食品安全情報blog過去記事

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EFSAは食品に添加される亜硝酸塩と硝酸塩の安全量を確認する

EFSA confirms safe levels for nitrites and nitrates added to food
15 June 2017
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/170615-0
肉や他の食品に意図的に添加される亜硝酸塩と硝酸塩の既存の安全量は消費者を十分保護していると、EFSAはその安全性を再評価したのち結論した。食品添加物としての亜硝酸塩と硝酸塩の消費者暴露は、これらの添加物を含む食品を多く食べる子供でわずかに超過していることを除けば、全ての年齢集団で安全量以内である。だが、亜硝酸塩と硝酸塩の全ての食事摂取源を考慮すると、全ての年齢集団で安全量(ADIs)を超過する可能性がある。
亜硝酸と硝酸のナトリウムとカリウム塩(E 249-252)はEU食品添加物として認可されている。それらは、肉、魚、チーズ製品の微生物の成長を妨げ、特にボツリヌス中毒症の予防に、また肉を赤く保ち風味を増すために使用されている。硝酸塩は天然でも特定の野菜に高濃度で存在し、また主に水中の環境汚染物質としてフードチェーンにも入ることがある。
EFSAの食品添加物及び食品に添加する栄養源に関するパネルの一員であり、再評価作業グループの議長であるMaged Younes教授は述べた:
「2009年以前にEUで認可された全ての食品添加物のEFSAの再評価計画の一部として、食品に添加される亜硝酸塩と硝酸塩の安全性を再評価した。入手可能な証拠に基づき、以前設定された両物質の安全量を変える必要はないと結論した。」
硝酸塩の現在の許容一日摂取量(ADI)は3.7mg/kg bw/ 日である。亜硝酸塩の安全量は、わずかに保守的な既存のADI 0.06 mg/kg bw/日に近い、0.07 mg/kg bw/日に再設定された。
暴露評価は更新され改善された
専門家は詳細暴露評価を用いて、食品添加物のみからの硝酸塩への消費者暴露は食品の硝酸塩全暴露量の5%未満で、安全量を超過しないと推定した。だが、食事からの全硝酸塩摂取源(食品添加物、天然に食品に存在するもの、環境汚染物質)を考慮すると、全年齢集団の中〜高暴露群の個人は安全量を超過する可能性がある。

暴露とは何を意味するのか?
暴露は、特定の時間内に、特定の頻度で、個人、集団、あるいは生態系に取り入れられる特定の物質の濃度や量である。専門家がある化学物質の消費者の食事暴露を評価する際には、食品の濃度に関するデータと消費された食品の量とを組み合わせる。子供は、体重あたりの食品摂取量がより多くなるため、しばしば多く暴露する。

食品添加物として使用される亜硝酸塩は、わずかにADIを超過する恐れのある子供の高暴露群を除くと、暴露は全年齢集団で安全量内だと専門家は推定した。全食事源からの暴露は、中程度の暴露の乳児、幼児、子供で、また全年齢集団の高暴露群で、ADIを超える可能性がある。
亜硝酸塩は、そのうちのいくつかは発がん物質であるニトロソアミンとして知られる化合物グループの形成にも関連している。そのためEFSAの専門家は、食品添加物として亜硝酸塩を使用した後に体内で形成されるニトロソアミンについても推定した。彼らは亜硝酸塩が認可された量で使用される時、ニトロソアミンの全暴露への寄与の健康への懸念は低いと結論した。
環境汚染物質などの他の供給源由来の、意図せず肉製品に存在する亜硝酸塩も、ニトロソアミンの形成に寄与することがある。EFSAの専門家は、これらのニトロソアミンの量は潜在的に健康の懸念を生じる恐れがあるが、この複雑な分野の不確実性と知識のギャップに対応するためにはより多くの研究が必要だと結論した。

助言と次の段階
Younes教授は述べた:「すべての入手可能な証拠を調査したのち、私達は許可された量で食品に添加される亜硝酸塩と硝酸塩は欧州の消費者に安全だと結論した。だが、なお今後の研究で満たすべき知識のギャップがある。
「特に、ヒトの唾液での亜硝酸塩-硝酸塩変換とその結果として生じるメトヘモグロビンについて、亜硝酸塩が添加された食品でのニトロソアミンの形成について、またヒトのさらなる疫学的証拠について、さらなる研究が役立つだろう。」
彼はつけ加えた:「添加物よりも他の食品源由来の亜硝酸塩/硝酸塩の暴露に関するよりよいデータ(野菜や汚染物質由来も含む)は、より完全な全体像や将来の詳細リスク評価を提供するのにも役立つだろう。」
EFSAの科学的助言は食品添加物としての亜硝酸塩と硝酸塩の安全な使用やEUの食品中の全体的な量を規制する欧州委員会と加盟国のリスク管理者に情報を提供するだろう。EFSAは一般の人に食品に添加される亜硝酸塩と硝酸塩の再評価を説明し、解釈可能にするわかりやすい要約を作成した。

