食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文等

  • 前立腺がん予防試験参加者の長期生存

Long-Term Survival of Participants in the Prostate Cancer Prevention Trial
Ian M. Thompson, Jr.,et al.,
N Engl J Med 2013; 369:603-610August 15, 2013
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1215932?query=TOC
フィナステリドによる前立腺がん予防試験(PCPT)の18年間フォローアップデータの解析で前立腺がんリスクは約1/3減ったが悪性の前立腺がんはフィナステリド群の方が多い。全体の生存率および前立腺がんと診断されてからの死亡率に差はなかった。カプランマイヤー曲線ほぼ一致。
(抗アンドロゲン薬。前立腺肥大治療用の薬。海外で男性脱毛の薬としても販売されているので個人輸入しているヒトがいるようだ。がん化学予防はなかなかうまくいかない。何の話かって?食品の機能性で病気予防とか言ってる人たちの無責任ぶり。フィナステリドには明確な抗アンドロゲン作用があって大きくなった前立腺を小さくする作用はある。それでもがん予防効果は微妙。まして毎日食べるわけでもなく量もばらつく食品では期待するほうが無理。)

Mediterranean diet and glycaemic load in relation to incidence of type 2 diabetes: results from the Greek cohort of the population-based European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition (EPIC)
M. Rossi et al.,
Diabetologia
DOI 10.1007/s00125-013-3013-y
http://www.diabetologia-journal.org/からダウンロードできる)
22295人を中央値で11.34人フォローし、2型糖尿病は2330症例。
地中海食は2型糖尿病頻度と逆相関(HR 0.88 [95% CI 0.78, 0.99] for MDS ≥6 vs MDS ≤3)、血糖負荷(GL :GI×食べる量)は正の相関(HR 1.21 [95% CI 1.05, 1.40] for the highest vs the lowest GL quartile).
(重要なポイントはGLが高いことと2型糖尿病の関連はBMIに関係なかったこと。つまり太っていなくてもGLの高い食生活は糖尿病リスクの高さと関連する。油が少なくて白いご飯を主なカロリー摂取源にする和食メニューが、日本人の、肥満ではない糖尿病を説明できる。もう一つの候補はヒ素なのだけれど。)

  • コーヒー摂取と全ての原因での、および心血管系疾患での死亡率の関連

Association of Coffee Consumption With All-Cause and Cardiovascular Disease Mortality
Junxiu Liu et al.,
Mayo Clinic Proceedings
Available online 15 August 2013
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0025619613005788
43727人からなるエアロビクスセンター縦断研究、フォローアップ期間の中央値は17年。
多変量解析でコーヒー摂取と男性の全原因での死亡率に正の関連。州に28杯以上のコーヒーを飲む男性は全原因での死亡率が高い(ハザード比 [HR], 1.21; 95% CI, 1.04-1.40)。年齢階層別では55才未満の男女でコーヒー摂取と死亡率に関連があった。

  • 鉛に暴露された子ども達は学校を停学になる可能性が3倍

Children exposed to lead 3 times more likely to be suspended from school
14-Aug-2013
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-08/uow-cet081413.php
Environmental Researchに発表された

  • 女性の5人に1人は自分の乳がんリスクを信じない

1 in 5 women don't believe their breast cancer risk
15-Aug-2013
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-08/uomh-1i5081513.php
家族歴や個人史を考慮したテーラーメードリスク評価であっても信頼されていない
Patient Education and Counselingに発表。

  • 気候変動はさくさくした堅いリンゴを脅かす

Natureニュース
Climate change threatens crunchy, tart apples
15 August 2013
http://www.nature.com/news/climate-change-threatens-crunchy-tart-apples-1.13567
暖かい気候はフジのような品種が40年前より柔らかく甘くなることを意味する
Scientific Reportsに発表された、日本の果樹園での40年の研究。
Changes in the taste and textural attributes of apples in response to climate change
Toshihiko Sugiura et al.,
Scientific Reports 3, Article number: 2418
http://www.nature.com/srep/2013/130815/srep02418/full/srep02418.html

  • さらに

Natureエディトリアル
In addition
14 August 2013
http://www.nature.com/news/in-addition-1.13547
米国の食品添加物監視に利益相反とデータ不足が混じる
米国で販売するご馳走を作る料理人は料理に使うものを10000以上の食品添加物の中から選ぶことができる。そのうち43%はGRAS(一般的に安全と認められる)でFDAの認可を必要としない。このシステムでは製造業者がGRASかどうかを評価する。評価したらFDAに通知することになっているが義務ではない。系統的にコンプライアンスを評価するシステムはないが、2010年にFDAはカフェイン入りアルコール飲料について4製造業者中4業者が必要とされるチェックを行っていなかったことで取り締まられた。
製造業者がGRASの通知をしてもその評価の質に疑問がある。ワシントンのPew Charitable Trustsの現在進行中のプロジェクトではデータ不足を明らかにしている。毒性データについてはFDAの推奨する動物実験を行っているのはGRASの38%以下であった。また同じチームの別の解析では451件のGRAS通知を解析したところ、利益相反を避けるためにFDAは独立した専門家委員会による評価をすべきとしているがどれもしていなくて、22%は製造業者の従業員が行っていた。
今週FDAはNatureに対してGRAS条件を満たすためのガイドラインを発表する予定であると語った。
Data Gaps in Toxicity Testing of Chemicals Allowed in Food in the United States
Thomas G. Neltner et al.,
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0890623813003298
オープンアクセス
Conflicts of Interest in Approvals of Additives to Food Determined to Be Generally Recognized as SafeOut of Balance
Thomas G. Neltner et al.,JAMA Intern Med. 2013;():-.
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1725123
(GRASの中にはただの食品のようなものも入っているので数だけでどうこう言えない。例えば「魚油」に毒性試験が必要か、「スピルリナ」などは日本では通知も評価もしてないのでは、など)