食品安全情報blog過去記事

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その他

  • EUの科学主任は専門家からの声を大きくしたい

Natureニュース
EU science chief wants greater voice for experts
Mark Peplow 23 June 2014
http://www.nature.com/news/eu-science-chief-wants-greater-voice-for-experts-1.15445
欧州委員会の初代主任科学アドバイザーAnne Gloverは、2012年1月に任に就いてから欧州の政策決定をもっと根拠に基づくものにするよう努力してきた。任期を残り6ヶ月にして、彼女は現在、欧州各国の政府の科学アドバイザーのネットワークである欧州科学助言者フォーラム(ESAF)を設立してこのメッセージをさらに強化しようとしている。コペンハーゲンでESAFの初の会合が行われたのでNatureが取材した。
(一部抜粋)
EUでは政治的イデオロギーエビデンスの集め方や使用方法に影響していることをみつけたか?
欧州を含む全ての国で、人々は信条をもっていて、それを支持するエビデンスを探す。どのような質問をするかが答えに影響する。だから我々は誰がエビデンスを提供しているのか、誰がそれを推進しているのか、どうやって解析したのか、それをもとにどんな政策上の選択肢が作られたのかについて透明である必要がある。
例えば、遺伝子組換え作物については非常に強い根拠があり世界中の科学者は同じことを言っている:伝統的な化学物質や放射線によって作られた新しい品種に比べてGM技術を使うことのほうが大きなリスクがあることはない。
私はGMの推進者ではなく、私が主張したいのはエビデンスを見ようということだけである。しかしEUの各国がどう投票するかを見ると、根拠はひとつであるにもかかわらず投票は二つに割れる。従ってそれは政治的意見である。政治家が言うべきことは市民にGMを危険だと考えさせるために根拠が不完全だということではなく「私は根拠を認める、しかし政治的社会的理由によりこの技術はいらない」ということである。
(農水も「たとえ和食が健康に悪くても日本の農業を守るために日本人はコメをもっと食え」って言えばいいのに。意見として尊重はする、賛同しないけど。私の仕事は今の農業を守ることではなく健康を守ることだから。)

Phthalate and bisphenol A exposure among pregnant women in Canada — Results from the MIREC study
Tye E. Arbuckle et al.,
Environment International Volume 68, July 2014, Pages 55–65
大規模全国妊娠コホートの妊娠第一期の妊婦の尿中BPAとフタル酸を測定した。カナダ全国から約2000人参加。
尿中総BPA幾何平均は比重修正無しで0.80 (95% CI 0.76–0.85) μg/Lで88%から検出された。幾何平均は年齢が上がるにつれ低下、喫煙者、カナダ生まれ、収入や教育レベルが低い方が高い。
フタル酸代謝物で最も高濃度だったのはMEP (GM: 32.02 μg/L) と MnBP (GM: 11.59 μg/L).

Costco 'Teaches the Controversy’ over GMOs
Alex B. Berezow
http://www.realclearscience.com/blog/2014/06/costco_teaches_the_controversy_over_gmos.html
妻がコストコが薬局で配っていた雑誌を、私の血圧が上がって目が飛び出すだろうと私にもってきた。農家が数十年交配で植物を改良してきたという嘘(数千年である)にはじまりGMOには未知の恐怖があるという。そしてGMOを避けたければ綿、菜種、キャノーラ、大豆、トウモロコシ及びタンパク質単離物やイソフラボンをチェックしろという。コストコも含めて、市販食品の75%には少なくとも一種類のGM成分が入っている。客を脅す前にそのことを考えるべきではないか。

  • 私たちは本当にシャワーカーテンが体重を増やす原因であることを心配しなければいけないのか?

Forbes
Do We Really Have to Worry About Shower Curtains Causing Weight Gain?
Geoffrey Kabat, 6/18/2014
http://www.forbes.com/sites/geoffreykabat/2014/06/18/do-we-really-have-to-worry-about-shower-curtains-causing-weight-gain/
数日前に雑誌Spryに「シャワーカーテンのせいで太る?」という記事が出てそれがDodge City Daily Globeに再録された。その記事は内分泌撹乱物質の危険性について読者に注意換気するもので、シャワーカーテンからは最大108種類の揮発性有機化合物が放出されるとする。記事のどこにも健康に有害影響を与える化合物の量については記載がない。
この記事は巷に溢れる物語の典型的症状を示す。この種の記事は大手メディアや、時にはピアレビューされた科学論文にもある。
2009年に「肥満流行に寄与すると考えられる10の要因」という22人の著者による79ページの論文が発表されている。カロリーの摂り過ぎと運動不足を二大要因としつつも、彼らが肥満の原因としてあげた10要因は、犠牲物・エピジェネティクス・母親の高齢化・太った人の方が子どもが多い・太った人は太った人と結婚する・睡眠不足・内分泌撹乱・処方薬・日常生活の温度差・子宮内環境と世代を超えた影響、である。これらは野心的研究課題ではありうる。しかし現時点では根拠は希薄である。著者らに欠けているのはデータへの批判的視点である。例えば内分泌撹乱物質はほとんどの人の血中や尿中に検出されてはいるが量は少ない。このようなものは僅かな影響を与えているかもしれないが、研究は困難である。科学がメディアから注目されすぎると直ちに効果のある結果を期待される。その結果が一部の科学者とジャーナリストによるナンセンスな記事の大量生産となる

