食品安全情報blog過去記事

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MSGは悪い?長く語られる食品に関する神話を打ち砕く

Is MSG bad for you? Debunking a long-running food myth (video)
25-Aug-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-08/acs-imb082514.php
ACSの動画シリーズ
グルタミン酸ナトリウムほど情緒的な問題の多い成分はない。MSGは50年も悪評を立てられ続けている。だから我々Reactionsは汚名を晴らすときだと考える。今週の動画はMSGについて。
さらにCompound Interestでもインフォグラフィックを提供している
グルタミン酸ナトリウム−不当な評判?
Monosodium Glutamate – An Undeserved Reputation?
http://www.compoundchem.com/2014/08/25/msg/
グルタミン酸ナトリウム、略称MSGは長い間食品添加物界の悪者であった。英国では、持ち帰り中華料理店が誇らしげに「ノーMSG」看板を掲げ、多くのウェブサイトがあなたに「MSGの真実」を教えてくれる。MSGの影響については無数の研究が行われているが、矛盾した情報が多く消費者には何を信じたらいいのか判断するのは難しいだろう。
MSGは1908年に初めて日本で海草から単離された。「うまみ」に寄与するとされ、日本語で「美味しい」を意味する「うまい」に由来する。20世紀半ばまでにMSGは日本料理や中華料理によく使われ、米国など他の国にも拡大した。
「中華料理店症候群」は中国系アメリカ人医師Robert Ho Man Kwokの造語で、科学雑誌のお便りコーナーに中華料理店で食事をした後、どきどきしたりしびれたりすると報告した。Kwokは原因を同定してないが、根拠がないにもかかわらずMSGが犯人だと指名された。同時期にJohn Olney博士がMSGをマウスの脳に注射して脳が傷害されることを報告した。これは心配なように思えるかもしれないがOlneyがこの研究で使用したのは最大一度に4g/kgの大量のMSGで、ヒトが食べる量とはかけはなれている。先進国では我々は大体1日1g前後を食べていると推定されている。Olneyが使った量にするには一度に300gを食べないといけない。これは普通の持ち帰り中華料理に含まれる量より何倍も多い。
Olneyは他にも霊長類で高用量のMSGを用いた実験を行っているが他の研究者は再現できない。これだけでOlneyの結果を完全に否定することはできないが再現性は科学にとって重要である。
もうひとつの重要な実験は1970年代に行われたもので、11人に最大150gのMSGを6週間与え、悪影響は観察されなかった。何年にもわたって無数の症状がMSGと関連づけられているものの、事実は、それらには全く科学的根拠がないということである。数限りない研究がMSGと望ましくない症状の関連を見つけるのに失敗してきた。そして食品添加物としての使用は食品規制機関により認められ続けている。
化学的にはMSGは天然に存在するアミノ酸であるグルタミン酸のナトリウム塩である。グルタミン酸はトマトやハムやチーズに含まれ、人体での挙動はMSGと同じである。もしMSGで症状が出るなら、グルタミン酸含量の多い食品を食べても同じ症状が出るはずである。奇妙なことにそのような報告はない。
一部の人は自分はMSGを含む食品を食べてアレルギー症状が出たという逸話的根拠を指摘する。質の高いきちんと対照群をおいた試験では関係は見つからなかった。ある研究では71人にMSGまたはプラセボを投与したが1人だけ反応した。この人はその試験ではプラセボを投与されていた。他の試験でもMSG過敏症だと自称する人はMSGよりプラセボに反応し、心理的要因が働いていることを示唆している。ごく少数、大量のMSGに対して過敏な人がいる可能性があるが症状は軽い。
科学的根拠とは関係なく、MSGを食品から排除する要求はある。普通に食品に含まれている量より多いものを食べた場合にごく少数の人が弱い反応をする可能性がある、ということは食品添加物の禁止理由にすべきではない。MSGは誹謗中傷の標的とされただけで、我々は毎日食べる食品を心配する必要はない。しかし自分で根拠を確かめたいと望むなら以下のリンクをどうぞ。

(昔から自分の信念を証明するのに一生懸命な科学者はいる−科学者はそういうもの。だからこそGLPなどのシステムが整備されてきたわけで、少数の正義の科学者が巨悪を暴く、などというわかりやすいお話は今ではほとんど不可能。でもそういう「物語」は喜ばれるので無くならない。)