食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

内分泌活性物質に関するFAQ

http://www.efsa.europa.eu/en/topics/topic/eas.htm?activeTab=5

1.内分泌系とは何か?何故健康に重要なのか?
内分泌系は体内のホルモンの分泌と濃度の制御管理をする分泌腺のネットワークである。ホルモンは代謝・成長と発育・睡眠と感情のような体の機能を実行するのに欠くことのできない化学伝達物質である。目的とする行動を起こすのに必要なホルモンはほんの少量である。内分泌系は複雑で、ホルモン分泌を制御するこのシステムの相互作用は様々な生物学上及び生理学上の要因に影響される。このシステムの科学的知見はまだ発展途上である。
内分泌系が不均衡や機能不全になると、糖尿病・肥満・不妊・ある種のがんなど、よく知られた病気になることがある。また、内分泌系の混乱は先天異常や学習障害の原因となる可能性がある。

2.内分泌活性物質とは何か?「内分泌攪乱物質」と同じか?
内分泌活性物質は内分泌系に相互作用したり干渉したりする化学物質である。これは様々な方法でおこる。天然のホルモンに似ているが正常でない反応を引き起こしたり、天然のホルモンの影響を妨げることもある。あるものは体内のホルモンの量を変えたり、天然のホルモンを分解する代謝過程を変えたりする。重要なことは、これらの影響は必ずしも有害ではないということである。内分泌系は物質の性質や用量、タイミング、影響の種類、体調などの要因に応じてこれらの刺激に順応し、適合する能力がある。この内分泌系の能力は時には適応反応あるいは「生理的調節」と呼ばれる。だが、この相互作用や干渉が有害影響を起こすときには、これらの物質は内分泌攪乱物質と呼ばれる。

3.何故内分泌攪乱物物質が心配されているのか?
内分泌攪乱物質の暴露は、短期の、あるいは人生の後半での有害影響の可能性を増すことがある。内分泌攪乱物質の有害影響の可能性への懸念は、ヒトや野生動物での観察により近年高まっている。これらはヒトの集団での生殖や発育の障害を含む内分泌疾患及び障害率の増加を示す。だが、(生活様式の変化や遺伝的背景などの他の要因に対して)このようなすべての傾向と内分泌攪乱物質を関連づける科学的根拠は決定的なものではない。

4.感受性の高い時期とは何か?
発育の重要な局面(たとえば受胎・妊娠・乳幼児・小児・思春期)で生じた内分泌攪乱物質への暴露時には有害影響リスクが増す恐れがある。科学者たちはホルモン活性に対して体がより影響されやすい時であるこれらの重要な局面を「感受性の窓」と呼んでいる。しかし、感受性の窓は内分泌攪乱物質に限ったことではない。人生の重要な局面で(内分泌系に影響しない)他の有害物質への暴露も健康への有害作用のリスクを増加させる恐れがある。

5.内分泌活性のある物質は食品やその他の製品中に存在するのか?
私たちは天然に日常の食事に存在したりヒトの活動の結果として生じる広範な内分泌活性物質に暴露されている。ホルモン影響のある、天然に食品に存在する物質の例として、ナッツ・脂肪種子・大豆製品によくあるイソフラボン類のような植物性エストロゲンがある。他の例には、血圧の調整に重要な、血中やさまざまな器官のミネラルと体液のバランス(または「電解質バランス」)のホルモン調整を混乱させる恐れのある甘草のグリチルリチンがある。食品や飼料中の内分泌活性物質の例は、ダイオキシンやPCBsのような環境汚染物質だけでなく、ある種の農薬や食品と接触する物質であるビスフェノールA(BPA)などもある。いくつかの内分泌活性物質はその内分泌活性のため、医薬品(経口避妊薬甲状腺ホルモンの代替)に意図的に使用されている。

6.内分泌攪乱物質と内分泌活性物質についてEFSAは何を求められたのか?
EFSAは食品チェーンに存在する内分泌活性物質の影響を同定し、特徴を明らかにするという指令を与えられた。欧州委員会健康消費者保護総局(DG SANCO)の総局長はEFSAに3つのカギとなる質問に関する入手可能な科学的情報を調査し科学的意見を準備するよう求めた。
・内分泌攪乱物質を同定するためにどのような科学的基準が使用されているのか?
・ヒトの身体機能や生態系の通常の調整と内分泌攪乱物質の有害影響の可能性を識別するためにどのような基準が適用できるのか?
・適切に内分泌活性物質の影響をカバーする毒性試験方法は存在するのか?

