病発症リスクが500分の1と既に低いので、リスクの削減効果は実際には小さい。この研究は1000人ほどの小規模研究で、この種の研究で結果を出すにはもっと多くの人数が必要である。さらに研究対象は平均60代半ばで、パーキンソン病の発症はしばしばもっと後である。
King’s College 病院顧問神経科医で神経学教授K Ray Chaudhuri
ニコチンとパーキンソン病の関連についてはこれまでも研究があり複雑なことが知られている。神経保護作用があるのではと言われていることからニコチンパッチがどう影響するかについての大規模試験NIC-PDが行われている。その結果を待つべきであろう。

UCL神経科学教授John Hardy
疫学研究の問題の一つは多重比較にある。数多くの検定を行ってポジティブだったものだけが報告されるので真の有意を評価するのは困難である。パーキンソン病とペッパーの関連は多分偽陽性で、騒ぐことではない。