食品安全情報blog過去記事

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オーガニック論文関連

  • オーガニック産物は栄養価が高いという研究

Natureニュースblog
Study finds organic produce is more nutritious
11 Jul 2014 Posted by Lauren Morello Posted on behalf of Natasha Gilbert.
http://blogs.nature.com/news/2014/07/study-finds-organic-produce-is-more-nutritious.html
英国Newcastle大学の生態学的農業ecological agriculture教授Carlo LeifertらがBritish Journal of Nutritionに、慣行栽培の農作物より有機栽培の農作物のほうが「好ましい」抗酸化物質が有意に多いというレビューを発表した。有機農産物を食べると最大40%抗酸化物質を多く摂れるとこの研究は言う。しかしLeifertはNatureに対して「健康に影響があるという根拠はない」と語った。Leifertはこの研究は既存のレビューより解析対象の論文が多いからより信頼できると主張しているが、FSAの依頼により2012年にAnnals of Internal Medicineに有機と慣行栽培に栄養で意味のある差はないというレビューを発表したLondon School of Hygiene and Tropical MedicineのAlan DangourはNatureに対してLeifertらのレビューは質のばらばらな研究を混ぜることで信頼性が損なわれていると語った。他の研究者らもこの論文を批判している。英国食品研究所のRichard Mithenは、抗酸化物質の僅かな差が公衆衛生に意味があるという根拠はない、という。King’s College LondonのTom Sandersはこの研究で有機と慣行作物に意味のある栄養の差はないという見解が変わることはない、と語った。
大学のプレスリリース
Major study documents nutritional and food safety benefits of organic farming
11-Jul-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-07/wsu-msd070914.php

  • オーガニックと通常食品の栄養含量を比較した研究についての専門家の反応

SMC UK
expert reaction to study comparing the nutritional content of organic and conventional foods
July 11, 2014
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-comparing-the-nutritional-content-of-organic-and-conventional-foods/
British Journal of Nutritionに発表されたオーガニックと通常食品の栄養含量を比較した343の研究のメタ解析がある種の抗酸化物質やカドミウムの違いを報告した。
St George’s Hospital NHS Trust主任栄養士Catherine Collinsオーガニックの方がそうでない食品より良いのか?というのは熱い議論になっており、この論文はオーガニック圧力団体から広く支持されオーガニックハロー効果をうむだろう。
この分野の問題は例えばリンゴとナシをどうやって比較するのかということである。これらをスーパーで買って販売時点の成分を比較する?あるいは栽培方法の違う農場で育てたものを採取してすぐ調べる?いろいろな方法で違う結果が出る。例えばクロロゲン酸は時に有機のほうが多く時に少ない。どうすればいい?栄養士として、私はオーガニックかどうかは忘れてモーニングコーヒーやおやつの美味しい桃を楽しめばいいと言う。ある抗酸化物質が有機のほうが多いからといって二倍のお金を出したところで栄養が二倍になるわけではないが他のものを買うお金は確実に減る。オーガニックだろうとそうでなかろうと野菜や果物をもっと食べよう。

Institute of Food Research (IFR) 食品と健康計画リーダーRichard Mithen教授
この論文は有機農法ではある種の野菜や果物のある種のフェノール化合物の濃度が増えることについての若干の根拠とはなる。同時に有機栽培ではタンパク質と硝酸と繊維が減ることも報告している。これらは望ましくない変化なので、著者らや有機圧力団体が言及していないことは驚くに値しない。
フェノール化合物が増えるのは、有機栽培では害虫や病原体からのダメージが増えるためこれら有害物質を多く作る防御反応として予想されていた。オーガニックでも慣行でも、あるいは交配などいろいろな条件でフェノール化合物含量を上げることはできるが、それは必ずしも健康や環境に良いとは言えない。
最も重要なのはこのような一部の化合物の小さな差が公衆衛生にとって良いとも悪いとも根拠がないことである。「抗酸化物質」や「抗酸化活性」あるいは各種測定法の文献ではこれらについてよくわかっていないのが現状であることを示す。消費者にとっては有機商品の値段の高さが、あったとしても小さい栄養価の増加を相殺するだろう。公衆衛生のためには、生産方法に関わりなく、野菜や果物をもっと食べようと薦める必要がある。

King’s College London医学部糖尿病と栄養科学Tom Sanders教授
この論文は抗酸化物質をまるで必須栄養素であるかのように分類していて誤解を招くものである。言及されているのは主に植物フェノール化合物で、これらは植物をストレスに曝すと増える。これらはメリットもあるかもしれないが毒性もある。
この論文は抗酸化物質をたくさん食べるとがん予防になると間違った示唆をしている。野菜や果物の摂取が多いこととがんリスクが低いことに関連があるとしてもそれが植物の抗酸化物質によるという根拠はない。ポリフェノールは鉄や亜鉛などの吸収を阻害する作用もある。
この論文ではカドミウムの濃度が有機栽培で低いとも主張しているがカドミウム濃度は土壌に依存し有機認証とは関係がない。天然にカドミウム濃度の高い地域があり、そのような地域ではカドミウム含量が高くなる。食事由来のカドミウムとしては魚介類のほうが重要である。主要栄養素については有機栽培の法がタンパク質が少ない。

London School of Hygiene & Tropical Medicineの食品と栄養とグローバルヘルスAlan Dangour博士
系統的レビューは強力なツールでありより多く使われるようになってきた。入手できる根拠を集めて批判的に吟味することでバイアスを減らし信頼性を増すことができる。
この論文の著者らは驚くことに質に関係なく全てのデータを含めた。質の良いデータと質の悪いデータを混ぜると信頼性が損なわれる。このような問題のあるやりかたは恥ずべきことである。さらに結果の解釈は誇大である。天然物は季節により大きな変動がある。この論文は先の論文を否定する根拠とはならない

(Carlo Leifert教授はい有機推進団体側の意見をいつも言っている人。GM反対とか。
変なものみつけた。スライドの16枚目。農林水産省試算という日本語の図が出てくる。
https://www.soilassociation.org/LinkClick.aspx?fileticket=cpZZJLYVY3g%3D&tabid=1886
ウシの資料効率が悪いという図なんだけれど何故かWe need to extensify organic animal production!!!!!というキャプションがついている。びっくりマーク5個で赤字で。オーガニック関係ないよ?こういうこと言うから信頼性落ちるんだけど。
がんの代替療法(エネルギー療法とかホリスティック療法とか専門家の知らない真実を提供するとか)を薦める団体に専門家として紹介されている
http://www.canceractive.com/cancer-active-page-link.aspx?n=2838