食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

EFSAは2つのネオニコチノイドと発達神経毒性の関連の可能性を評価

EFSA assesses potential link between two neonicotinoids and developmental neurotoxicity
17 December 2013
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/131217.htm
2つのネオニコチノイド殺虫剤−アセタミプリドイミダクロプリド−が発達中のヒト神経系に影響するかもしれない、とEFSAがいう。EFSAの専門家がいわゆる発達神経毒性(DNT)について、より信頼できるデータを得るためのさらなる研究が行われるまでの間、2つのネオニコチノイドの一部の許容暴露量を下げることを提案している。EFSAのPPRパネルは、農薬の認可プロセスの一環としてDNT試験データの提出を義務づける条件についてEUレベルでの定義を求めている。その中には全てのネオニコチノイドを含む、化合物のDNTを評価するための包括的試験法開発も含む。
EFSAは欧州委員会からの要請により最近のKimura-Kurodaの研究とアセタミプリドイミダクロプリドが発達中のヒト神経系、特に脳を損傷する可能性についての既存データについて検討した。
PPRパネルはアセタミプリドイミダクロプリドが発達中の神経や、学習や記憶のような機能と関連する脳の構造に有害影響を与えるかもしれないことを見いだした。一部の現状のガイダンスレベルは発達神経毒性に対して十分保護できるものではない可能性があるため下げるべきだと結論した。以下の変更を提案している。
アセタミプリドについては:現行のADI と AOEL  0.07 mg/kg bw/per day およびARfD   0.1 mg/kg bw を 0.025 mg/kg bw (per day)に
イミダクロプリドについては:現行のAOELとARfD  0.08mg/kg/bw/dayを0.06 mg/kg bw/per dayに。ADIについては十分であると考えられる

(注:この数字はEPAのDNT試験を根拠にしたもの。現行は慢性毒性や二世代生殖毒性試験が根拠。DNT試験のいろいろな指標の毒性のエンドポイントとしての評価がまだ微妙)
EFSAは入手できる根拠は限定的で、しっかりしたデータを得るためにさらなる研究を薦めている。しかしながら既存のデータをレビューして提示された懸念には正当性があり、認可プロセスの一環としてDNTデータの提出を義務づけるための明確で一貫した判断基準を作ることを支持する。それには細胞を用いたin vitro試験を最初に行い、もしそれで問題があれば動物実験に進むという段階的アプローチからなる総合的DNT試験法の開発も含む。そのような試験法で全てのネオニコチノイドを評価することを助言する。

Scientific Opinion on the developmental neurotoxicity potential of acetamiprid and imidacloprid
EFSA Journal 2013;11(12):3471 [51 pp.].
17 December 2013
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/3471.htm
EFSAのPPRパネルはネオニコチノイド殺虫剤であるアセタミプリドイミダクロプリドの発達神経毒性(DNT)の可能性についての科学的意見を求められた。In vitroの試験で、これらの化合物によるニコチン様アセチルコリン受容体(nAChRs)の興奮及び/または脱感作が、ニコチンのように発達中のほ乳類神経系に影響する可能性が示唆された。アセタミプリドイミダクロプリドのDNT可能性を評価するために、PPRパネルは公開文献や申請書類、評価書案を精査した。PPRパネルは方法論にいくつかの限界があるものの、両化合物が神経の発達や機能に影響するかもしれないと結論した。入手できるアセタミプリドイミダクロプリドのDNT研究を考慮すると、重要な不確実性が残り、DNTと用量反応相関をさらにしっかり調べるためにOECDガイドライン426に則ったin vivo試験が必要である。現状のARfDはアセタミプリドイミダクロプリドのDNTの可能性に対しては十分保護的ではない可能性があり、アセタミプリドのADIについては信頼できる結論が出せない。既存の毒性データを解析してより保守的な参照値を提案した。しかしながらイミダクロプリドの現行ADIについてはDNTの可能性に対しても適切に保護できると考えられた。Kimura-Kurodaら(2012)の用いたin vivo試験系は欠点があり規制分野でのスクリーニングツールとしては使えない。PPRパネルは認可プロセスの一環としてDNTデータの提出を義務づけるための明確で一貫した判断基準を作ることを薦める。それにはしっかりした、信頼できる、妥当性を評価されたin vitroの試験系とin vivoのTG 426を補完するための代替法からなる総合的DNT試験法の開発が含まれる。

FAQ on developmental neurotoxicity potential of acetamiprid and imidacloprid
Last updated: 17 December 2013
http://www.efsa.europa.eu/en/faqs/developmentalneurotoxicitypotentialofacetamipridandimidacl.htm
1. 発達神経毒性(DNT)とは何か?
2. EFSAは何を求められたのか?
3. 何故今求められたのか?
論文が出たから
4. どうやって評価した?
5. 結論は?
6. この知見の根拠はどれだけ決定的か?
7. 毒性学的参照値とは?
8. 既存の参照値は何らかの発達神経毒性の可能性に対して適切な保護となっているか?

(問題の論文
Nicotine-Like Effects of the Neonicotinoid Insecticides Acetamiprid and Imidacloprid on Cerebellar Neurons from Neonatal Rats
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0032432
PPRパネルの意見では非常にたくさんの疑問が提示されていてこの論文自体はスクリーニングとしても使えないとしている。
ニコチンはもともと神経系に影響するものなので神経系への影響についてもっと厳密な試験系が欲しかったという以前からあった問題のきっかけにされただけのようだ。
Fluo-4による画像解析で神経細胞の活動を見るのは難しいと思う。神経細胞の活動電位がミリ秒単位なのに蛍光カルシウム指示薬の反応は遅い。巨核球、色素いれたらカルシウムオシレーションがなくなったもの(うまくいかなかったので当然未発表)。薬物の濃度に依存しない一相性の遅い反応は、色素によるアーチファクトを疑う。だって一回反応するのに一分以上かかってたら神経細胞じゃないでしょう?ただ農薬企業はこの試験とは全く関係なく新しい試験系開発と実施に対応しなければならないだろう。消費者としては農薬の心配するくらいならタバコの心配したほうがいいと思うけれど。特に妊婦の喫煙。)

  • 議論になっている農薬がヒトの神経毒性と関連づけられる

Nature blog
Controversial pesticides linked to human neurotoxicity
17 Dec 2013 | 16:29 GMT | Posted by Daniel Cressey
http://blogs.nature.com/news/2013/12/controversial-pesticides-linked-to-human-neurotoxicity.html
EFSAがこれまでミツバチの減少と関連づけられてきた殺虫剤のクラスであるネオニコチノイドの2つに対するヒト暴露許容量を引き下げるべきだといった。