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フィトステロールで強化された食品:心血管系疾患の予防に関する全体的な利益が証明されていない

Foods fortified with phytosterols: no demonstration of an overall benefit regarding prevention of cardiovascular diseases
25/06/2014
http://www.anses.fr/en/content/foods-fortified-phytosterols-no-demonstration-overall-benefit-regarding-prevention
フィトステロールは、ナッツや油糧種子などの植物に天然に存在す化合物である。フィトスタノールはフィトステロールに水素添加した製品である。それらの化合物はコレステロールと類似構造を持つので、腸でコレステロールと競合し、吸収作用を制限する。入手可能な科学的文献に基づき、欧州規則は、フィトステロールとフィトスタノールが血中コレステロールを下げ、血中コレステロール低下は冠疾患のリスクを減少させるという表示を認可した。ある種の懸念があるため消費者連盟UFC ク・ショワジールは、ANSESがフィトステロールとフィトスタノールを強化した食品を消費するリスクと利益を評価することを求めた。
研究ではフィトステロールが実際血中コレステロールの削減に寄与するにもかかわらず、心血管系疾患の予防に関する利益は何も証明されていないと結論した。ANSESは血中コレステロール値を心配する人のために、あらゆる予防手段を考慮した医師の診察を推奨し、妊婦・授乳中の女性・子供たちは製品を使用しないよう改めて注意喚起した。
市場と摂取データ
フランス市場でのフィトステロール強化製品の分析は、現在3部門:マーガリン、生鮮乳製品と類似製品、調味料ソース(ビネグレットソース・マヨネーズ・ケチャップなど)に集中していることを示しており、それぞれ市場占有率の約4%を占めている。ANSESが行ったINCA 2調査(フランス全国個人食生活調査)によると、2006-2007年にこれらの製品の摂取は成人の約3%、子供の0.7%を占めていた。高コレステロール血症のリスクが最も高いと思われる46-79歳の年齢層の成人では、最も多く摂取されている。フィトステロール強化食品消費者の12.5%を子供たちが占めている。
不確実性を明らかにする専門家の共同評価
フィトステロールは血中総コレステロール濃度とLDLコレステロール(一般に「悪玉コレステロール」として知られている)の約10%の削減に実際に貢献するものの、フィトステロール応答には相当な個人差がある。対象者の約30%では、フィトステロール強化食品の摂取はLDLコレステロールの削減につながらない。またフィトステロールの血漿濃度の上昇を引き起こし、その心血管系疾患への影響はわかっていない。更に、β-カロテンの血漿濃度も減少する。これらすべての中間パラメータ(LDLコレステロール血漿フィトステロール・血漿β-カロテン)への影響を考慮した結果を判断できる、心血管イベントへのフィトステロールの直接効果に関する研究はない。従って現時点ではフィトステロールの心血管系リスク予防について結論できない。
ANSESの結論と助言
ANSESは公衆衛生の観点から、現在入手可能なデータではフィトステロール強化食品が心血管系疾患予防の適切な手段だと考えることはできないとした。血中LDLコレステロールは心血管系疾患のリスク要因であると考えられるものの、これらの疾患は多因子的で、多くのリスク要因と予防要因を含む。ANSESはまた、予防手段として、禁煙、運動、座りがちの習慣を減らす、十分な果物や野菜を含むバランスの取れた食事、脂肪酸のバランスのとれた摂取、砂糖と塩の摂取を控えるなど、いくつか認められている健康と食事の手段があることを改めて述べた。個人レベルでは高コレステロール血症患者のいろいろな対策を調整するのは医師の責任である。
以上を踏まえたANSESの推奨
コレステロール値を心配する人は、彼らの状況に最もふさわしい健康と食事の手段を推奨できる医療従事者の助言を求めるべきである
 フィトステロール強化食品を摂取する人は、それらの製品を摂取することでおこるβ-カロテンの削減を補うために、最低限でも、フランスの国民健康栄養プログラム(PNNS)が推奨する果物と野菜の量を摂取すること
 子供はフィトステロール強化製品の摂取を避けること
 妊婦と授乳中の女性はフィトステロール強化製品の摂取を避けること