食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他

  • 妊娠中のフタル酸と子どもの喘息についての専門家の反応

SMC
expert reaction to phthalates in pregnancy and asthma in children
September 17, 2014
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-phthalates-in-pregnancy-and-asthma-in-children/
Environmental Health Perspectivesに発表された研究で周産期フタル酸暴露と喘息リスクの関連が報告された
McMaster大学CIHR/Ontario 女性健康評議会Warren Foster教授
概要:この論文はフタル酸への周産期暴露と出生後の子どもの喘息の関連を評価した縦断研究でニューヨーク都心の300人の妊娠女性が参加し154 /300人の子どもが医師の診察を受けている。このうち146人は喘息ではない。妊娠女性のスポット尿検体は最新の分析技術でフタル酸代謝物を測定した。その結果フタル酸ブチルベンジル(BBzP)とフタル酸ジ-n-ブチル(DnBP)が子どもの喘息と関連した。他のフタル酸代謝物は関連がなかった。
印象:この研究の強みは縦断研究であること、医師が診察していること、分析方法などである。一方弱点は妊娠中の一回の尿しか調べていないこと、多数のフタル酸代謝物について多重比較の補正をしないで関連をみているのでI型のエラーの確率が高いこと、他の研究では同じ結果になっていないこと等がある。この研究は因果関係を示したものではないのでフタル酸が喘息の原因だと結論するのは間違い。
意味:データは興味深いものである。この研究で示されたデータが規制上の意思決定や臨床に影響することはありそうにない。また別の研究で確認されない限り一般の人にとっても限られた価値しかないだろう。
(いろんな肩書きの)Andrew Bush教授
著者自身が述べているように、この比較的小規模の研究は別のより大きな集団での確認が必要である。これを元に健康上の助言はできない。妊娠女性は心配すべきではない
(EHPの論文にメディアがいちいち反応する必要はないんだが・・報道するなら全部報道すればいいのに。家の中で火を使ってはいけないとか)

  • 主導的医療倫理学者が機能増強薬物は安全な量で使用を認められるべきと言う

Leading medical ethics academic says performance enhancing drugs should be allowed at safe levels
September 17, 2014
http://www.heraldsun.com.au/news/victoria/leading-medical-ethics-academic-says-performance-enhancing-drugs-should-be-allowed-at-safe-levels/story-fni0fit3-1227061667382
プロスポーツ選手は彼らのポテンシャルを最大限に引き出すために機能増強のための薬物使用を認められるべき、とオックスフォード大学のJulian Savulescu教授が述べた。世界アンチ・ドーピング機関の使用禁止薬物リストは捨てて独自のプロ用団体を作るべきという。ステロイド、成長ホルモン、EPOを認めるべき。
プロサッカーリーグのEssendonサプリメントスキャンダルを「お金の無駄」と言っている
(プロになるにはサイボーグになる必要がある時代までもう少し?)

  • Whole Foodsの反GMO詐欺

Whole Foods' Anti-GMO Swindle
09.15.14  Michael Schulson
http://www.thedailybeast.com/articles/2014/09/15/whole-foods-anti-gmo-swindle.html
「遺伝子組換え不使用」の可愛いラベルは、科学であなたを守るものではなく、恐怖を利用してお金を儲けるためのもの
大手スーパーマーケットチェーン店Whole Foodsが「ノンGMOプロジェクト認証」というチョウチョの描かれた可愛らしいマークをつけた商品を店舗に並べている。これまで2000ブランド2万以上の商品が認証されている。認証団体は自然食品企業からの寄付で運営されている。この一見無害なマークはしかしよく見ると詐欺的手法を使っている。一つは、米国の公的に認証されたオーガニックならGMOフリーであり消費者はそれを選ぶことでGMOを避けることはできる。もう一つはこのプロジェクトの認証した製品の多くがもともとGMなど存在しないものである。つまりGMOフリー認証マークのついたアーモンドは認証マークのついていないアーモンドと同じである。しかしマークをつけて高く売る。さらに店の中にGMOフリーの単語を溢れさせることでGMOは悪いものだという印象を消費者に与えることができる。
選挙の時のTV CMを見たことがある人ならわかるだろう、誰かに情報を与えることが必ずしも彼らを情報通にはしないことを。文脈無しに感情的単語を食品包装に強調することは、消費者が自分が食べているものについてより良く知ることにはならない。