委員会は2013年3月までに科学的意見を提供するようEFSAに求めた。
この分野でのEFSAの以前の作業は、現状を明らかにし科学とコミュニケーション問題のための勧告を提供した2010年に発表された内分泌活性物質に関する報告書を含む。EFSAはまた、21カ国から100人以上の専門家が出席した毒性の低用量反応とリスク評価に関する科学会議を2012年6月に開催した。

7.どうして今これを求められたのか?
EFSAの貢献は広範なEU戦略の一部である。欧州委員会の環境総局長は内分泌攪乱物質に関するEU戦略のレビューをまとめている。欧州委員会は内分泌攪乱物質の特性を同定するための基準を規定する法律案を準備するよう求められた。EFSAの科学的助言はこのレビューの一部であり、多様な分野(化学製品、農薬、殺虫剤)の現行の法律を改訂するEUの意思決定者を支持し、情報を提供している。
EFSAの意見は、食品と接触する物質、農薬及び食品と飼料中の汚染物質のような分野での現在進行中及び未来の科学的作業も支えている。

8.EFSAの意見はこれらの物質についての議論に何を付け加えたか?
EFSAは科学に基づいた基準を用いて何が内分泌攪乱物質で何がそうでないのかを定義する際にリスク管理者に役立つ入手可能な試験方法をレビューした。EFSAは全ての内分泌活性物質が内分泌攪乱物質ではないことを強調している。これはその物質が内分泌系の相互作用や妨害の結果として有害影響を引き起こす可能性のある正当な証拠があるかどうかによる。現行の試験方法のレビューはこの作業の重要な一部であり、EU及びこの分野の国際的議論に貢献している。

9.どうやって科学者は「内分泌攪乱影響」を同定できるのか?
EFSAは物質が内分泌攪乱物質だと考えられるには3つの基準に合わなければならないという世界保健機関の定義を支持している:1、有害影響の存在、2、内分泌活性の存在、3、その二つの因果関係。だが、身体機能の通常の調節(いわゆる「適応反応」)から内分泌攪乱物質(及び他の物質)の有害影響の可能性を見分けるための明確な特定の科学的基準がないので、専門家はそれぞれの物質に対して個々の場合に応じて入手可能な証拠の重みを評価する必要がある。

10.現在の試験法はこれについて適切なデータを提供するか?
EFSAの専門家は内分泌活性物質の同定のための標準化試験法を(国際的に)調査した。合理的で完全な一連の「アッセイ」(テストや試験)が、現在内分泌攪乱物質に対する感受性が高いことが知られている哺乳類と魚の内分泌経路系の4つの重要な経路について入手できる、あるいは間もなくできるだろうと彼らは結論した。鳥類と両棲類については少ない。試験法の多いホルモン経路は、エストロゲン、アンドロゲン、甲状腺及びステロイドホルモンに関するものである。
重要なことは、1つのテストでは、ある物質が内分泌攪乱物質であるかどうかを決めるために必要なすべての情報を提供できそうもないということだ。理由の一つは、試験が一般的に、内分泌活性かあるいは異なる種類の有害影響かを確認するためにデザインされていてその両方ではないいうことである。結果として数種類の試験が行われる必要があり、それから証拠の重み付けアプローチを用いて専門家により一緒に評価される。

