食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 62年前:Salkポリオワクチンの最初の大規模試験

ACSH
62 Years Ago: First Mass Trials of the Salk Polio Vaccine
February 23, 2016 by Gil Ross
http://acsh.org/news/2016/02/23/62-years-ago-today-first-mass-trials-of-the-salk-polio-vaccine/
1954年の2月23日、ピッツバーグ のArsenal小学校の子ども達がJonas Salk博士の開発した新しいポリオワクチンの最初の注射を受けた。このワクチンは1952年にピッツバーグ大学のSalk博士が開発し試験を行っていたものである。SalkのワクチンはFrancis Field Trialと呼ばれるThomas Francisによる当時最大の試験に使われた。最終的に44州180万人が参加し何千人という医療従事者がワクチンを投与し結果を集めた。約44万人がワクチンを接種され、21万人がプラセボを投与され、120万人は何も接種されなかった。1955年4月12日に発表された結果は、SalkワクチンがPV1予防には60-70%有効、PV2予防には90%以上有効、PV3には94%有効だった。1955年にSalkワクチンが認可されると子どもの予防接種キャンペーンが始まった。米国では集団予防接種キャンペーンにより年間ポリオ症例は1953年の35000から1957年の5600まで減少し1961年には161例になった。
だから2月23日は全てのアメリカ人が我々を悩ませてきた伝染性疾患とそれを医学がやっつけたことについて思い出すべき日である。あまりにもしばしば忘れ去られたり否定されたりしているので。
(ちなみに日本では1960年(昭和35年)に流行があり1961年に外国からワクチンを緊急輸入しているらしい。)

  • 合成生物学の最初のマラリア薬は市場の抵抗にあう

Natureニュース
Synthetic biology’s first malaria drug meets market resistance
Mark Peplow 23 February 2016
http://www.nature.com/news/synthetic-biology-s-first-malaria-drug-meets-market-resistance-1.19426
医薬品を作るために遺伝子組換え酵母を商業利用することはあまり大きな影響がない
2014年にパリの大手製薬会社Sanofiが遺伝子組換え酵母を利用したマラリア薬の販売を始めたとき、合成生物学の偉業としてもてはやされた。酵母は発酵によりアルテミシニンの合成原料となる化合物を生産する。多くの人がこれによりマラリア薬が安価で豊富に供給されることを望んだ。しかし2015年にSanofiは「半合成」アルテミシニン(SSA)の生産はゼロでSSAの生産工場を売っている。
Bill & Melinda Gates財団からの6400万ドルの援助を受けて開発された、このような祝福された製薬技術が役にたたない状況はマラリア薬を巡る複雑な経済状況を象徴する。
SSAが出現する前は、アルテミシニンの原料は植物Artemisia annua(クソニンジン)のみであった。この発見は中国の科学者が2015年にノーベル医学生理学賞を同時受賞することにつながっているが農業生産は不安定であった。Artemisia annuaの不足により価格は高騰しそのため多くの農家が植え、価格が下がった。
合成生物学による生産は安定な供給により価格の激しい変動を終わらせると思われた。Sanofiは世界需要の約1/3である年60トンを生産できる能力があるがそれはおこらなかった。現在Sanofiは自社のアルテミシニンの原料としてSSAを使っていて世界のアルテミシニン併用療法の10%を供給しているが他の製薬企業への販売はしていない。理由は農業由来のものが溢れているからである。
(以下略)

  • あなたは子どもの遺伝子を編集すべきか?

Nature特集
Should you edit your children’s genes?
Erika Check Hayden  23 February 2016
http://www.nature.com/news/should-you-edit-your-children-s-genes-1.19432
CRISPR遺伝子編集についての激しい議論のなか、親の意見を言う時である
長い記事
重い病気の原因となる遺伝子を編集することに反対する人はあまりいないが、そうすることは社会に大きな影響を与える可能性がある。我々は全ての障害を取り除くことはできないのに、障害を取り除けるという考えが障害者への認識を変える可能性がある。チャンスは全ての人に平等なわけでもない。