  • アクリルアミド裁判

Acrylamide Litigation | Current Cases
http://www.toxictorts.com/index.php/about-us/cases/current-cases/acrylamide-litigation
Proposition 65について、発がん物質であるアクリルアミドを含むことをマクドナルドやバーガーキングのフライドポテトについて表示させる裁判が最初のケースで、現在はスターバックスとコーヒーへの表示について裁判中。
カリフォルニアではコーヒーにも「発がん物質を含む」表示が義務化されるかも
(コーヒーそのものは発がん性どころか負の関連があったりする。アクリルアミドの発がん性が確かだとして、コーヒーに発がん物質が含まれると表示することは公衆衛生政策として「素晴らしいこと」なのだろうか、という良い例だろう。食品の表示問題は、全体がわかっていない中で一部だけわかっていることをあたかもそれが重要であるかのように表示することに意味があるのかという話。)

  • 交配作物がより早く適応

Natureニュース
Cross-bred crops get fit faster
Natasha Gilbert
16 September 2014
http://www.nature.com/news/cross-bred-crops-get-fit-faster-1.15940
干ばつ耐性トウモロコシを作る努力においてはGMが交配に遅れをとる
気候変動による影響が激化する中世界中の農家は干ばつに耐える作物が迅速に必要である。2006年に3300万ドルで始まったアフリカのための干ばつ耐性トウモロコシプロジェクトでは13ヶ国で153の新しい品種を開発した。2016年にこのプロジェクトが終わるがこれらによりもたらされた収量の増加は13ヶ国で最大9%の貧困を救うのに役立つと報告されている。成功の大部分は巨大種子バンクへのアクセスと交配による。干ばつ耐性は複数の遺伝子が絡む複雑なもので一度に一つの遺伝子しか操作できない組換えではそれほど早く開発できない。通常の交配も大きな影響があるが、全ての選択肢を検討することが重要である。

  • シャーロットのFood Babeにはたくさんのファンと少しの批判者がいる

Charlotte’s Food Babe has lots of fans – and some critics
By Kathleen Purvis
Posted: Monday, Sep. 08, 2014
http://www.charlotteobserver.com/2014/07/13/5040109/charlottes-food-babe-has-lots.html#.VBjsWKTlpaQ
食品企業を批判するblogなどで有名になったVani Hariは個人的体験と自分自身のルックスを売りにしてFood Babeブランドであらゆるお気に入りを宣伝し、たくさんのフォロワーからカリスマ的支持を得ている。ウェブで6桁の収入があるという。
彼女のコミュニケーション能力は抜群だがその話す内容には強い批判がある。特に彼女のキャンペーンが注目を集めるとその科学的根拠の無さに批判が集まる。例えば最近の彼女の投稿ではビールにアイシングラスを使っていることを危険だと非難していたが、アイシングラスは18世紀からビールを清澄にするために使われている魚由来のタンパク質である。
さらにビールに「凍結防止剤成分」が入っていると主張しているが実際にはそれは海草由来の泡を安定化する成分であるアルギン酸プロピレングリコールで、不凍液に使われるプロピレングリコールではない。
彼女の支持者は企業を批判すれば必ず批判されるという。しかしHariを批判しているのは別に食品企業の人間のみではない。単に科学的間違いを拡散されるのがイヤな科学者である。例えば彼女はワクチンが危険だから予防接種は受けないと書き、それについて予防医学の専門家が批判している。Hariは良いことをしようとしているのだろうが基本的知識がない。
Hariが声高に成功を叫んでいるサブウェイのパンからアゾジカルボンアミドを排除した事例は、食品を安全にしたように見えるかもしれないが相変わらず脂肪や塩は使っている。そのような小さな成功を大げさに主張することで安心するのは何も言わないより悪いかもしれない。安全に寄与しないことを変更した企業の宣伝材料になるだけだから。
(タバコ企業が何やってるか知ってる?タバコに含まれる何千もの化合物の情報を精査します、それが終わるまでは何もしません、っていう戦略。食品を構成する化学物質の数なんていくらになることか。)