食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 小麦、コメ、その他植物への気候変動の影響に関する研究への専門家の反応

expert reaction to research on the impact of climate change on wheat, rice and other grasses
September 28, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-research-on-the-impact-of-climate-change-on-wheat-rice-and-other-grasses/
Biology Lettersに発表された論文で、気候変動は適応の速度を上回るだろうと予想している
Leeds大学気候影響教授Andrew Challinor教授
この結果は困ったことだ。他の研究でも既に気候変動は我々の食品生産適応速度を超えることが示され始めている。一部の分野では緊急の対応が必要である。

  • 乳腺細胞をアルミニウムで処理したマウスでの発がん性研究への専門家の反応

expert reaction to study of tumorigenesis in mouse mammary cells treated with aluminium
September 27, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-of-tumorigenesis-in-mouse-mammary-cells-treated-with-aluminium/
Molecular Cancer Biologyに発表された論文がアルミニウム塩化合物がin vitroで培養されているマウスの乳腺細胞を腫瘍細胞のように変えると報告した
Cambridge大学がん疫学教授Paul Pharoah教授
この研究は、制汗剤によく使われている塩化アルミニウムがマウスの乳腺上皮細胞を培養したときにがん細胞に変えることを示した。しかしながら生きたマウスに塩化アルミニウムを注射すると重症免疫不全のある系統でしかがんにならない。より正常なマウスには塩化アルミニウム注射はがんをつくらない。これらの結果は塩化アルミニウムを普通に使う場合の乳がん誘発性についての情報をほとんど与えない。この研究から何かを言うにはたくさんの注意が必要である。
Breast Cancer NowのBaroness Delyth Morgan会長
この研究は実験室で育てたマウスの細胞とマウスでのもので、これまでのヒトの乳がんに関する研究の文脈で判断しなければならない。制汗剤やデオドラントの使用と女性の乳がんについて調べた研究では一貫して関連があるという良い根拠はない。現在の根拠からは女性がこれらの使用について心配する必要はない。しかしながら飲酒を減らすことや健康体重を維持する、運動するなどの乳がんリスクを減らす方法はある。

  • スタチンと他のコレステロールを下げる方法の心疾患リスクを調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at heart disease risk reduction of statins and other cholesterol-lowering methods
September 27, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-heart-disease-risk-reduction-of-statins-and-other-cholesterol-lowering-methods/
JAMAに発表された研究で、スタチンとスタチン以外のLDLコレステロールを下げる方法の心血管系リスクへの影響を調べ、どちらもLDLコレステロールを下げて心血管系疾患相対リスクを下げることにつながった。
Sheffield大学心臓相談医/心血管医学准教授Tim Chico博士
このレビューは新しい試験をしたわけではなく、これまでの研究を比較したものである。食事制限や手術やスタチンや他の薬物による各種LDLコレステロール低下方法についての研究を含む。全体として良くできた解析で根拠の大多数や医学界の見解と一致している。
この研究の重要なメッセージは、心疾患リスクがLDLコレステロールを下げると下がり、下げ幅が大きいほど脳卒中や心臓発作リスクが下がるということである。食事療法でもスタチンでもコレステロールの下がった量が同じなら同じ程度の心疾患削減作用があるが、スタチンの方が食事療法より大きくコレステロールを下げるので全体としてのメリットは大きい。
しばしば心疾患リスクを減らすために食事療法にすべきかスタチンにすべきかという議論がおこるが、それは間違った選択であり実害がある。最良の方法は健康的なライフスタイルと薬物を組み合わせてリスクを下げることである。しかし治療法の選択権は患者にある;医師の役割はバイアスのない正確な情報を提供することである。
Bristol大学臨床疫学教授George Davey Smith教授
このRCTの決定的概要はLDLコレステロールを下げることが重大な心血管系イベントリスクを減らすことを示す。重要なことはそれがコレステロールの低下によるものであり、時に主張されるスタチンの特有の効果のような追加効果によるものではないということである。スタチン以外にもコレステロールを下げる他の方法でもコレステロールの低下が同程度なら同じ心疾患リスクの削減ができる。食事療法はコレステロールがあまり下がらないので効果が小さい。このことは集団レベルでの食生活の改善と、ハイリスクの人には薬物治療という二方面での対策を支持する。
英国心臓財団医務主任Peter Weissberg教授
心疾患の主要リスク要因はコレステロールの高さで、コレステロール濃度を下げることは将来の心臓発作や脳卒中リスクを下げる効果的な方法である。
この解析はこれまでの知見を支持し、「悪玉コレステロール」を下げることが重要でその方法はなんでもいい。スタチンは安全で効果的な方法であるがコレステロール低下以外の作用によるものではない。この解析の対象の多くはスタチンを使用していて、スタチン以外の方法のうち胃の切除などは普通の患者の選択肢にはならない。スタチンを使用している患者はそれが将来の心臓発作や脳卒中リスクを下げるのに役立っていると安心していい。