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食品中のピロリジジンアルカロイドについてのFAQ

Frequently Asked Questions on Pyrrolizidine Alkaloids in Foods
11.10.2016
Updated BfR FAQ of 28 September 2016
http://www.bfr.bund.de/en/frequently_asked_questions_on_pyrrolizidine_alkaloids_in_foods-187360.html
高濃度の1,2-不飽和ピロリジジンアルカロイド(PAs)が様々な検査プロジェクトでお茶とハーブティーに検出されている。産地によるが、ある種のハチミツにもPA濃度の高いものが存在することがある。これに加えて、レタスにPAsを含むつる植物(フキ、ノボロギク)が混ざった事例がドイツで1件発生した。
ピロリジジンアルカロイドは健康を害する可能性があり食品と飼料に好ましくないため、BfRは、とりわけ食品企業はPAsの食品汚染を減らす手段をとらなければならないという意見である。BfRはこの問題に関するQ&Aを集めた。
ピロリジジンアルカロイドとは?
ピロリジジンアルカロイド(PAs)は植物の二次代謝物である。ある種の植物は捕食者を回避するためにこれらの物質を作り出すと考えられている。今日まで、660以上の様々な化合物とそのN-オキシドが知られている。全世界で350種以上の植物から検出されている。だが全体では、化学分類学的な意見を考慮すると、6000種以上の植物にPAsが生じると考えられている。PAsを含む植物は主にキク科、ざらざらした葉やルリジサ植物(ムラサキ科)、マメ科植物の仲間に属している。PAを生産する土着植物の例として、一般的なフキ、よく目にするノボロギク、エキウムがある。
化学的な視点からは、PAsはネシン塩基と脂肪族モノ-あるいはジカルボン酸(ネシン酸)から形成されるエステルである。動物実験では、ある種のPAsは肝毒性、発がん性、変異原性がある。これは少なくとも1分枝のC5-カルボン酸でエステル化した1,2-不飽和ネシン構造のPAsに当てはまる。その健康危害の可能性により、食品と飼料には望ましくない。
PA中毒の知られている事例はある?
中毒事例は動物では"walking disease" 、"dunziekte"、 "Winton病"、"Schweinsberger 病" 、 "Zdar 病"という名で知られている。黄苑(ヒゴオミナエシ)で汚染された干し草とサイレージを与えられた屠牛の影響として中でも肝硬変は頻繁に生じている。
高用量のピロリジジンアルカロイドを摂取したヒトでの病気の事例は医学文献にも記述されてきたが、十分に記録された事例は少ない。多くの場合、症状は肝臓に影響を及ぼす。パキスタン、インド、アフガニスタンではキダチルリソウ属とタヌキマメ種のタネで汚染された穀物を食べた後に病気になっている。ジャマイカでは中毒事例はタヌキマメとフキの一部を含む、いわゆるブッシュティーが原因である。
"Ärztliche Mitteilungen bei Vergiftungen"の報告で、BfRはPAsを含む植物素材を食べた成人の深刻な肝臓機能障害事例を認識した。
ピロリジジンアルカロイドはどのような慢性の健康影響を起こしうるか?
肝臓は慢性摂取でもPAの健康影響の主な標的臓器であるが、ほかの臓器も―特に肺は―同様に影響を受けやすい。特定のピロリジジンアルカロイド動物実験で遺伝毒性発がん物質だと証明された(長期研究)。動物実験と細胞モデルでの研究から、とりわけ特定のピロリジジンアルカロイド代謝物質全てが肝臓への毒性と遺伝毒性発がん性影響の原因であることが示された。ヒトとラットの肝細胞での研究からもPAsの代謝による毒性物質の発生は、ラットとヒトの細胞で同じであることが示された。これはPAsを通した発がん現象についてのラットでの実験結果はヒトにもあてはまる兆候とみなされる。毒性学的リスク評価では、この種の結果から、通常ヒトに外挿される。ヒトではPA誘発がんに関する疫学研究はない。特定のPAsの胎児毒性影響(子宮内の子供への毒性影響)は動物実験で知られているが、そのデータは十分ではない。
BfRピロリジジンアルカロイドの毒性検査に関する研究の必要性をどこに見ているか?
