食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他

  • Trumpの選んだ米国保健長官は科学への出資を減らすことを推進していた

Natureニュース
Trump's pick for US health secretary has pushed to cut science spending
Sara Reardon 29 November 2016
http://www.nature.com/news/trump-s-pick-for-us-health-secretary-has-pushed-to-cut-science-spending-1.21066
ジョージア共和党議員Tom Priceは科学と研究分野には実績がほとんどない
オバマケアの強硬な反対者である整形外科医のTom PriceがHHS長官になる。がんムーンショットにも反対していた。公衆衛生のための出資や胚性幹細胞研究に反対しタバコの規制にも反対していた。
(これってアメリカだけの問題に止まらないかも。アメリカは国連の多くの機関にお金を出しているのでやーめたって言われたら活動が停滞する。)

  • アカデミアは政治的確証バイアスに抵抗しなければならない

Natureニュース
Academia must resist political confirmation bias
29 November 2016
http://www.nature.com/news/academia-must-resist-political-confirmation-bias-1.21057
全ての形態の差別と戦うことは必須だが、議論から保守的意見を排除するのは役に立たない
調査によるとNatureの読者の多くは自分を政治的にはリベラル左派だと思っている。
Mark Lillaによる「アイデンティティリベラリズムの終焉」という記事では、都市部とアカデミックのエリート達がアイデンティティポリティクスに過剰に集中し、多くの白人、宗教、地方の人たちを部外者扱いし無視してきたとする。この記事には多くの議論がおこった。Natureは女性やマイノリティの権利についてはこれからも配慮するが確証バイアスはいたるところにあり注意を払う必要がある。

  • Q&A:全ての動物実験は公共登録簿に掲載されるべきか?

Science
Q&A: Should all animal experiments be listed in a public registry?
By David GrimmNov. 29, 2016
http://www.sciencemag.org/news/2016/11/qa-should-all-animal-experiments-be-listed-public-registry
大学の研究室で行われる動物実験の約半分は論文として発表されることがなく、再現できないことで悪名高い。これは動物実験で効果があった医薬品がヒトでは効果がないことの理由のひとつで、抗がん剤は製薬企業が何十億ドルも費やしているにもかかわらずマウスで効果があったもののうち11%しかヒトで認められていない。一方大学は決して発表しない実験にお金とその他のリソースを無駄にしている。ヒト試験についての同様の懸念から臨床試験登録が始まり、動物実験登録のアイディアが提示されている。
以下その動物実験登録についてのQ&A

  • 発がん性ではないが、除草剤グリホサートは根深い社会の病理の症状である

While Unlikely To Be Carcinogenic, The Herbicide Glyphosate Is A Symptom Of A Deep Social Pathology
Nov 21, 2016  Geoffrey Kabat ,
http://www.forbes.com/sites/geoffreykabat/2016/11/21/while-unlikely-to-be-carcinogenic-the-herbicide-glyphosate-is-a-symptom-of-a-deep-social-pathology/#3ac2b67e5c46
大西洋の両側では食品や水やより広い環境由来の健康リスクについて科学が何を言っているかについて意見が対立している。この戦いにはしばしば科学的根拠を評価する能力のない、あるいは最初からバイアスのある活動家やNGOや政治家や科学者が参加する。現時点でこの戦いの主なテーマはグリホサートで、EUでは再登録反対の投票が行われたが許可は延長されている。米国でも規制上の争いに巻き込まれている。
(IARCのグリホサート評価の説明と批判といろいろ略)
こうした事例全てがグリホサートの安全性/発がん性に関する疑問が如何に政治的になったかを示す。環境上の脅威に関する繰り返される争いで損なわれるものは膨大である。一つは安全で有効で安価なものが禁止されたり制限されると作物の収量は低下し代わりの製品はより危険かもしれない。二つ目はこのような議論は一般の人たちに不必要な混乱と警告を招き本当に大事な問題から注意を逸らす。そして三番目に、そうしたことで、既に相当積み上がっている科学への不信をますます増やす。