Re-evaluation of sodium nitrate (E 251) and potassium nitrate (E 252) as food additives
EFSA Journal 2017;15(6):4787 [123 pp.].15 June 2017
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4787
食品添加物と食品に添加する栄養源に関するパネル(ANS)は、食品添加物として使用する際の硝酸ナトリウム(E 251)と硝酸カリウム(E 252)の安全性を再評価する科学的意見を提出した。SCF (1997年) とJECFA (2002年)が現在の硝酸塩の許容一日摂取量(ADIs) 3.7 mg/kg 体重 (bw)/日を設定した。入手可能なデータは硝酸ナトリウム及び硝酸カリウムの遺伝毒性を示さなかった。マウスとラットでの発がん性試験は陰性だった。パネルは、唾液に分泌される硝酸塩が亜硝酸塩に変換されて、メトヘモグロビンの形成に基づく硝酸塩のADIの導出を検討した。だが、ヒトの唾液中の硝酸塩から亜硝酸塩への変換に関するデータには大きなばらつきがあったため、パネルは入手可能なデータから一つのADI値を導出することは不可能だと考えた。パネルは、硝酸塩から亜硝酸塩への最大の変換係数を用いてもこれにより生じる亜硝酸は臨床的に重要ではなく、理論上推定される内因性N-ニトロソ化合物 (ENOC)生成量の懸念は低いことを注記する。それゆえ、SCFが設定したADIに関連する不確実性はあるものの、パネルは現在このADIを取り下げるには証拠不十分だと結論した。食品添加物としての使用だけによる亜硝酸塩への暴露は、詳細暴露推定シナリオに基づき食品中の硝酸塩への総暴露の5%未満だと推定された。この暴露は現在のADI(SCF, 1997年).を超過しなかった。だが、もし、食事中硝酸総暴露源(食品添加物、天然物および汚染物質)が検討されたら、すべての年齢集団の平均及び高暴露群でADIは超過するだろう。

Re-evaluation of potassium nitrite (E 249) and sodium nitrite (E 250) as food additives
EFSA Journal 2017;15(6):4786 [157 pp.]. 15 June 2017
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4786
食品添加物及び食品に添加される栄養源に関するパネル(ANS)は食品添加物として使用される際の亜硝酸カリウム(E 249)と亜硝酸ナトリウム(E 250)の安全性を再評価する科学的意見を提出した。SCF(1997年)とJECFA (2002年)が亜硝酸塩に設定したADIはそれぞれ0–0.06と0–0.07 mg/kg bw/日だった。入手可能な情報は亜硝酸ナトリウム亜硝酸カリウムのin vivo遺伝毒性を示さなかった。全体として、亜硝酸塩それ自体のADIは、発がん性の陰性結果も考慮し、入手可能な動物の反復投与毒性試験から導出することができた。パネルは、ヒトと動物で観察されたメトヘモグロビン量増加がADIを導出するための妥当な影響だと結論した。パネルはBMDアプローチを用いて、ADI 0.07 mg 亜硝酸イオン/kg bw/日を導出した。食品添加物としての使用に由来する亜硝酸塩の暴露は、最高のパーセンタイルでの子供のわずかな超過を除き一般人ではADIを超過しなかった。パネルはADIでの亜硝酸の摂取により生じるNDMAの理論的計算に基づき、亜硝酸由来内因性ニトロソアミンの生成を評価し、MoE > 10,000と推定した。パネルは高暴露群のすべての年齢集団で肉製品の外因性ニトロソアミンはMoE < 10,000と推定している。系統的レビューの結果に基づき、外から亜硝酸塩を添加することなく食品に存在するものと認可された量で加えられた亜硝酸塩から生産されたニトロソアミンを明確に識別することは不可能だった。疫学研究で(i)食事の亜硝酸塩と胃がん、(ii)加工肉由来の亜硝酸塩と硝酸塩の合計と結腸直腸がんの関連に幾分かの根拠some evidenceがあった。既にできているNDMAと結腸直腸がんの関連の根拠があった。

  • わかりやすい説明

EFSA explains risk assessment: nitrites and nitrates added to food
http://www.efsa.europa.eu/en/corporate/pub/nitritesandnitrates170614