食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 大気汚染、交通の騒音と血圧を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at air pollution, traffic noise and blood pressure
October 25, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-air-pollution-traffic-noise-and-blood-pressure/
European Heart Journalに発表された研究で自己申告による高血圧と大気汚染と騒音が関連した。
Lancaster大学大気化学教授Nick Hewitt教授
この研究は欧州の大気の質基準が十分ではないあるいは守られていない根拠をさらに提供する。現在の欧州PM2.5基準はWHOのガイドライン値の2.5倍高い。
英国心臓財団医務副主任Jeremy Pearson
高血圧はサイレントキラーである。この大規模研究は高濃度の自動車由来大気汚染に暴露されたヒトは高血圧になる可能性が少し高いことを示す。しかし血圧は自己申告でありそのことで結論の強さには疑問が生じる。従ってこの研究はさらなる評価への指摘とみなすべきであろう。
英国アイルランド高血圧学会副会長Warwick大学心血管系医学と疫学Cephalon教授Francesco Cappuccio教授
この統合解析は大気汚染と自己申告による高血圧の関連を示唆するが測定された高血圧との関連の根拠はない。この知見は、研究の結論でもプレスリリースでも明言されていないが大きな注意が必要である。一般人の高血圧の自覚は実測値との関連が弱いことがよく知られている。そして自覚症状がないことが自己申告を信頼できないものにし、バイアスをもたらす。将来のこの手の研究は、客観的で信頼できる直接的な血圧のみを使うべきである。

  • オメガ3とオメガ6脂肪酸と肥満についてのエディトリアルへの専門家の反応

expert reaction to editorial on omega 6 and omega 3 fatty acids and obesity
October 24, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-editorial-on-omega-6-and-omega-3-fatty-acids-and-obesity/
雑誌Open Heartに発表されたエディトリアルで肥満の予防と管理のためにオメガ3とオメガ6脂肪酸のバランスをとることが重要だと主張している。
Cambridge大学MRC疫学ユニットプログラムリーダーNita Forouhi博士
歴史と生物学を組み合わせたレビューをしようという著者の試みは評価できるが選んだ研究は系統的ではなく選択的で誤解を招く可能性がある。血中を循環している脂肪酸の情報の重要性を指摘し、つまり食事からの摂取と代謝の両方を考慮すべきという店では著者に合意する。しかし彼らはそういう研究について議論していない。
我々の世界最大の2型糖尿病情報源である8ヶ国研究では、血中リノール酸(最もよくあるオメガ6脂肪酸)濃度が高いことは将来の糖尿病リスクの低さと関連する。我々の研究ではアラキドン酸(オメガ6脂肪酸)は糖尿病リスクとは関連がなかったが、全ての入手可能な研究をまとめた他の研究ではアラキドン酸濃度の高いことは将来の心疾患リスクの低さと関連した。確かにさらなる研究は必要であるが、オメガ3でもオメガ6でも、多価不飽和脂肪酸のメリットの可能性については現行の助言に反対するしっかりした根拠はない。
Glasgow大学代謝医学教授Naveed Sattar教授
残念ながら肥満の流行を簡単に治める方法はなく、このエディトリアルでは多価不飽和脂肪酸の一種の食べ過ぎが原因だと批判しているが、科学的根拠は極めて薄弱である。
しっかりした根拠があるのはカロリーはカロリーであり肥満は食べ過ぎが根本にあることである。我々は肥満の流行の魔法の解決法を探すのを止めるべきだ。
食品研究所栄養研究名誉フェローIan Johnson博士
Simopoulos と DiNicolantonioは公衆衛生団体に科学に基づいた栄養政策を求めているが、オメガ6多価不飽和脂肪酸の有害影響という主に動物実験や理論的主張からなる根拠のない仮説を確立した事実であるかのように主張している。彼らの主張の核心となっているWangらの研究は、ヒトでの体重増加と赤血球の多価不飽和脂肪酸の濃度に比較的弱い関連しか示していない。著者自身が「示唆的」としか説明していない。そしてオメガ6多価不飽和脂肪酸のメリットを示唆する研究は無視されている。
肥満の問題の複雑さを考えると多価不飽和脂肪酸だけに集中して肥満の問題が解決されることは極めてありそうにない。
Reading大学栄養健康准教授Gunter Kuhnle博士
エディトリアルはこの分野の専門家の意見であり、しばしばバイアスがあり、バランスのとれた根拠の概要というより強固な主張である。
長く信じられてきたことに疑問を提示するのは通常の科学の営みの一部である。しかしそれはデータと根拠と解析によって行われるべきで、単なる意見ではならない。
著者らは政府に科学に基づいた食事助言を要求しているが、実際にそうなっている。
King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授
この記事では肥満の流行がリノール酸(オメガ6)植物油の使用が増えたせいだとしている。オメガ6とオメガ3のバランスの悪さが原因だと主張する。驚くべきことにこの記事では過去20年間に最も生産量が増えたパーム油を無視している。
しかし食事中脂肪のたった約20%しか植物油由来ではなく、西洋の食生活の脂肪の多くは動物由来、特に肉と乳製品、である。もし植物油がそんなに重要なら、菜食主義者のほうが太ることになるが実際にはそうではない。
この記事ではオメガ6:オメガ3比の増加が肥満の増加と同時であると間違って示唆している。比が増えたのは1970-80年代でその後一定または低下している。一方肥満は急増している。
(以下略)