21st century snake oil: Rough week for homeopathy
Posted on November 27, 2016 by Doug Powell
http://barfblog.com/2016/11/21st-century-snake-oil-rough-week-for-homeopathy/
米国で販売されているOTCホメオパシーレメディには今や効果があるという科学的根拠がないと警告しなければならなくなった。そうしないとFTCに取り締まりをうける可能性がある。アルバータ大学のTimothy Caulfieldはカナダも米国に続くべきだと強く求める。ホメオパシーは何度も完全に否定されてきた補完代替療法の一種で数十万ドル産業になっている。ヘルスカナダの比較的緩い規制のおかげで多くの薬局がホメオパシー製品に薬効を宣伝して販売している。私の同僚のUbaka Ogboguの最近の研究では相当数の薬剤師がホメオパシーを薦めた。さらに地方政府がこの非科学的CAMを薦めている。例えばオンタリオでは地方の条例で作られたホメオパスカレッジがある。そしてナチュロパスが地方政府の支援を受けてホメオパシーを提供している。カナダのナチュロパスのウェブサイトをざっと見てみると無数の誤解を招くホメオパシーの有効性の宣伝が行われている。さらにひどいのは多くのウェブサイトでホメオパシーを予防接種の代わりになると主張していることである。
こんな流行は止めなければならない。カナダの人々に正確な情報が提供されるよう確保するための対策をとろう。すぐに使える規制上のツールはたくさんある。
(Doug Powellは食品安全の専門家。いつも食中毒のことばかり書いているのだが)

  • 人々に朝食にアイスクリームを食べるように言うのは止めて

Please stop telling people to eat ice cream for breakfast
Rafi Letzter
http://uk.businessinsider.com/dont-eat-ice-cream-breakfast-2016-11
アイスクリームが脳に良いというニュースの見出しは楽しいので、私のFacebookのフィードを埋め尽くしてしまった(スクリーンショット有り)
でも誰にとっても重要なのは事実を伝えることである。この説には事実がない。
レポーターは最良でも無責任にたったひとつの疑わしい研究を繰り返し伝えている。最悪の場合インチキニュースを無批判に拡散している。
これがどういう話なのか説明しよう。
11月17日に日本のウェブサイトExcite.co.jpが朝食にアイスクリームを食べると賢くなると主張する記事を発表した。この短い記事はKyorin大学のYoshihiko Koga教授の研究だと引用しているが研究へのリンクはない。ExciteによるとKogaはアイスクリームを食べた人の方が普通の朝食を食べた人よりレスポンスが早く脳波の活動が高いことを発見したという。これはアイスクリームが脳を活性化したように見える。Exciteはこの研究は匿名のお菓子会社の協力で行ったと書いている。
この良いニュースはThe Telegraphによって英語メディアに伝えられたようだ。Telegraphもオリジナルの研究をリンクしなかったが、朝ご飯にアイスクリームを食べるよう薦めるのは栄養についてわかっていることとは矛盾すると説明した。つまり冷たくて砂糖が入っているものは目を覚ます効果があるだろう、しかしいつも食べることは健康に悪いだろう、という内容だった。Telegraphの記事はオリジナルの情報源をリンクせず、お菓子企業との関連に言及していないが重要な批判は指摘している。
しかしこの記事がインターネットに載ると、他のウェブサイトやレポーターが詳細内容無しに、また自分たちが書いている記事のもと論文を本当に読んだのかどうかあやしいままこの主張を繰り返した。
Newsweekや複数の地方CBS局, The Washington Times, The University Herald がTelegraph やExciteだけを情報源にアイスクリームの主張を繰り返した。Refinery29と The Daily Mail は砂糖の影響を注意したもののオリジナルの研究を読んでいないことは明らかだった。
(記録のために、私Rafi Letzterも読んでいない。二日間探したものの英語ではどこにも発表されていないようだった。Telegraph もExciteも雑誌名を書いていない。私は大学を通してKogaに連絡中で、もし反応があったらこの記事を更新する)
これの何が問題か疑問だという人もいるだろう。面白い話で、アイスクリームが健康的だなどと本当に信じる人はいないだろう。
でも私はこれには二つの問題があると考える
まず最初に、人々はニセのニュースを信じるし、砂糖は実際に悪影響がある。
二つ目は、科学ジャーナリズムについて間違った考えに基づいているからである。科学ライティングのあらゆる分野で事実より普通ではない変わったことのほうが優先される。
毎週のように、謎の信号は宇宙人、偏執的なジュースダイエットで健康になる、新しいラットの研究は全てのがんが治る希望、などのニュースが流れる。しばしばそれは情報源を読んでもいないあるいは理解していない人によって書かれている。その分野の他の状況を踏まえて文脈に沿って書かれることは滅多にない。
サイエンスレポーター、編集者、読者は明確にするべきである。これは単なる愚かな逸脱ではない。これはインチキニュースの一種であり、ジャーナリズムの機能を低下させ人々が科学的事実と砂糖業界の流すナンセンスを識別することを困難にする。こんなことは止めるべきだ。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20161125#p14
の件
この人2013年にもこんなことやってるんだが
「朝アイスで良い目覚め」 森永乳業が研究結果
http://www.sankei.com/economy/news/130513/ecn1305130023-n1.html
日本語でも文献検索はヒットしないので発表していない可能性が。「研究者」ではなく、臨床の片手間に研究っぽいことをやっている人のようだし。英語圏にはガチのサイエンスライターもいるので、いいかげんなことやってると徹底的にダメだしされるよ。これで企業名も出されたら非常に効果的なネガティブ広告になる、なにしろ今は砂糖への批判が強く、名前を隠して砂糖のインチキプロモーションをやったと思われたら「悪徳砂糖企業」の代表例として記憶されるだろう。)

