食品安全情報blog過去記事

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鍼が「認知症を防ぐ」という主張は的はずれ

Behind the headlines
Claims acupuncture 'staves off dementia' are missing the point
Friday August 5 2016
http://www.nhs.uk/news/2016/08August/Pages/Acupuncture-staves-of-dementia-claims-are-missing-the-point.aspx
Daily Mailが「鍼は高齢者の記憶維持に役立つかもしれない、研究が示唆する」と報道した。しかしこの研究は新しいものではなく、質の低いこれまでの試験のレビューである。これは5つの中国での軽度認知機能障害(MCI)に鍼が効くかどうかを調べた研究結果をまとめたものである。
MCIは思考や記憶に問題があるが日常生活にあまり影響のない症状を指す。問題になるのはMCIの人は10人中1人が認知症になることである。このレビューでは「鍼が有効に見える」と言っているが額面通りに受け取る前に考慮すべきたくさんの重要な欠点がある。
中国の研究は鍼をニモジピンという薬物と比較しているがこの薬は英国では認可されていない(実際のところ認められている治療法は現在存在しない)。従ってそのような知見の意味を見出すのは難しい。全体として研究の質は低くバイアスのリスクが高く対象は西洋人ではないごく少数の人で認知症をみたわけでもなく安全性に関する適切な情報もない。
結論としてこのレビューは鍼のMCIへの安全性や認知症予防の根拠にはならない。