11.いわゆる「低用量影響」についてこの意見ではEFSAはどう言っている?
いわゆる低用量仮説によると、「影響のない」濃度だと思われているよりも低い用量や濃度で有害影響を引き起こすこと信じられている物質がある。EFSAの科学委員会は、その科学的意見で低用量影響の存在 / 妥当性に関する国際的コンセンサスがないと注記している。異常が発見された場合は、より広範囲の用量で解析が行われることがある。一般的にEFSAは、内分泌活性や他の毒性影響によるかどうかにかかわらず、最低濃度で生じる有害影響を安全性評価に使用し続けるべきだと考えている。これにより、より高用量での他の内分泌関連の影響から守られるだろう。
・低用量影響と内分泌活性物質に関するFAQ

低用量仮説としばしば混同される別の問題は、「非単調用量反応関係」である。多くの化学物質の毒性試験では、化学物質の用量が高くなるほど、その効果と有害影響の可能性は大きくなると理解されている。非単調用量反応曲線は、ある用量では用量が増えると反応が増え、別の地点では用量が増加しても反応が低下するときに作られる。これによりU字型の曲線や他の不規則なパターンの結果となることがある。この関係については将来の科学的テーマとすべきだとEFSAは意見の中で推奨している。だが、この影響は内分泌活性物質に特有のものではなく、広範な化学物質について考えるべきだとEFSAは述べている。

12.この意見は「化学物質混合物」問題に対応している?
複数の化学物質(または「化学物質混合物」)への混合暴露は複合した毒性が発生する可能性がある。EFSAはこれを内分泌活性物質に特有であるとは考えていない、別の問題である。EFSAは他の活動を通してこの問題を扱っている。
2013年にEFSAは化学物質混合物を評価するための国際的な枠組みをレビューした科学的報告書を発表した。この報告書は調和した用語とリスク評価の方法論の公表を支持し、この分野での将来のEFSAの作業のための土台を提供した。ヒトの化学物質のハザード評価のための最新の方法論及び手段に関する2番目の報告書は2014年に発表された。その報告書は科学的文献と国際的な努力、また化学物質混合物リスク評価の最新の方法論と手段の応用の将来の見通しなどの例を含んでいる。
・複数の化学物質への混合暴露のヒトのリスク評価を扱う国際的な枠組み
・化学物質のヒトのハザード評価のための最新の方法論及び手段

13.消費者にとって内分泌活性物質に関するEFSAの科学的助言は何を意味する?
現在入手可能な試験方法についてのEFSAの評価は、科学に基づく基準を使用し、何が内分泌攪乱物質で何がそうでないのかを定義するEUの意思決定者の役に立つだろう。これは消費者、動物、環境の可能な限り高水準の保護を保証する保護目標を設定するのに役立つだろう。

14.具体的にはこの仕事はどう使われる?
この話題についてのEFSAの仕事は主に食品チェーン(たとえば、農薬)に関する内分泌活性物質に関係している。これは欧州委員会が調整した広範な戦略の一部で、多様な分野(化学物質、農薬、殺生物剤)の内分泌活性物質の規制に関する現在の法律を改訂するEUの意思決定者を支援し、情報を与えることを意図している。
EFSAは内分泌攪乱特性の評価のための適切なデータを作り出すのに役立つ試験方法と試験戦略を含む、将来の行動のための具体的な助言も行っている。また、内分泌活性物質に特有ではない数多くの問題(有害と有害ではない健康影響を定義するための基準、混合化学物質に対する複合暴露、非単調用量反応関係)が現在の方法論と試験戦略にどのように影響するかということを幅広い文脈の中で明確にすることも推奨している。

15.EFSAは内分泌攪乱物質を禁止するかどうか決めたのか?
EFSAは食品中の物質の使用を認可も禁止もしない。必要な場合に、科学的助言と他のことを考慮して対策を定義したり同意したりするのは、欧州委員会欧州議会EU加盟国のリスク管理者の責任である。
EFSAの役割は食品と飼料の安全性に関しリスク管理者に独立した科学的助言を提供することであり、一般公衆に助言を伝えることである。これに関連してEFSAの科学的委員会と科学的パネルは安全性評価と新しい証拠のレビューを行っている。
科学的組織として、EFSAは食品チェーンに存在する他の全ての物質のように、消費者の安全性を確保するため入手可能な情報を最大限に利用してこれらの物質のリスク評価を行うことを推奨している。そのような取り組みは、物質の有害影響の可能性と、そのような物質への暴露の可能性の両方を考慮する。科学者たちが、何が内分泌攪乱物質で何がそうでないかを、専門家の判断と証拠の重み付けによって明確にできるとEFSAは信じている。