  • もっとグルテンを食べよう:食に関する熱狂的流行は死ぬべき

TIME
Eat More Gluten: The Diet Fad Must Die
Jeffrey Kluger June 23, 2014
http://time.com/2912311/eat-more-gluten-the-diet-fad-must-die/
世界の93%以上にとってグルテンは全く問題ない。
もしあなたがお金を儲けようと思っているならグルテンフリー食塩の商標をとるのがいいかも。もし既にとられていたらグルテンフリー砂糖とかグルテンフリー水なんかどうだろう。それもとられていたら、グルテンフリーシューズならまだあるかも。
今の時代のグルテンは80年代から90年代の脂肪やつい最近の炭水化物がそうだったように、悪者であらゆる種類の都合の悪いことの原因である。
WSJが報告しているように、流行と賢いマーケティングと、栄養について何も知らないくせにおかしなことをたくさん言うインターネットのゴシップの混合からなる全くのナンセンスである。
(略)
食に関する熱狂的流行は新しいものではなくいつものことである。グルテンフリー料理本はノーカーボワインや無脂肪クッキーと同様に捨てられるだろう。セリアック病患者などの本当にグルテンを避けなければならない人たちは病気と闘い続けるだろうがそのほかの人たちは次の新しい悪魔を探しているだろう

  • グルテンフリーの熱狂:それは健康的なのか?

WSJ
The Gluten-Free Craze: Is It Healthy?
By Julie Jargon
June 22, 2014
http://online.wsj.com/articles/how-we-eat-the-gluten-free-craze-is-it-healthy-1403491041
10年前はグルテンのことを聞いたことがあるアメリカ人はほんの少しだった。今や私たちの調査ではほぼ1/3がグルテンを避けようとしている。たくさんのレストランチェーンがレシピやラベルを改訂しグルテンフリー市場は数十億ドル市場になっている。
オマハのがん研究者で何年も減量を試みてきたHeather Nutshは、友人がグルテンフリーで痩せたと聞いて2月にグルテンフリーダイエットをやってみようと決心した。
しかし世界中のグルテンフリー愛好者は驚くかもしれないが健康の専門家の多くはごく一部のヒトを除きグルテンフリーが良いという根拠はないと言う。むしろグルテンフリーと表示されている製品の多くはビタミンや繊維が少なく砂糖が多い。
グルテンフリーチキンナゲット、ランチミート、ベーコンなどを発表した大手食品メーカーTyson FoodsのCEOはグルテンフリーが健康的なのかと聞かれて「私は知らない」と答えた。
アメリカ人は食べるものに夢中でいつも健康的食品を探している。より良く食べたいという望みと食品企業による新しい成長の機会の探索が組み合わされて流行を生みだし、インターネットがそれをさらに加速する。その結果が消費者を惑わす食べ方についての競合する主張と説得の耳障りな喧噪である。過去10年の本やドキュメンタリーが食品企業への疑いを強化し大統領夫人が彼女の中心テーマを健康的食生活に据え、ソーシャルメディアが新しい食品の流行拡散を促進する。フェイスブックには1000以上のグルテンフリーを掲げたグループがある。それに対応して企業が新しい食品を作る。Nielsenによると食品企業が包装表面に掲げている健康に関する表示は75以上ある。
しかしこのような表示には誤解を招くものがある。最初から入っていないものに「○○フリー」を掲げたり、「本物のサトウキビの砂糖」は高果糖コーンシロップより良くはない。
現在裁判になっているため多くの企業が「ナチュラル」という単語を排除しつつある。
食品企業にとっては新しいカテゴリーができることはビジネスチャンスである。そしてビジネスとしての宣伝が今度は消費者の関心を集める。
健康的な食品の選択肢があることはアメリカ人の食生活には良い影響を与える。いまやカロリー摂取量がピークを過ぎ、炭酸飲料摂取量が減った。しかしそれでもまだアメリカ人は40年前より平均で一日459カロリー多く摂っている。
米国の消費者と食品企業の混沌としたサイクルはグルテンフリーでかつてないほど大きい。セリアック病患者は1%以下しかいないがグルテン過敏症は多いとされる。一部の医師が原因不明の病態にグルテンフリーを薦めセレブが流行に乗る。今やグルテンフリー食品は溢れ、グルテンフリードッグフードまである。グルテンフリー製品市場は2007年から昨年までの間に倍増し21億ドルになった。小麦や大麦をもともと含まないヨーグルトや野菜などの製品にすらグルテンフリーと表示してある。
食品の歴史を調べているCarroll氏によると、グルテンフリーへの反応は1970年代に連邦政府アメリカ人はもっと脂肪を減らすべきだというガイドラインを作ったときの反応に似ている。このとき米国企業はたくさんの低脂肪製品を作ったがそれらは砂糖が多くカロリーは変わらなかった。多くの人がそれらを健康的だとみなしたくさん食べてさらに太った。1980年代は脂肪の摂取量は減ったが同時に肥満は増えた。
Nutsh博士は2週間グルテンフリーダイエットをやって2ポンド減量したがお腹がすいてたまらないことと毎日同じものを食べるのに飽きて辞めた。体の調子は変わらなかった。