  • ガーバーミルクは非GMOに、しかし本当はそうではない

Gerber Formula Goes Non-GMO, But Not Really
Feb 22, 2016  by Layla Katiraee and Kavin Senapathy ,
http://www.forbes.com/sites/kavinsenapathy/2016/02/22/gerber-formula-goes-non-gmo-but-not-really/#54d4942293c6
この会社の「ノンGM」は母親達を馬鹿にしたからくり
2月10日にガーバーが「グッドスタート」ブランドのミルクを非GMOにしたと発表した。ネスレグループの子会社であるガーバーは、フェイスブックで「あなた達の要請に私達は応えた。ガーバーグッドスタートミルクは全てノンGMOである」と宣言している。
固形物を導入する前の乳児期の親の心配は安全で栄養があって健康的なミルクを与えているか?であるが、ノンGMOミルクについてはガーバー自身が安全性や栄養の問題ではないと認めている。「遺伝子組換え成分を使わないミルクに、追加の栄養上のメリットはない」とFacebookに書いている。広報の話からは企業が消費者の圧力に屈して、子どもの健康には何の影響もないけれどある種の成分の原料を変更したことが伺える。
私はGMO食品については恐怖ではなく事実に基づくことを推進している。ガーバーの新しいミルクは本当の意味ではノンGMOではない。グッドスタートミルクのビタミン類が組換え微生物由来ではないかと尋ねたとところネスレ代理人が言った。「我々はノンGMOラベルが欧州規制やバーモント州規制に一致していることを確認している」。バーモント州の規制では総重量で0.9%以下の遺伝子組換え原料が含まれる加工食品はGMO表示しなくていい。そしてガーバーはビタミン類が遺伝子組換え微生物を使っているかどうか確認も否定もしない。Non-GMOプロジェクトはビタミンAやB12などをGMOリスクがあるとしている。ビタミンは二つの方法で遺伝子組換え由来である。一つは組換え微生物による発酵で作られる場合と、もう一つはGM原料を使って工業的に合成される方法である。
オーガニック認証の場合ビタミンやミネラルがGM由来でも100%オーガニックと表示しなければ認められている場合が多い。
ガーバーによるとノンGMOラベルは「成分として遺伝子組換え種子から育てた作物を使っていないという事実を指す」そうだ。御存知のように、遺伝子組換えなのは作物だけではない。
GM微生物は普通に使われていて発酵で作られる酵素等はほぼGMなんだが意外と消費者は知らない。定義や事実を確認しないで反対って言うから詭弁で誤魔化される。)

Radiation from Fukushima nuclear disaster not found in B.C. salmon
Feb. 23, 2016
http://www.theglobeandmail.com/news/british-columbia/radiation-from-fukushima-nuclear-disaster-not-found-in-bc-salmon/article28846578/
日本の福島原子力事故から5年、放射性汚染物質は太平洋からカナダの西海岸の間を循環し続けているが、危険な量ではない。魚のセシウム134を追跡しているB.C.の科学者は海水中からセシウムは検出しているが最近の156のサーモン検体からは検出しなかった。昨年B.C.沿岸のスチールヘッド、チヌークサーモン(マスノスケ)、ベニザケ およびカラフトマスをカナダ先住民が集めた。ビクトリア大学の地球海洋科学部のJay Cullenは月曜日に最新の結果を発表して、最も高感度の検査法でも、痕跡程度の福島由来放射能すらどのサケからも検出できなかった、という。7匹の魚からセシウム137が検出されたが、セシウム134は検出されていないためこれが福島由来か核兵器実験由来かはわからない。現在環境中に存在するセシウム137はほとんどが前世紀の核実験由来である。
この研究グループInFORM,( 統合福島海洋放射性核種モニタリングネットワークIntegrated Fukushima Ocean Radionuclide Monitoring Network)はモニタリングを継続し今年は貝類も加える。

  • ホメオパスが係争中の連邦の政策変更について戦いの準備

Homeopaths prepare to launch fight against pending federal policy change
Tuesday, Feb. 23, 2016
http://www.theglobeandmail.com/life/health-and-fitness/health/homeopaths-prepare-to-lauch-fight-against-pending-federal-policy-change/article28856314/
カナダのホメオパシーコミュニティーが、一部の12才以下の子ども向けの製品の根拠のない効果の宣伝を禁止するだろう政策の変更について戦いを開始。
新しい政策では、ヘルスカナダは科学的根拠がない限り子ども向けのホメオパシー咳、風邪、インフルエンザ製品を認めなくなるだろう。この変更により現在ほぼ市場を独占している子ども向けの咳や風邪用ホメオパシー製品は販売できなくなるだろう。2008年以降OTC風邪・咳薬のメーカーは用量の問題に関連した重大な傷害や死亡の報告により子ども用に製品を販売することが禁止されている。
根拠に基づいた医学の提唱者はこの変更は長く延び延びになっていたものなのにまだ十分ではないという。ホメオパシーコミュニティーは7月に発効するこの変更に反対活動を行っている。
ホメオパシー製品の有効性には信頼できる科学的根拠はないが、ヘルスカナダは12才以下の子ども用の咳や風邪のホメオパシー製品100以上の販売を認めている
(医薬品は販売できないのに詐欺製品は売りたい放題なので儲かったお金で政治的影響力を発揮できるというディストピア。まあ日本も似たようなもの)