食品安全情報blog過去記事

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消費者製品のナフタレンに関するQ&A

Questions and answers on naphthalene in consumer products
BfR FAQ of 3 November 2016
http://www.bfr.bund.de/en/questions_and_answers_on_naphthalene_in_consumer_products-199250.html
ナフタレンは多環芳香族炭化水素、略してPAHに属している。ナフタレンは主に芳香族の原油画分の精製により得られる―特にかつては同様にコールタールからも作られた。有機物の燃焼生成物として、ナフタレンは事実上環境中の至る所に低濃度で存在する。
消費者製品中のナフタレンについての最新議論の結果、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は以下のテーマにQ & Aをまとめた。
ナフタレンとは?
ナフタレンは多環芳香族炭化水素(PAH)化合物グループに属している、またはより正確に言えば:ナフタレンは二環芳香族炭化水素でありそのため最も小さいPAHである。
ナフタレンは主に芳香族の原油画分精製過程で得られる―特にかつては―コールタールからも同様に得られた。多くのナフタレンはプラスチック産業で使用されている。ナフタレンはわずかに殺虫剤にも加工される。ナフタレンはクレオソート(タール油)の必須成分であり、航空機の燃料にも含まれている。かつては蛾から身を守るために殺虫剤として使用していたが、大部分他の物質に置き換わっている。有機物質の燃焼生成物として、ナフタレンは多かれ少なかれ環境中至る所に存在する。
ナフタレンは黒色塗料に使用されるカーボンブラックの汚染物質や、例えば可塑剤として使用されるエクステンダーオイルの汚染物質として含まれることもある。
ナフタレンのハザードは?
ナフタレンは経口、吸入、皮膚からのルートを通して取り込まれることがある。吸入、経口や皮膚の塗布後(例えばナフタレンを含む薬剤を通して)ヒトで中毒事件が報告されている。これら報告は皮膚接触後の肌の反応とナフタレンガス吸入後の溶血性貧血についてである。水晶体の白濁、角膜潰瘍白内障がナフタレンのダストや蒸気に暴露した作業者で報告されている。これらの観察報告は消費者製品では予期されないような、比較的高濃度のナフタレン暴露後に起こっている。
動物実験では、ナフタレンは特に気道の炎症を引き起こす。動物実験では、ナフタレンの吸入暴露を繰り返すと、低濃度でも、上気道、特に鼻の局所炎症や傷害を引き起こす。慢性炎症の結果腫瘍が生じることがあるが、吸入暴露によるヒトへの発がん性影響の可能性のは信頼できる/決定的ではない。この理由から、ナフタレンは物質及び混合物の分類、表示、包装に関する欧州規則(CLP 規則、 EC No. 1272/2008)に従い、発がん性カテゴリー2(「発がん性が疑われる」)に分類されている。ナフタレンは急性毒性カテゴリー4(「飲み込むと害がある」)としても分類されている。急性毒性物質は4つのカテゴリーに分類されていて、強い毒性影響のある物質はカテゴリー1に、より弱い毒性影響はその後のカテゴリーに分類される。ナフタレンはEU化粧品法No 1223/2009のAnnex IIにも記載されており、これはナフタレンが化粧品で禁止されていることを意味している。
ナフタレンは発がん性がある?
ナフタレンはCLP規則に従い発がん性カテゴリー2(「おそらくがんを引き起こす可能性がある」)に分類されているが、その発がん作用は他のPAHと比較して低い。齧歯類の実験では、発がん性の影響は吸入摂取摂取後の気道(鼻腔組織、肺)で生じる。疫学の知見ではヒトの吸入ナフタレンの発がん性影響に関して意味のある知見は入手できない。
細胞毒性の炎症過程で起こるラットの鼻腔細胞への発がん性影響は閾値のあるメカニズムによるため、ドイツ連邦環境庁の室内空気衛生委員会は2013年に室内空気のナフタレンの暫定ガイドライン値を設定した。健康予防ガイドライン値(RW I)として0.01 mgナフタレン/空気m3が、健康ハザードガイド値として0.03 mg/m3 (RW II)が 設定されている。入手可能な最新の知見によるとRW Iが超過しなければ、感受性の高い人が生涯暴露した場合でも、健康機能障害は予期されていない。RW IIに到達あるいは超過したら直ちに対策が必要である。
製造業者/販売会社はナフタレンに関して何に警戒すべきか?
ナフタレンが消費者製品に故意に添加されなくても、時々汚染物質として含まれることがある。これは黒色染料媒体としてのカーボンブラックや可塑剤としてエクステンダーオイルの使用による。
ナフタレンは化粧品には禁止されている。だが、優良製造規範で技術的に避けられない、天然の不純物、製造過程、保管、包装からの溶出で生じた禁止物質が意図せず少量存在しても、その化粧品がヒトの健康にとって安全であるならば、技術的に避けられない痕跡程度の存在はずEU化粧品規則によって許される。
消費者製品に関しては適切に意図したあるいは予測できる目的のために使われるような方法で化学成分により、特に毒性物質や汚染物質を通して、健康を損なう可能性があるものを製造あるいは扱うことは禁止されている、。この種の消費者製品を販売することも禁止されている。BfRは製造業者に技術的に最大限達成可能な限り、消費者製品中のナフタレン量を減らすよう助言している。
GS製品安全性マークのために決められたナフタレンの限度は健康の観点から導出されておらず、優良製造規範に従って今日達成でき従うことのできるナフタレン量から求められている、つまり最小原則による。GSマークに決められた限度を明らかに超過するナフタレン量は優良製造規範の原則に従っていないことを示している。
BfRのホームページ上の多環芳香族炭化水素(PAH)についての追加情報
http://www.bfr.bund.de/en/a-z_index/polycyclic_aromatic_hydrocarbons_pah_-130109.html