食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文等

  • 17の低、中、高所得国の心血管系リスクとイベント

Cardiovascular Risk and Events in 17 Low-, Middle-, and High-Income Countries
Salim Yusuf et al.,
N Engl J Med 2014; 371:818-827
17ヶ国15万人からなる前向き都市地方疫学Prospective Urban Rural Epidemiologic (PURE)コホート。低所得国はバングラデシュ、インド、パキスタンジンバブエ、中所得国はアルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、ポーランド南アフリカ、トルコ、高所得国はカナダ、スウェーデンUAE。さらに各国内の都市部と地方から選んでいる。年齢や高血圧、糖尿病等のデータについてはINTERHEARTおよび INTERSTROKEと共通。INTERHEART リスクスコアでリスク要因を指標化。2003年から開始し2013年までのフォローアップ。
リスクスコアは圧倒的に高所得国が高いが心血管系イベント、特に致死的なものは低所得国で高い。全ての原因による死亡も所得と逆相関。さらに中低所得国内でも都市部より地方の方がリスク要因が少ないのに心血管系イベント、死亡ともに高い。
(結局経済の影響はとても大きい。)

  • JNCIプレスリリース

大豆サプリメント乳がん関連遺伝子の発現に悪影響
Soy Supplementation Adversely Effects Expression of Breast Cancer-Related Genes
http://jnci.oxfordjournals.org/content/106/9/dju313.full
多くの女性が大豆サプリメントはいいものだと信じているが大豆の乳がん予防や治療への影響は明確ではない。今回大豆が乳がんを増殖させるかもしれないという懸念が示された。

乳がんの大豆サプリメントの欠点を避け良い点を強化
Avoiding the Bad and Enhancing the Good of Soy Supplements in Breast Cancer
V. Craig Jordan
JNCI J Natl Cancer Inst (2014) 106 (9): dju233
http://jnci.oxfordjournals.org/content/106/9/dju233.full
オープンアクセス
疫学的にアジア諸国での大豆摂取と乳がんリスクとの逆相関が報告されている。しかし大豆の話には悪いものもある。一般論として植物エストロゲン乳がんを増殖させる。植物エストロゲンの影響は時期や用量に依存する。今回報告されたShike et alらの研究では閉経期に大豆サプリメントを使用するのは避けるべきだということである。神話ではなくエビデンスを利用しよう。

大豆サプリメント乳がん遺伝子発現への影響:無作為プラセボ対照試験
The Effects of Soy Supplementation on Gene Expression in Breast Cancer: A Randomized Placebo-Controlled Study
Moshe Shike et al.,
JNCI J Natl Cancer Inst (2014) 106 (9): dju189
http://jnci.oxfordjournals.org/content/106/9/dju189.abstract?sid=a080aa9c-d8b6-4a58-8d4c-b15abd74bc4d
初期乳がん患者140人を診断から手術までの7-30日間、大豆サプリメントプラセボに割り付けた。指示通り摂ったかどうかは血漿イソフラボン濃度で判断した。遺伝子発現は使用前後の腫瘍組織のNanoStringで評価。増殖(Ki67)とアポトーシスマーカー(Cas3)は免疫組織で診断。大豆サプリは免疫組織には有意な差は無かったがマイクロアレイではFGFR2の過剰発現や増殖経路遺伝子の発現が見られ、乳がんにとって悪影響がある可能性が示された。

  • 甘党は心の中にある

A sweet tooth is all in the mind
Wednesday 10 September 2014
http://www.heraldscotland.com/news/health/a-sweet-tooth-is-all-in-the-mind.25277410
砂糖はしばしば食べ過ぎの言い訳に使われるが、結局のところ依存性はない
チョコレートや砂糖がヒトの脳を依存性にするという主張があるが、ヘロインやコカインのようないわゆる依存性の薬物とは違う
エジンバラ大学の統合生理学センターJohn Menzies博士は、「ヒトは何故太るのかについての合理的説明を求めようとし、食品を非難するのは簡単だ。特定の食品に対して健康に悪いとわかっているのに止められないという依存症に似た関係をもつ人はいるが、それは薬物依存というより行動障害としてとらえたほうが治療の選択肢は広がるだろう。」という
NeuroFast プロジェクトのコーディネーターでGothenburg 大学のSuzanne Dickson教授は「砂糖の依存性についての議論があるが、食品成分そのものが依存性であるという考え方を支持する根拠はあまりない。」という。

依存のような食行動は「食品への依存」というよりむしろ「食べることへの依存」
“Eating addiction”, rather than “food addiction”, better captures addictive-like eating behavior
Johannes Hebebrand et al.,
Neuroscience & Biobehavioral Reviews
Available online 6 September 2014
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0149763414002140
オープンアクセス
特定の栄養素がヒトに依存をもたらすという根拠はない。「食依存」は行動依存で肥満と必ずしも関連しない。「食依存」はDSM-5 “Non-Substance-Related Disorders”と考えたほうがいい