食品安全情報blog過去記事

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UK SMC

  • フードショック:専門家委員会が極端な気候による食糧備蓄への脅威を報告する

food shocks: expert task force reports on threats to food stocks from extreme weather
August 14, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/food-shocks-expert-task-force-reports-on-threats-to-food-stocks-from-extreme-weather/
熱波、干ばつ、洪水などの極端な気候により世界の食糧供給網に影響が出て価格が上昇するリスクが増加していることを強調した報告書が発表された。
これについてジャーナリスト向けに説明するイベント開催の告知

  • 低脂肪と低炭水化物ダイエットの体脂肪減少を比べた研究への専門家の反応

expert reaction to study comparing low-fat and low-carb diets and body fat loss
August 13, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-comparing-low-fat-and-low-carb-diets-and-body-fat-loss/
Cell Metabolismに発表された論文で、脂肪の少ない食事と炭水化物の少ない食事の違いを調べた。19人の肥満の人はどちらのダイエットでも体脂肪が減ったが低脂肪食の方が多く減った。
Oxford大学食事と集団の健康教授Susan Jebb教授
これは質の高い研究で、カロリー摂取量が同じなら、食事の組成に見合うように人体は代謝を適応させるのでほんの僅かの脂肪酸化(燃焼)の違いしかないことを示した。彼らが観察した僅かな違いはたった2週間という研究期間の短さによるものだろう。数学的モデルから予想された結果との類似性から、コントロール下では概ね予想通りに人体の組成が変わることを再確認した。しかし代謝ケージの中での与えられた食品しかない生活は食品への代謝上の影響しか調べることはできず環境応答はわからない。この研究は低脂肪でも低炭水化物でも代謝の違いはごく僅かであるため、最良のダイエット法はあなたが続けられる方法である、と正しく結論している。科学にとっての真の難問は食事の栄養組成ではなくダイエットを続けるための行動戦略である。どんなダイエット法でもあなたが食べる量を減らし続けられれば「効果がある」。しかし長期間続けるのは言うのは簡単だが実行は難しい。
UCL心血管系科学研究所国立心血管系予防アウトカムセンター名誉教授Nick Finer教授
減量するには脂肪を減らすのと炭水化物を減らすのとどちらが良いか?この研究が調べたのはこの問いである。肥満男女を代謝ケージに入れて炭水化物か脂肪を減らすことで30%のカロリー削減を6日間行った。これは大きな変化で、一日のカロリーで800kcal減で実際の生活で達成するのは難しいだろう。エネルギー支出は約90-100 kcals/day減りこれは減量のさいにおこることが知られている。炭水化物を減らしたときに脂肪の燃焼速度が増えたが、その影響は脂肪を減らすことの影響より小さく、脂肪を減らした場合のほうが体脂肪の減少は大きかった。この研究は短期的には肥満成人では脂肪を制限した方が炭水化物を制限するより体脂肪は減ることを確認し、体脂肪を減らすには炭水化物制限が必要だという理論は間違っていることを示した。実際に減量に成功するか失敗するかを決めるのはダイエット法の中身ではなくどれだけ続けられるか、である。

  • トランス不飽和脂肪と飽和脂肪の健康への影響を調べたレビューへの専門家の反応

expert reaction to review investigating the effects of trans unsaturated fats and saturated fats on health
August 11, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-review-investigating-the-effects-of-trans-unsaturated-fats-and-saturated-fats-on-health/
異なる種類の栄養素を正確にどのくらい摂ればいいのかについて多くの研究や助言や議論がある。あるグループが飽和脂肪と不飽和脂肪の影響を調べ、総トランス不飽和脂肪の摂取量は死亡率と冠動脈心疾患による死亡増と関連するが飽和脂肪ではそうではないことをBMJに発表した。
King’s College London栄養と栄養学名誉教授Tom Sanders教授
この論文は心血管系疾患がおこる数年前の個人の食事記録に基づく関連を報告している。飽和脂肪はリスク増加に関連しないがトランス脂肪は関連することを示す。しかし注意が必要で、関連は直接の因果関係ではない可能性がある。多くの場合摂取量は一度の食事評価により、その後数年間個人の食事内容も流通している食品の組成も変わらないと仮定している。また多くは記憶に基づいた方法で(24時間思い出し法)、これは相当なバイアスがある。特に油脂については食事頻度調査は摂取量の過小推定がある。
1970年代から飽和脂肪の摂取量は約40%減り多価不飽和脂肪の摂取量が50%増加している。トランス脂肪酸はもはや英国の食品チェーンにはなく過去10年もなく、トランス脂肪酸の主な摂取源は反芻動物由来である。しかしこの天然由来のトランス脂肪は冠動脈心疾患リスクの増加とは関連がないが血中脂質には工業由来のものと同じ作用を示す。
さらなる混乱は、飽和脂肪が多い赤身肉や加工肉はナッツや魚に比べればリスク増加に関連する。この知見を脂肪の多い肉をたくさん食べてもいいと解釈するのは馬鹿げている。英国では冠動脈心疾患による死亡率は、肥満の増加にもかかわらず1997年から55%減っている。原因は明確ではないが一部は供給されている食品の組成がトランス脂肪が減りオメガ3が増えるなど変化したためかもしれない。
英国心臓財団上級栄養士Victoria Taylor氏
このレビューの結果は人工的トランス脂肪を避けるようにという現在のガイダンスを支持する。英国では企業の対応でこれらの脂肪は排除され推奨されるエネルギーの2%以下に既になっている。飽和脂肪は総死亡やCHDによる死亡と明確に関連はなかったものの、それはバターを食べるようにすべきという意味ではない。この研究は因果関係を証明できない。むしろ食事と健康の真の関係を理解するのがいかに難しいかを強調する。飽和脂肪の多い食生活はコレステロール濃度の増加と関連する。しかしある栄養素を減らすと代わりに他のものが増え、それが何かによっては健康への影響が正にも負にもなる。飽和脂肪とCHDの直接の関係を強調すると食生活全体を検討する必要性を忘れてしまう。CHDの要因はたくさんあり、どんな食品や栄養であってもそれだけが原因ということはない。
我々は飽和脂肪は不飽和脂肪に置き換えることを薦め続ける。