- プレスリリース
広く使用されている食品添加物は大腸炎、肥満、メタボリック症候群を促進することを研究が示す
Widely used food additive promotes colitis, obesity and metabolic syndrome, research shows
25-Feb-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-02/gsu-wuf022315.php
Natureに2月25日発表された研究。
マウスによく使われている乳化剤であるポリソルベート80とカルボキシメチルセルロースを食べさせ腸内細菌叢の組成変化を観察した。乳化剤摂取の影響は腸内細菌叢の無い無菌マウスでは見られなかった。
著者であるジョージア州立大学生命医学研究所のAndrew T. Gewirtzは「我々は肥満やメタボリック症候群の主要原因が食べすぎであることに合意しないわけではない。そうではなく、我々の知見は腸内細菌叢の変化によりもたらされた軽度の炎症が食べ過ぎの根底にある原因であるという概念を支持する」という。
(このプレスリリースには具体的な量については触れていない)
- Scienceニュース
包装済み食品の良くある成分が炎症性疾患の引き金となるかもしれない
Common ingredient in packaged food may trigger inflammatory disease
By Kelly Servick 25 February 2015
http://news.sciencemag.org/biology/2015/02/common-ingredient-packaged-food-may-trigger-inflammatory-disease
アイスクリームやチョコレートバーなどを滑らかにし安定させる成分がある種の慢性炎症性疾患を促進するかもしれない、というのがマウスに加工食品によく使われている二つの乳化剤を食べさせると消化管の炎症とメタボリック疾患が増えることを発見した新しい研究の主張である。著者らはヒトで同様の影響があるかどうかを確認することにはほど遠いが、これらの成分が腸内細菌の集まりであるマイクロバイオームと免疫系とのバリアを撹乱して障害を与えるのではないかと示唆している。
本日Natureにオンライン発表されたこの知見は、この研究には関係のないアルバータ大学の微生物学者Karen Madsenによれば「信じられるし素晴らしい」。「供給される食品の変化が我々の微生物叢と我々の健康に影響しているというメッセージを送るものだ」
ジョージア州立大学の微生物学者Benoit Chassaingは腸内細菌が腸壁の粘膜層を破って細胞に触れることが先進国での加工食品の増加と炎症性腸疾患の増加の相関を説明できるのではないかと考えた。そこで界面活性剤に注目した。2009年の研究では腸に炎症をおこしやすいように遺伝子組換えされたマウスにCMCを与えると象徴での細菌数が増え炎症が増加した。新しい研究ではCMCとポリソルベート80を遺伝子組換えマウスと野生型マウスに与えた。病気になりやすいマウスでは12週間乳化剤を食べたり飲んだりしたところ腸炎発症リスクが40%から80%に増加した。野生型マウスは腸炎にはならなかったが軽度の炎症といくつかのメタボリック症候群の兆候が見られた。メカニズムは不明だがいくつかのヒントを提示した。顕微鏡で観察すると腸の細菌と腸細胞の平均距離が短くなっていた。また乳化剤を与えたマウスの糞には粘液を消化する細菌の数が多かった。
腸の炎症を研究しているUppsala大学の生理学者Mia Phillipsonは、これらの物質が腸内細菌に影響することは驚くにあたらない、という。ベジタリアンになることから帝王切開で生まれることまであらゆることが我々の腸内細菌の組成を有意に変えうる。ただここまで詳細に食品添加物の腸内細菌への影響を調べた研究はそれほど多くはない。我々はこれがどの程度重要なことなのかをこれから認識しようとしているところにいると思う。ヒトにあてはまるかどうかについては、一般的な助言をするには時期尚早であるとしながらも炎症性腸疾患のあるヒトは避けることを検討してもいいかもしれないとPhillipsonは言う。
Chassaingもまたこれらの乳化剤を悪者にしないよう注意する。「社会はあまりにも大きく変わったので、食品に使われている要素は他にも多くどれが最も重要なのかわからない」彼らは現在、数週間普通の西洋風食生活と完全に乳化剤を避けた場合のヒトでのマイクロバイオームを比較する研究を計画中である。
- Natureニュース
食品の保存料が肥満と腸疾患に関連
Food preservatives linked to obesity and gut disease
Sara Reardon 25 February 2015
http://www.nature.com/news/food-preservatives-linked-to-obesity-and-gut-disease-1.16984
Natureに2月25日にオンライン発表された研究によると、多くの加工食品に使用されている合成保存料が炎症性腸疾患とメタボリック疾患リスクを増やすかもしれない。
アイスクリームのテクスチャーを滑らかにしたりマヨネーズが分離するのを防ぐために加工食品には約15の乳化剤が使われている。FDAなどの規制機関はがんリスクやほ乳類への毒性影響の根拠がないため「一般的に安全とみなされる」と判断している。
しかしジョージア州立大学のAndrew GewirtzらがマウスにCMCとポリソルベート80を与えたところ動物の健康に影響があった。乳化剤を含む水を飲ませた健康なマウスは太って耐糖能異常を示し、炎症性腸疾患になりやすいように遺伝子を改変したマウスでは病気の重症度と頻度を増やした。最も重い影響が見られたのは、ヒトで全ての食事がアイスクリームである場合に相当する量を食べた群である。
