食品安全情報blog過去記事

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妊娠中の軽度飲酒の害について調べた研究への専門家の反応

SMC UK
expert reaction to study looking at potential harms of light drinking in pregnancy
September 11, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-potential-harms-of-light-drinking-in-pregnancy/
BMJ Openに発表された研究で妊娠中に週に32g以下の飲酒の影響についての根拠はあまりないと報告している。出生時の体重や胎児性アルコール症候群などの妊娠の結果を検討している。
Royal College of Paediatrics and Child Healthの健康増進担当Russell Viner教授
これは質の高い研究で著者らは研究の弱点を適切に熟慮し、妊娠中の軽度飲酒については一般的に根拠はないと正確に主張している。アルコールについては混乱した情報が多数あるがこの研究は現在の根拠をもとに妊娠中あるいは妊娠しようとしている女性が安全に飲めるアルコールの量を言うことはできないことを確認した。私の女性への助言は、赤ちゃんが欲しいなら飲まないのがベストである、ということである。たとえ少量でも定期的に飲むことは害がある可能性があり、予防原則に従って避けるべきである。
アルコール研究UKの研究政策開発部長James Nicholls博士
この研究は妊娠中の軽度飲酒についての発表された論文の包括的解析で、我々の知識に重要な貢献をする。妊娠中の大量飲酒のリスクは良くわかっていて、胎児性のアルコール疾患は壊滅的である。しかしこの大規模系統的レビューは妊娠中の少量飲酒の有害影響については極めて限られた根拠しかないことを強調する。
このレビューは軽度飲酒に害がないことを発見したのではなく、少量飲酒の影響についての研究がないことを指摘している。
改訂医務主任ガイドラインでは妊娠中は飲まないことを薦めている。このガイダンスは予防的なもので、妊娠中にそれと知らずに少し飲んだ女性は不必要に心配することはない。
この研究の著者は予防的アプローチに同意している。しかし極少量の飲酒についてプレママを不安にしたり不必要なモラル審判に使うことの無いよう注意すべきである。
ケンブリッジ大学リスクの公衆理解についてのWinton教授David Spiegelhalter教授
この価値ある人道的研究は妊娠中は一滴もアルコールを飲んではいけないという警告は根拠により正当化されないことを示した。予防的アプローチは合理的であるが妊娠中にたまにワインを一杯飲んだ女性が罪悪感や不安は感じる必要はない。
ブリストル大学のプレスリリースはメインの結論ではなく小さな、多分アーチファクトであろう関連を強調することを選んだのは残念である
Imperial College London産科臨床准教授Christoph Lees博士
このメタ解析は妊娠中の軽度飲酒に関して政府の助言の根拠は一般的に弱いことを指摘している。軽度飲酒が小さな赤ちゃんを産むリスクがほんの少し高くなる可能性はあるものの他の理由でも説明できる。公衆衛生上のメッセージに責任のある人達にとっては根拠の確実さについて微妙なところを伝えるメッセージを作るのは重要な課題だろう。
King’s College London産科教授Andrew Shennan教授
妊娠中を含めて飲み過ぎが有害であることはよくわかっている。妊娠中の低レベル飲酒と害を関連させるのは難しく、この仕事はそれを確認した。それでも助言は変更された。女性には事実を伝えるべきである。我々の人体は食事に含まれる微量のアルコールとともに進化してきたのでこの知見は驚くべきことではない。しかしながら適量以上を飲んだ場合の赤ちゃんや子宮への相当な有害影響は強調すべきである。
(「適量」が難しいから「飲むな」ってことになったのでは。)