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IARCモノグラフはコーヒー、マテ、非常に熱い飲料を飲むこと、を評価する

プレスリリース
IARC Monographs evaluate drinking coffee, maté, and very hot beverages
15 June 2016
http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2016/pdfs/pr244_E.pdf
本日The Lancet Oncologyに最終評価の要約が発表された。詳細はIARCモノグラフ116巻として発表される
ワーキンググループは
コーヒーを飲むことについては、発がん性について結論できない
非常に熱い(注:65℃以上)飲料を飲むことについては おそらくヒト食道に発がん性がある
非常に熱いわけではないマテを飲むことについては決定的根拠はない
と結論した。
このことは非常に熱い飲料を飲むことはおそらく食道がんの原因であるが、その理由は飲み物そのものではなく温度であるようだ、とIARCのChristopher Wild長官は言う。
非常に熱い飲料を飲むことはグループ2Aに分類された。
コーヒーとマテ(非常に熱くはない)はグループ3。

  • Q & A

http://www.iarc.fr/en/media-centre/iarcnews/pdf/Monographs-Q&A_Vol116.pdf
コーヒーについては1991年に疫学の「限定的根拠」にもとづきグループ2Bに分類されていた。当時より多くの、強い根拠に基づき決定した。
グループ3に分類したことはこの物質の安全性が証明されたということを意味しない。がんの原因としての結論ができないということを意味する
マテについては1991年に「熱いマテ」をグループ2Aに分類し、温度を特定しないマテについてはグループ3にしていた。新しい評価では非常に熱くはないマテはグループ3に分類し、「非常に熱いマテ」の評価は非常に熱い飲料の中に含まれる。

  • モノグラフについての神話を暴く:6つのよくある誤解を解く

DEBUNKING THE MYTHS OF THE MONOGRAPHS: Six Common Misconceptions Dispelled
http://www.iarc.fr/en/media-centre/iarcnews/2016/DebunkMyth.php
・IARCの分類はコーヒーは安全だということか?
ノー
・非常に熱い飲料を飲むことは同じグループ2AのDDT暴露と同じくらい危険なのか?
ノー
・どのくらいの回数や期間非常に熱い飲料を飲むとがんになるのか?
わからない
・非常に熱い飲料を飲むことに関連する食道がんはどのくらい?
多くの国では食道がんの主な原因は喫煙と飲酒で、現在の研究からは非常に熱い飲料の症例の割合はわからない
・非常に熱い飲料を飲むのはどのくらい危険?
わからない
・コーヒーの分類が格下げされた。IARCが最初は間違っていたことを意味する?
ノー

  • The Lancet Oncology,

Published online 15 June 2016
http://dx.doi.org/10.1016/S1470-2045(16)30239-X

  • 関連

Scienceニュース
熱い飲料のがんリスクについての委員会の助言は飲み込みにくい
Panel’s advice on cancer risk from hot drinks is hard to swallow
By Kai KupferschmidtJun. 15, 2016
http://www.sciencemag.org/news/2016/06/panel-s-advice-cancer-risk-hot-drinks-hard-swallow
最初に良い知らせがある:IARCが1991年にコーヒーを発がん性の可能性があるとしていたが今や発がん性について分類できない、になった。
でも悪い知らせもある:IARCは非常に熱い飲料はおそらく食道がんの原因だと結論した。しかしリスクがどのくらい大きいのかは明確ではない。
混乱した?大抵の人があなたと一緒である。これはIARCが今日発表したもので、この手ある物質ががんの原因かどうかについてのイエスかノーでの一律的判断の限界を示す。そのような発表は「科学的に興味深いかもしれないが政策や個人の意志決定にとって何の情報にもならない」と英国ケンブリッジ大学統計学者David Spiegelhalterは言う。

  • 「非常に熱い」飲料はたぶんがんの原因、コーヒーは挽回

SMC
Very hot’ drinks probably cause cancer, coffee redeemed – Expert reaction
June 16th, 2016.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2016/06/16/very-hot-drinks-probably-cause-cancer-coffee-redeemed-expert-reaction/
IARCがコーヒーをヒト発がん性について結論できない、65℃以上の非常に熱い飲料をおそらく発がん性と分類した。
SMCは専門家の意見を集めた
NZから
オークランド大学生物統計学教授Thomas Lumley
オークランド大学オークランドがん学会研究センターLynette Ferguson教授
Massey大学公衆衛生研究センター准教授Andrea ’t Mannetje
豪州から
オーストラリアがん評議会会長Sanchia Aranda博士
Curtin大学公衆衛生学部研究員Christina Pollard博士
南オーストラリア大学Sansom研究所所長Ian Olver AM教授
米国Genetic Expert News Serviceより
Georgetown大学病院薬理学生理学部准教授Thomas G. Sherman博士
UK SMCから
オックスフォード大学NIHRポスドク研究員Jennifer Rogers博士
Imperial College London生化学薬理学教授Alan Boobis教授
QMUL病理学名誉教授Sir Colin Berry教授
Southampton大学外科准教授Tim Underwood教授
ケンブリッジ大学リスクの公衆理解Winton教授Sir David Spiegelhalter教授
ケンブリッジ大学がん疫学教授Paul Pharoah教授
Open大学応用統計学名誉教授Kevin McConway教授
(内容は省略。いつものようにIARCの評価はリスクの大きさについては何も語らない、といったところ。そんなに難しい話ではなく異論もほとんどない。火傷するほど熱いものには注意、という程度のこと)