食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

悪い雑草は高く育つ

Bad weeds grow tall
19.04.2017
http://www.bfr.bund.de/cm/349/bad-weeds-grow-tall-conversation.pdf
農薬グリホサートをめぐる論争は何年にもわたり盛んである。研究、発がん性物質モンサント社についての会話である。
このインタビューの後、EFSAはモンサント論文や企業とオブザーバーからの影響に関して、一部の関係者が表した懸念に関する内部調査に従って声明を出すことにした。グリホサートとモンサント論文に関するEFSAの声明はEFSAのホームページ上で入手可能(EFSA, 2017):
https://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/170523-efsa-statement-glyphosate.pdf

インタビュー:JAN HEIDTMANN
ミュンヘン−グリホサートは神の恵みという人もいるし、悪魔の仕業と呼ぶ人もいる。除草剤が農業従事者の作業を楽にすることは疑いの余地がない。除草剤が種の絶滅に寄与し、その結果、鳥や野生のハムスターの自然生息地を破壊するする恐れがあることも明白である。とりわけヒトに関するグリホサートの影響について論争がある。世界保健機関のがん研究機関であるIARCは、グリホサートががんの原因となりうると述べている。EUの欧州食品安全機関(EFSA)のような他の国際機関はこの物質を無害だと考えている。ドイツでは、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)がグリホサートの評価に責任を持つ。BfRはその使用にはリスクがないと考えている。Roland Solecki氏は評価を行う「農薬の安全性」部門の議長である。
SZ:グリホサートを飲みますか?
Roland Solecki氏:通常殺虫剤を飲んだりしません。
けれど何百万もの人が飲んでいます。例えば、彼らが飲むビールはすべてグリホサートを含んでいます。
確かに、あらゆる種類の食品に痕跡程度の微量のグリホサートを見つけられます。問題はその量です。ビールの例にこだわると、有害となるグリホサート量に達するには、一度に約1000リットルのビールを飲む必要があります。けれどそれより前にアルコール中毒で死んでしまいます。
グリホサートはアメリカのモンサント社が40年前に最初に使用し、それ以来販売されています。それなのになぜ未だにそれがヒトのがんの原因となりうるかどうかを確実に言えないのですか?
私達はこれを科学的に表明できるという意見です:この物質は農業で適切に使用されるならヒトにがんのリスクはありません。これは米国、カナダ、オーストラリア、日本、ニュージーランドの当局の意見でもあります。
にもかかわらず、この物質が欧州で認可され続けるべきかどうかに関して激しい異論があります。
私達はグリホサートが販売されて以来、定期的に評価しています。これは科学技術の最新状況を考慮に入れることが求められているからです。このローテーションはおよそ10年ごとです。私達の知見は今日まで広く受け入れられています。
ではなぜこの2年間激しく議論されているのですか?
多くの理由が考えられます。当時、南米のグリホサートの使用について欧州にも報告が届きました。私の意見ですが、かなり困難な状況下で広範に使用されたのではないでしょうか。例えば、欧州で禁止されている農薬が飛行機からグリホサートと一緒に噴霧されていました。原因はまだ確認されていませんが、この大量使用が奇形との関連に起因するともいわれました。同時にここ欧州で食品の分析手段の効率がますます良くなり、以前は見つけられなかったごく少量のグリホサートを現在は検出できるようになりました。
グリホサートががんの原因となりうるかどうかは有名な科学者らの間でもかなり熱い争点になっています。BfRとは異なり、IARCはグリホサートを「おそらく発がん性がある」と考えています。IARCは、なにしろ、世界保健機関のがん研究機関です。
私はIARCの同僚を非常に尊敬しています。しかし同様に高く評価する10以上の国際機関、世界保健機関の担当機関、国連の食品及び農業機関が、適切に使用すればグリホサートはがんの原因にならないという結論に達しています。そして1つの団体が、おそらく発がん性があるといっているのです。
化学は明確な科学だと考えられている―では異なる評価の理由は何ですか?
私は40年間科学者です、そしていつでも異なる意見はあります。これは評価の過程で規定された目的によるのです。IARCの任務は、赤身肉からヘアカラーまで、それががんの原因となりうるかどうか、全ての物質の様態を調査することです。グリホサートの場合、IARCはこの除草剤に関する入手可能な研究のいくつかだけを使用しました。IARCの同僚は調べたデータの詳細な評価を行ったのですが、このデータはグリホサートの既存の知見の一部だけでした。
