食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

農薬と自閉症の関連の可能性

Behind the headlines
Possible pesticide link to autistic disorders
Monday June 23 2014
http://www.nhs.uk/news/2014/06June/Pages/Pesticides-linked-to-autistic-disorders.aspx
Mail Onlineが「農薬を散布した農場の近くに住んでいる妊娠女性は自閉症の子どもを産むリスクが3倍」と報道した。米国の研究者らが4つのよくあるクラスの農薬の使用された地域の近くに妊娠中に住んでいたことと自閉スペクトラム疾患(ASD)や類似の発達障害の子どもを産むリスクの関連を調べた。農薬使用データと妊娠中の母親の住所とを地図上で描いた。主な知見は妊娠中のいつかに農薬使用場所の約1.25km以内に住むことが全く暴露のない場合に比べてASDのリスクが60%高くなることと関連していたことである。一見警鐘を鳴らす知見のように見えるが、重要なのは因果関係は確立されていないということである。この研究はカリフォルニアのもので、この知見は極端な事例である可能性もある。
ASDについて知られていることから、農薬暴露のような単一の環境要因がASDの原因であることはありそうにない。現在この病態は遺伝と環境の複雑な混合によると考えられている。

  • 自閉症と農薬についての専門家の反応

SMC UK
expert reaction to autism and pesticides
June 23, 2014
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-autism-and-pesticides/
EHPに発表された研究が、農場近くに住んでいる妊娠女性は自閉スペクトラム疾患の子どもをもつリスクが高くなると報告した
King’s College London精神科研究所MRC社会遺伝発達精神センターGeoff Bird上級講師
この結果は議論を引き起こすだろうが彼らは農薬が自閉症の原因であることを示したわけではないことを忘れるべきではない。統計学的関連を示したものである。我々は自閉症の子どもをもつ親は普通の子どもをもつ親より自閉症に似た性質をもつことを知っており、そのため人の多い都市部より田舎を好み、結果的にそれが農薬を使う農場のそばであった可能性もある。
Southampton大学職業環境医学David Coggon教授
この研究は女性の自宅の1.5km以内で農薬を散布することが女性の農薬暴露にとって重要な決定因子であるという前提でおいているがその根拠は示されず本当とは思えない(実際の農薬暴露量は評価されていない)。他の研究で家庭内での農薬使用や食品中の極微量の残留農薬のような他の暴露源のほうが重要であるということが示唆されている。他の暴露が多ければ農薬使用と発達障害の関連は疑わしい
Oxford大学発達神経心理学Dorothy Bishop教授
著者らは妊娠中の農薬暴露が神経発達障害と関連すると結論しているが、主な結果からは農薬暴露の違う集団での神経発達障害の率はほとんど同じである。関連があるのは特定の期間の亜集団解析によるもののみで、数が示されていないので評価が困難である。

  • 神経発達疾患と親が農薬近くに住むこと:CHARGE研究

Neurodevelopmental Disorders and Prenatal Residential Proximity to Agricultural Pesticides: The CHARGE Study
Janie F. Shelton
http://ehp.niehs.nih.gov/1307044/
自閉スペクトラム疾患や発達遅延の970人の、母親の妊娠中の住所とカリフォルニアの農薬使用報告書による市販農薬散布データで、農薬散布地域から1マイル以内にいたことと自閉スペクトラム疾患や発達遅延のリスク増加の関連。
(暴露があったのは一部(ASDで144、発達遅延で44)のみ。妊娠前、妊娠第1〜3期、妊娠中のいつか、と有機リン、クロルピリホスピレスロイドなどいろいろな組み合わせで検定しているのでどこかに有意差がつくのはむしろ当然。時期や農薬に一貫性がない)