この理由を理解するために件急須やらは動物の腸の細菌を解析した。
(中略)
昨年イスラエルのWeizmann Institute of Science のEran Elinavらはサッカリンなどの人工甘味料がマウスとヒトの腸内細菌を変えることで肥満や糖尿病などの原因になる可能性があると報告し、彼らは現在約1000人のボランティアでいろいろな食品を食べたときの遺伝子及びマイクロバイオームのデータベースを構築中である。彼らは乳化剤も研究に含むつもりである。ただし炎症やメタボリック疾患には多くの要因があり、一つの要因だけで病気になるのではない。
Gewirtzは、規制機関が食品添加物の認可のしかたを変えることを検討するにはもっと多くの動物やヒトでの試験が必要だという。結局のところ食品から保存料を排除すれば早く腐って別の健康リスクになる。彼はヒトでの研究を計画していて既に細菌を調べるため患者の手術から得た生検を集めている。
しかしGewirtzは既に確信していて購入する食品の表示のチェックを始めている。乳化剤を全く含まない食品を探すのは簡単ではなく、「オーガニック」製品かどうかも関係ない。彼は加工食品を減らすのがいいだろうという。
(Natureの方がScienceより煽り成分多め。
CMCは水溶性食物繊維として「健康的」を謳った食品に使われている場合もある
問題の論文
Dietary emulsifiers impact the mouse gut microbiota promoting colitis and metabolic syndrome
Benoit Chassaing et al.,
Nature (2015) doi:10.1038/nature14232
(Letterなのにやたらページ数が多い
C57Bl/6マウスに飲料水1%で12週間。トランスジェニックはIl10−/− と Tlr5−/−の2系統。ほとんどは飲料水投与。0.1%と0.5%も一応やってるようだが食欲以外で差があるのは1%群のみのようだ
太ったというのは食べる量が増えているので当然。何故増えるのかな?CMC(シグマのMw ~250,000) 1%って結構どろっとしていると思うが。一週間に一回しか変えないのか・・
食べる量が増えて太ったことの影響のほうが大きいかもしれない、のだが。
細菌の距離は糞つき腸組織をmethanol-Carnoy’s固定したものをFISH染色して共焦点(Zeiss LSM 700)で観察 そんなんでいいのか?)
- UK SMC
食事由来乳化剤とマウスの炎症についての研究への専門家の反応
expert reaction to study on dietary emulsifying agents and inflammation in mice
February 25, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-on-dietary-emulsifying-agents-and-inflammation-in-mice/
Natureに発表された、多くの食品に含まれる乳化剤の有害健康影響の可能性を調べた研究について。
St George’s Hospital NHS Trust主任栄養士Ms Catherine Collins
乳化剤は、安定した食品のテクスチャーになるよう成分が分散するのを助け、食品の成分が分離しないようする物質である。天然卵黄に含まれるレシチンが一例で、油と酢と一緒によく混ぜれば、濃厚な乳濁液を形成し、私達が知っているマヨネーズになる。卵のレシチンは水と油が懸濁した状態を維持するのに役立つ。乳化剤には広範な種類があり、卵や大豆のレシチンから、この研究で使われた2つのように、天然物を加工したり合成して作られるものなどがある。
乳化剤はしばしばある種の食品のテクスチャーを安定にするために植物のゴムや海藻のアルギン酸のような増粘剤と一緒にあるいはその代わりに使われる。全てE番号がついている。英国ではいくつかの種類の乳化剤が使用を認められている。この研究で使った二つはポリソルベート-80 (E433)とカルボキシメチルセルロース (E466).である。
大腸炎になりやすいマウスに飲料水で純粋な乳化剤を与えると腸内細菌の種類が変わって「粘液を分解する」細菌が増えた。粘液を分解する細菌は大腸の天然の保護層である粘液を壊して腸の細胞と細菌が直接接触する。そこに炎症が起こり大腸炎につながる、というのが研究者が発見したことだ。
これは大腸炎になりやすいマウスでの興味深い研究ではあるが、与えた量(水または餌の1%)は我々が普通の食事から摂れる量より遥かに多い。腸内細菌の種類や数は、我々の食生活によって大きく変わることは既にわかっている。今回の2つを含むE番号のついた乳化剤はEUのヒト安全性評価をパスしている。しかしあなたが大腸の炎症による疾患を患っていて、ヒトの研究はなくてもこの乳化剤を避けたいと思うなら、食品表示をチェックすればいい。
King’s College London栄養名誉教授Tom Sanders教授
ある種の炭水化物ポリマーをたくさん食べると腸内細菌や免疫応答が変わり、炎症を誘発することは既に知られている。例えば海藻由来のカラギナンである。この論文は極めて高用量の二つの炭水化物ベースの食品添加物のマウスでの影響を調べた。ポリソルベート-80 (E433)のADIは10mg/kg体重である。ヒトが食事から摂る量は100-200 mg/dを超えることはまずない。しかしこの研究者らはマウスにこの化合物1%の水を与えている。一匹約20gのマウスは1日に約5mLの水を飲むので、1日の摂取量は50mg、つまり2500 mg/kgである。これは体重60kgの人間であれば150000mgを摂ることに相当し、ADIの250倍の量である。ヒトの食べ過ぎが食品添加物のせいであるかもしれないという彼らの結論は、注目を集めるが不当である。微量の添加物よりアイスクリームに含まれる脂肪、砂糖、カロリーの方がはるかに体重増加に寄与するであろう。