IARCの研究はそれゆえ価値がない。これはそういうケースですか?
IARC研究の影響の一つは、科学の分野での標準慣行通り、私達が徹底的にそれを分析し、自身の評価をもう一度批判的にレビューしているということです。さらに実施したのは、企業の研究知見を一般にも公開すべきかどうか議論を開始したことで、必要な法的要求が整っていれば、私達はそれを強く支持します。
現在グリホサートの継続承認を支持する特定の研究への批判もあります。米国モンサント社が機関や科学者に影響を与え、自身でいくつかの研究論文を書いたといわれています。モンサント接触したことがありますか?
はい、モンサントから3通の電子メールの問い合わせを受けました。彼らは追加データを誰に送るべきかを知りたがっていました。私はデータが属する消費者保護連邦オフィスを紹介しました。私達は企業と接触するありとあらゆる電子メールを開示しなければならないのです。ちなみに、私達の評価で批判された、グリホサートの継続認可を支持するとされるどんな研究も私達は使用しませんでした。
おそらく直接ではなかった。けれど、これらの研究は欧州食品安全機関(EFSA)の評価過程に組み込まれていて、それゆえグリホサートは肯定的評価になっています。
私はBfRに関することしか言えません。受けとった研究は科学的妥当性を決めるために考察しています。それが科学的基準を満たしていなければ使用しません。ところで、現在議論されている数少ない研究の妥当性は低いのです。EFSAと加盟国の評価は主にオリジナル研究と基本となる加工されていないデータに基づいています。現在企業が直接あるいは間接的に資金提供をした科学的意見が、グリホサートのEUリスク評価に影響を与えた、あるいはグリホサートの肯定的な評価をもたらしたというしっかりした兆候はありません。
けれど、信頼の欠如はまさに、企業が研究を委託し監督しているという事実、そしてあなたと欧州機関が評価の基本として基としてこれらの研究を使用するということから生じるのです。
はい、実際に米国、欧州、ドイツでは、車を販売したい人はその安全性の証拠を提出しなければならないと国会が規定しているのは事実です。同様に薬を販売したい人もそれが安全だということを証明しなければならない。もし誰かがグリホサートのような除草剤を販売したければ、その時彼らは安全性の証明も提出しなければならない。私が前に述べたように、その結果はその後厳密にレビューされるのです。これらの研究には何百万ものコストがかかるので、この規定はコストもどうにかしなければなりません。民間企業が行う研究に納税者が支払うなら、私は人々の言うことを聞きたいと思っています。
しかしながら、手続きがとても偏っているように思われます:グリホサートの使用を支持する機関は全て企業が提出した研究についての意見を基準として用いています―IARCのような独立した情報源は不適切だと断言されています。
これらの研究は明確に定義された公的規則に従ってレビューされています。この工程には互いに独立した団体で働く何百もの科学者が含まれています。すべてが企業の従業員名簿に載っている人ではありません。それらは失う名誉を持つ高い評価のある専門家なのです。私はあらゆる形のグリホサートを支持する機関を知りません;彼らがしたのは科学的評価です。これらの評価全ては企業が提供した研究や文献の総合調査に基づいています。私達はIARCを不適切だとみなしたのではありません:IARCの評価も企業が資金提供した研究に基づいています。ですがBfRとは異なり、IARCはオリジナル研究を直接利用したのではなく、公表文献を通して間接的に利用しただけです。
公的機関が研究を委託し監視し、企業がそれに支払わなければならないという方が良くないですか?
何年もの間、この問題について激しい政治討論が行われてきましたが、有効成分の評価の規則を作るのは議員なのです。私達は何の影響力も持たないのです。科学者と評価者である私にとって唯一重要なことは、もとになる研究とデータの科学的品質であり、情報源ではないのです。
それは科学的にはもっともでしょう。でも人々がその結果としてグリホサートに心配していることは理解できますか?
確かに理解できます。私が言えることは、人々を守るための科学的見解から私達ができること全てをするということです。植物保護製品の有効成分はその他多くの化学製品より大変詳しく検査されています。家庭の化学物質は、毎日皮膚に使用している化粧品でさえ十分に検査されていません。

「家庭の化学物質は、化粧品でさえ十分に検査されていません。」
生物学者Roland Solecki氏は現在3年間ドイツ連邦リスク評価研究所の「農薬の安全性」部門の議長を務めている。彼はこの部門はヒトの健康を守るための科学的見解からできること全てを行うと述べている。