食品安全情報blog過去記事

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おもちゃのクロムVIについての最終意見

Final Opinion on Chromium VI in toys
10-02-2015
http://ec.europa.eu/dgs/health_food-safety/dyna/enews/enews.cfm?al_id=1566
SCHERがおもちゃのクロムVIの安全性についての最終意見を発表した。
現在EUおもちゃ安全性指令ではクロムVIを含む17の元素について溶出基準が設定されているが、この意見では現在のクロムVIの溶出基準を引き下げるよう求めている。
SCHERは提案されている値は保守的なもので、一部の材料については達成できない可能性があること、溶出量の測定方法に限界があり感度が十分でないことなども指摘している。
子どもたちはクロムVI暴露の毒性影響を受けやすく、飲料水、空気その他から既に暴露限度上限まで暴露されている可能性があることから、おもちゃからの追加の暴露は最小限にすべきとしている。
クロムVIは金属おもちゃの他に皮革、木材、布のおもちゃにも検出される。消費者は溶出限度を守っていることをCEラベルで確認するように。
最終意見
chromium VI in toys
http://ec.europa.eu/health/scientific_committees/environmental_risks/docs/scher_o_167.pdf
クロムVIは齧歯類で口腔がんを誘発するがヒトでの低用量暴露に当てはまるかどうかには不確実性がある。生体組織と接触するとクロムIIIに速やかに変わる可能性があるが、還元力が十分でなければクロムVI暴露による発がん性は否定できない。子どもがおもちゃを舐めることによる暴露が発がん性にとって重要な経路なので子どもは毒性影響を受けやすい集団とし、安全係数10が正当であろう。現行の溶出基準は2008年にデータがない状態で「極めて不確実な実質安全量highly uncertain daily virtual safe dose」の0.0053 microg/kg/dをもとに設定されたものであるが、最近の研究から生涯発がんリスク10-6に相当するVSDとして0.0002 microg/kg/dが導出できた。したがってこれをもとに現行の溶出基準を改定すべきである。おもちゃ安全性指令によると溶出限度はVSDの5%であるので、新しい溶出基準は、削れるおもちゃ素材については0.0094 mg/kg、ドライおもちゃ素材(粉末状あるいは柔軟な)については0.0008 mg/kg、液状やくっつく素材については0.0002 mg/kgを提案する。
現在の測定法ではクロムVI のLODが0.026、LOQが0.053なので技術的困難がある