660以上の様々なPA化合物とそのN-オキシドが現在知られている。少なくとも知られているPAsの半分は遺伝毒性を持つと想定されている。遺伝毒性発がん性影響に関して今日までに十分確認されているPAsとそのN-オキシドは少ししかないため、個別のPAsの発がん性に関する比較は今のところできない。BfRはここに個々のPAsの相対的毒性を区別できるように追加毒性検査を行う必要を理解した。これに加えて、BfRは、発がん性のあるPAsと非発がん性のPAsとを区別できる血と尿の暴露マーカーを特定する新しいアプローチを追求している。この種の検査は、PA代謝物質を特定し記録するための研究と同様、現在BfRで取り組んでいる作業の主な焦点分野の一つである。
PAsはどのように食品に入ってくるのか?
入手可能な最新レベルの知見によると、PAsがヒトのフードチェーンに入り込む手段は4つある:
1. PAsは作物の耕作地域でPAを作る野草の汚染により食品に入り込む。PAを作るフキ/ノボロギクで汚染されたレタスがドイツで見つかっている。小麦畑でキダチルリソウ属の植物の深刻な広まりを原因とする大量の汚染がアフガニスタン産の小麦に生じることが知られている。お茶やハーブティー各種のPA汚染は、耕作地域でPAを形成する雑草と一緒に収穫される原料汚染のせいだと考えられている。
2. ハチミツや花粉のようなミツバチ生産物は、ミツバチが汚染された花粉を集めることによりシャゼンムラサキ属、キオン属、ルリジサ種のような野生植物を由来とするPAsで汚染されることがある。中央及び南アメリカの特定の国由来の生のハチミツは欧州各国由来の物と比べて量が多い。
3. 家畜に与える汚染飼料を通して、後に牛乳や卵など動物生産食品に移行し、フードチェーンのあらゆる食品へPasが入る。だが、現在、動物由来食品に消費者に健康リスクを引き起こす濃縮が生じるという兆候はない。
4. 食品生産で使用する原料それ自身がPAsを生産する食品から生じている。PAを形成する植物として知られる、スターフラワーとも呼ばれるルリジサは「フランクフルトグリーンソース」の特徴的なハーブ成分の一つとして使用されている。食品サプリメント(DS)はPAsを作り出す植物や植物の各部あるいは抽出物から生産されることもある。例えば、キク科のPA生産植物であるヘンプアグリモニーから作られるカプセルが市販されている。これらのDSのいくつかのPAレベルはかなり高いことがある。オイルベースのDSにはこれまでPAsは見つかっていない。
分析手段でPAsは簡単に検出できる?
非常に多くの食品にあることと構造多様性により、PAsの分析は特別な問題である。BfRは近年優れた検出手段を開発し、室間共同試験で妥当性を確認した。これらの方法は地方の食品と飼料の検査機関や食品と飼料の企業が利用できる。現在、PAsの限られた数しか参照基準として入手できないので、PA含有量全部を概算できるようにさらなる分析方法がBfRで開発された。
ごく少量のPAsだけが見つかる食品、あるいは全く見つからない食品は存在する?
BfRが参加した最新のEU計画では各種食品のPA量について大変多くのデータが集められ、PA量のかなり少ないものや全く検出されないものは:
・ヨーグルト、チーズ(ゴーダ/エメンタール、ブリー/カマンベール)
・幼児用粉ミルク(粉ミルク0-6か月)、フォローアップミルク(粉ミルク6-36か月)
・牛肉、豚肉、家禽肉
・牛レバー、豚レバー、鶏レバー
・卵
子供と成人のPA摂取の最大原因となる食品は?
6か月から5歳までの子供のPA摂取はハーブティー(ルイボスティーを含む)、紅茶、ハチミツが主な原因である。特定の食品サプリメント(DS)を別にすると、成人にも同様のパターンが見られる。成人では全PA摂取に対するハチミツの寄与は低く、緑茶が子供より高くなっている。量が多いのは成人のその他の暴露源であるDSで、食品からの全PA摂取量の最大原因となっている。
PAs含有食品は消費者に健康リスクを引き起こす?
BfRは現在関連食品グループの含有量に関する最新のデータを用いた総摂取量の推定に基づき食品中の1,2-不飽和Pasによる健康リスクの評価を行っている。それによると、食品(ハーブティールイボスティー、紅茶と緑茶、ハチミツ)に含まれるPA量は長期間摂取すると子供と成人に健康リスク(慢性)を起こす恐れがあるが、急性の健康リスクはない。
食品中のPAs制限値あるいは食品中の最小PA量規制はある?
