食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

expert reaction to bisphenol-A and obesity
May 17, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-bisphenol-a-and-obesity/
Cambridge大学代謝研究部長、臨床生化学医学教授Sir Stephen O’Rahilly教授
この極めて小規模研究の知見は非常に予備的なもので公衆衛生政策に影響を与えるべきではない。妊娠中のBPA暴露が子どもを肥満にしやすくするという仮説はより厳密に相当な大規模研究で調べられるべきである。
Edinburgh大学男性生殖健康研究チームグループリーダーRichard Sharpe教授
これは関連をみた研究で因果関係を証明したものではない。母親のBPA暴露とその子どもへの影響については似たような研究が多数あるがその結果はこれとは一致しない。
BPA暴露の95%以上は食事由来であり、一部の研究では(全部ではない)ファストフードを食べるとBPA暴露が増えることが示されている。しかしファストフードを食べ過ぎることは肥満の原因であり、母親の肥満は子どもの肥満リスクを増やす。この大きな交絡要因をコントロールするのは非常に困難で、多くの研究では母親のBMIを調整しているが特定の食事要因を調整することは滅多に行われない。
そしてこの影響のメカニズムは?BPAの暴露量は極めて微量でそのような暴露量では発育中の胎児への想定される影響メカニズムは同定されていない。BPAには弱いエストロゲン作用があるが、それは妊娠中に胎児の全身を循環しているエストロゲンの100万分の1以下の強さしかない。つまりBPAは大海の一滴である。
従って常識で考えよう。何が肥満の原因だろうか?食べ過ぎである。食べ過ぎとBPAとどちらが犯人の可能性が高い?誰かに聞いてみよう

問題のEHPの論文
都心出生コホートビスフェノールAと脂肪症
Bisphenol A and Adiposity in an Inner-City Birth Cohort
Lori A. Hoepner et al.,
http://ehp.niehs.nih.gov/ehp205/
そのプレスリリース
母親の妊娠中のBPA暴露は赤ちゃんを肥満の道にすすめる
Mom's exposure to BPA during pregnancy can put her baby on course to obesity
17-May-2016
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-05/cums-met051216.php
(もともと煽り成分の多いEHPではあるが、明らかにプレスリリースはもとの論文より誇大で、内容でも「BPAが肥満増加の重要要因」なので缶詰を食べず容器はガラスや陶器などにしようと言っている。この研究で男の子では差がなかった、子どもの暴露とも関係なかったと言っているのに。)

  • 米国科学アカデミーのGM作物30年の報告書への専門家の反応

expert reaction to US National Academies of Science report on 30 years of GM crops
May 17, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-us-national-academies-of-science-report-on-30-years-of-gm-crops/
政府の主任科学アドバイザーSir Mark Walport教授
これは世界の食糧問題解決に寄与する可能性のあるGM技術の役割についての米国科学アカデミーの思慮深い貢献である。私はGMは多くの農業技術の一つであるという認識を歓迎する。GMについて検討する際には「どの生物」の「どの遺伝子」が「何のため」にと問うべきである。この報告ではこの技術についての一般との対話が重要な役割を果たすことを正しく認識している。
EFSAのGMOパネルの前議長Joe Perry博士
単刀直入に言うと、この非常に膨大なNASの報告書は、北米のGM栽培を知っている人にとっては驚くべきではない結論を導き出した。
まずGM Bt作物は環境と生産者の両方に優しく、収量を増やし農薬を減らす。二つ目に、除草剤耐性作物についてはそれほどバラ色ではなく、理由は収量が増えず耐性雑草の問題がある。しかしこの報告ではそのような問題の解決法のヒントも提示されている。
欧州へのメッセージは明確である。EFSAがいくつかの作物のリスク評価を行って安全だと判断した。ECは認可すべきである。これらの作物の認可を遅らせる科学的理由は最早ない。遅れているのは政治的理由による。
South Wales大学バイオテクノロジー教授Denis Murphy教授
欧州と違って米国は新しい遺伝子編集技術に対して進んで困難なことに取り組んでいて、立派に速やかに判定している。それに比べて欧州は決断できずに麻痺している。このことは米国のスタンスがインドや中国、いくつかのアフリカ諸国を含む他の大手GM生産者の課題を設定する可能性が高いことを意味する。欧州は既に新しい交配技術で後れをとっているがさらに後塵を拝する危険性がある。
(大丈夫、日本なんてもっと遅れているから!ルイセンコの時代のソ連のように、農学部のみなさんは世界に通用しない機能性とかやってるから。え?日本なんて最初から比較相手じゃないって?)
Sainsbury研究所植物科学者Jonathan Jones教授
この包括的でバランスのとれた透明性の高い米国NASの報告書はGM作物に関心のある誰にとっても必読である。過去の経験をレビューし将来のシナリオを評価し急速に進化する技術の適切な規制についての課題に提案を行っている。
私は要約の文言に心から同意する:急速に進歩する遺伝子技術が遺伝子組換えとこれまでの植物交配の間の区別を曖昧にし、もはやプロセスに基づく規制システムは維持するのが困難である。