16. この意見のためにEFSAは作業をどのように計画し、実行したのか?
EFSAは、既存の知識、ヒトの健康に関する不確かさ、食品チェーンの内分泌攪乱物質の環境ハザードを調べて2013年3月に欧州委員会の要請に応じた。EFSAの科学委員会とこの話題に関連するパネルの専門家の貢献により作業が行われた。欧州機関の科学的メンバーである、欧州医薬品庁(EMA)、欧州環境庁(EEA )、欧州化学品庁(ECHA )、欧州委員会(EC)、植物・動物・食品・飼料に関する常任委員会(前フードチェーン及び動物の健康に関する常任委員会)、共同研究センター(JRC )も会議に出席した。
作業グループの構成とメンバーの利害関係は2012年12月6~7日の最初の会議の前にオンラインパブリックコメントで発表した。

17. EFSAは求められた専門知識をどのように確認したのか?
EFSAは、リスク評価、毒性学、内分泌学(人と環境面両方を含む)を含むこの意見に求められる科学的な専門知識の領域を注意深く配置した。そのためEFSAはこれらの分野の専門家である科学者で、独立と科学的意思決定過程とその規則の実行に関するEFSAの方針により、利害関係(DoIs)の可能性のない人を探した。
一貫性の確保の観点から、EFSAは内分泌活性物質のリスク評価を含むEUの他の科学的助言団体、EMA、 ECHA、EEA、及び共同研究センター.からの支援も求めた。さらに、世界保健機構(WHO)と経済開発機構(OECD)によって実施された作業を注意深く考慮した。

18. 内分泌活性物質に関するEFSAの作業グループに任命された専門家のための選考過程は何だったのか?
EFSAの基本方針はその作業において最高の科学的専門知識を保証することである。作業グループに選ばれた専門家が辿る過程は、最初に取り上げる必要のある専門分野を確認し、それから専門知識があり、利害関係のない専門家を探しだす。
EFSAでの全ての科学的作業と同様に、作業グループの専門家はいつも彼らの専門的知識に基づいて選ばれ、何かの組織の代表ではなく個人の能力で作業グループに参加している。
この選考過程において、EFSAは科学的作業グループの設立、更新、解散に必要な段階を詳述する科学的標準運営規定 (SOP)に従った。このSOPはEFSAのホームページ上で発表された科学的委員会、パネル、作業グループの専門家の選考に関する事務局長による決定を実装したものである。

19. 内分泌活性物質に関するEFSAの作業グループの構成はどうなっている?
内分泌活性物質に関する作業グループの構成は必要とされる専門家の領域に基づいていて、18人のうち全員が毒性学の専門知識があり、17人はリスク評価の、7人はヒトと環境の内分泌専門家である。また、特別な場合には、欧州委員会のDG SANCO、ECHA、EMA 、EEA、JRCから職員がオブザーバーとして作業グループに参加する。
このリスク評価、毒性学、内分泌学の一般専門知識は、内分泌攪乱物質を確認する科学的基準を提案するという委員会の要請を扱うために、そして既存の試験方法の妥当性をレビューするために、再検討の例題として、また規制リスク評価の展望の両方から必要とされている。

20. EFSAは科学的助言の独立性をどのように保証するのか?
EFSAは科学的専門家の選考から利害関係の厳正な審査と科学的パネルの合議による意思決定まで、科学的作業の独立性を守るための強力な一連の内部機構を適用している。作業グループの全ての専門家は関与の宣言、独立して行動する約束と利益関係の年次書類(ADoI) に署名するよう求められ、それはEFSAの独立性と科学的意思決定プロセスに関する方針を実装した規則に従って精査されている。