Iraq and Afghanistan veterans target poachers in South Africa
By Alex Hollings| 11.29.2016|
https://sofrep.com/68804/iraq-afghanistan-veterans-target-poachers-south-africa/
サイの角は伝統的漢方薬として約1800年使われてきたが、1980年代から90年代に需要を減らす努力が行われた。アジア諸国での取引禁止と中国薬からの犀角(さいかく)の削除で需要が大きく減った。しかしそれでも価値あるものとして地下市場で取引されていて1990年から2007年の間に南アフリカの保護区から約15頭のサイが密猟された。当時の犀角の値段は1kgあたり$250-$500だった。
しかし2008年に突然密猟が増加する。2008年だけで南アフリカの保護区の83頭のサイが殺され翌年は122頭、2012年までに毎年700頭が殺されている。
この突然の犀角の需要増はベトナムで2000年代半ばにひろまった噂によると専門家は信じている。地元の政治家が犀角を用いた処方でがんが治ったという説がひろまり、一部の医師までもがプラセボの犀角を処方したり違法薬局で買うことを薦めたりした。このニセ医学の流行は以前の伝統中国薬とは関係なく、一般人の信念から生じた。結果としてサイの角の値段は跳ね上がり1kgあたり10万ドルにもなっている。
保護活動家達はサイを守るためにいろいろな方法をとっており退役軍人も多くの役割を果たしている。

  • カルフェンタニルが初めて薬物過剰使用による死亡と関連、B.C.警察が言う

Carfentanil linked for 1st time to drug overdose death, B.C. police say
Nov 29, 2016
http://www.who.int/ipcs/saicm/roadmap/en/
11月17日に30代の男性が東バンクーバーの住居で死亡しているのが発見された。
出勤せず電話にも出ないことを不審に思った同僚の連絡で警察が部屋に入ったところ死んでいた。薬物と薬物に使用する道具があったのでヘルスカナダの検査室に送り調べたところカルフェンタニルが確認された。
カルフェンタニルフェンタニルの100倍以上毒性が高く、象のような大型動物のトランキライザーとして使われている