食品安全情報blog過去記事

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その他

  • ココアと認知についての専門家の反応

SMC
expert reaction to cocoa and cognition
October 26, 2014
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-cocoa-and-cognition/
Nature Neuroscienceに研究者らがココアに含まれるようなフラボノールの多い食事が神経学的に良い影響があるという知見を発表した。彼らは小規模試験で高フラボノール食の参加者の認知検査の成績がよいこと、fMRIで測定した海馬の状態が改善されていることを見いだした。
Bristol大学認知症神経学コンサルタント上級講師Liz Coulthard博士
この研究は加齢に伴う記憶障害が食事変更により元に戻ることを仄めかし高齢化する人たちにとって魅力的な話である希望がもてる結果ではあるが参加者が37人しかいないこと、低及び高フラボノールココアのカフェインとテオブロミン濃度に小さいながら差があり効果があるのはフラボノールではない可能性があること、改善が見られたのは反応時間のみで正確さに差はなくそれは必ずしもメリットなのかどうかわからないこと、単に参加者が注意して試験をこなすようになった可能性があることなどから慎重に解釈すべきである。より大規模でいろいろな認知機能に利点が見られれば素晴らしいだろう

アルツハイマー研究UKの研究部長Simon Ridley博士
この小規模試験はココアに含まれるフラボノールの短期での影響の可能性を示したが、フラボノールの多い食事が高齢者の認知機能を高めるかどうかについてはより長期で規模の大きい試験が必要であろう。ここで用いられた試験の成績がよいことが日常生活に意味のあることなのかどうかもわからない。また認知症について調べたわけではなく、認知症の発症や進行への影響はわからない。この研究で使われたサプリメントはこの研究のためにカカオ豆から特別に作られたもので、これを根拠にチョコレートをたくさん買い込むべきではない。認知症の原因や予防研究は続けて必要で、現在確実に認知症を予防する方法はないが、健康的な食生活と定期的運動と禁煙と血圧と体重維持が認知症リスクを減らすのに役立つ。

*食事由来フラバノールが加齢による記憶低下を逆転する
Dietary flavanols reverse age-related memory decline
26-Oct-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-10/cumc-dfr102314.php
コロンビア大学医療センターのScott A. Small 博士らの研究がNature Neuroscienceにオンライン発表された。研究費を出したMars社の作成した実験用ココアフラボノール飲料を用いて、50-69才の37人の健康なボランティアに900mgフラボノール/日と10mgフラボノール/日に無作為割り付けして3ヶ月、実験前後での脳の画像解析(歯状回の血流)と記憶テストを行った。
(メディアで大々的に報道されている)

  • インドの伝統医療の科学を探る

Searching for science in India's traditional medicine
Priyanka Pulla
Science 24 October 2014: Vol. 346 no. 6208 p. 410
何世紀もの間インドの伝統医療あるいはアーユルベーダのプラクティショナーは患者を診るのに標準手法に従ってきた。彼らは症状や家族歴、バイタルサインではなく、3つの性質の組み合わせからなるプラクリティを判断して、それにより治療する。このアプローチは西洋医学にとっては馴染みがないがインド政府はアーユルベーダが科学に基づくものであることを示そうと躍起になっている。政府の強力な支援で“アーユルゲノミクスayurgenomics”という新しい分野に多くの研究者や研究所が参加し、多くの論文を発表している。この努力には多くの批判もある。懐疑論者はアーユルベーダで使われているハーブ治療薬から医薬品を作ろうとした試みが失敗していることを指摘する。さらにアーユルベーダ製品からは重金属が検出されていて名を汚している。それでもインド中央政府は大きな熱意をもっている。アーユルゲノミクスには2007年に出資を開始し2012年には2017年までの5ヶ年計画で1600万ドルを出した。支持は高まるばかりで与党はアーユルゲノミクスが最優先課題だという。アーユルゲノミクスが注目されたのは2008年に分子生物学者Mitali Mukerjiが単一の性質の強い極端なプラクリティに分類される人はいくつかの疾患関連遺伝子の発現パターンが異なると発表してからである。カファプラクリティの人はトリグリセリドやコレステロールが高いという。しかし懐疑派はカファプラクリティの人は肥満が多いと指摘している。しかしMukerjiのグループは2010年にはPNASにカファプラクリティの人は高山病の急性型に関連する遺伝子変異が多いという報告をした。しかし懐疑派はプラクリティの概念が広すぎることを指摘している。
最近のアーユルゲノミクスの論文にはもう一つの懸念、適切なピアレビューがされていない、がある。
(漢方だと「実証の人の方が虚症の人よりコレステロールが高い」とかいわれてもそりゃそうだろとしか思えないけれどアーユルベーダはどうなんだろう。)