現在食品と飼料に法的制限値はないが、コーデックス委員会は「PA含有植物の存在の管理」と「植物の放出と拡散」に関する服務規程で助言を準備している。
EU内では、遺伝毒性発がん性物質への暴露に関する一般的な助言、合理的に達成可能な限り最小化するべき(ALARA原則)が適用される。特に定期的に摂取した場合には低い摂取量でも健康リスクが増す可能性がある。このためBfRは、全食品からのPAsの総暴露量はできる限り低く保つよう助言している。
BfRの見解ではPA汚染を下げるためにどんな方法が必要?
ハチミツ、ハーブティー、お茶を多く飲む人―特に子供と妊婦と授乳中の母親―に起こりうる健康リスクを最小化するために、汚染された食品の量を減らす様々な手段をとるべきである:
・食品の安全性のための基本的要件は、お茶やハーブティー、レタス、葉物野菜、ハーブを生産するのに用いられる植物の耕作時と収穫時には十分注意するということである。それらは大変目立ち、例えばPAを含むフキ各種は大抵の栽培では簡単に見分けることができるので適切な手段を用いて効果的に管理する必要がある。
・販売に先立ち、食品企業は問題となる食品カテゴリー全て、特にお茶とハーブティーのバッチには十分な検査を、そして高濃度の原因の調査をすべきである。
・例えば、混合製品の生産に用いる生のハチミツを注意して選ぶことで、ハチミツのPA量の削減に寄与できる。
BfRは、PA含有植物の存在管理と植物の放出拡散管理を議題とする服務規程に含まれる、コーデックス委員会による助言の一貫した適用を支援する。
PA汚染を最小化するために消費者ができることは?
消費者に起こりうるリスクは、食品を選ぶ際に、多様な、幅広いものを含めるという一般的な助言を心にとめれば減らすことができる。この方法で、少量で時折発生する、様々な健康を損なう可能性のある物質への一方的な汚染を防ぐことができる。
特に親たちには、子供たちにお茶とハーブティーだけを与えるのではなく、水や水で薄めたフルーツジュースなどほかの飲み物も勧めるように助言する。妊婦と授乳中の母親もお茶とハーブティーとほかの飲み物を交互にするべきである。これは日常必要とする液体を主にハーブティーで満たす人にも当てはまる。
サラダ、葉もの野菜、ハーブを調理する際の基本原則として、知っている食べられる植物に属すると思われない植物の部分は取り除くべきである。一部の人たちに見られる、公園・森林・牧草地で野生に育つハーブやほかの植物を収穫してサラダやグリーンスムージーにする傾向に、BfRは批判的である。ここではルリジサ、フキタンポポ、その他のPA含有植物を避けるために特別な知見が求められている。
花粉やPAを生産する植物をベースにした食品サプリメントを摂取する人はこれらの製品が高濃度のPAsを含む可能性があることに気付くべきである。これは欧州食品安全機関(EFSA)が提出したデータで確認されている。
最新の入手可能な知見によると現在動物由来食品にはPA濃度が消費者に健康リスクをもたらすほど存在しているという兆候はない。

追加情報
・All BfR publications on the subject of PAs
http://www.bfr.bund.de/en/a-z_index/pyrrolizidine_alkaloids-192891.html
BfR Opinion No 030/2016 of 28 September 2016
Pyrrolizidine alkaloids: Levels in foods should continue to be kept as low as possible PDF-File (42.4 KB)
http://www.bfr.bund.de/cm/349/pyrrolizidine-alkaloids-levels-in-foods-should-continue-to-be-kept-as-low-as-possible.pdf
・Press Release 18/2013, of 15 July 2013
Levels of pyrrolizidine alkaloids in herbal teas and teas are too high
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2013/18/levels_of_pyrrolizidine_alkaloids_in_herbal_teas_and_teas_are_too_high-187319.html
BfR Opinion No. 018/2013 of 5 July 2013
Pyrrolizidine alkaloids in herbal teas and teas PDF-File (313.6 KB)
http://www.bfr.bund.de/cm/349/pyrrolizidine-alkaloids-in-herbal-teas-and-teas.pdf