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食糧寄付ガイドラインの策定

EU Food Donation Guidelines
http://ec.europa.eu/newsroom/sante/newsletter-specific-archive-issue.cfm?newsletter_service_id=259&lang=default
◇報道発表−欧州委員会、食糧寄付を促進し食糧の廃棄や食糧貧困に対する活動を継続
Commission continues action against food waste and food poverty by facilitating food donation
http://europa.eu/rapid/press-release_MEX-17-3965_en.htm#2
欧州委員会は、『循環型経済への行動計画(Circular Economy Action Plan)』の核となる、EU内で食糧の寄付を促進するためのガイドラインを採択した。この目的は、EUの関連法規を明確にし、食糧寄付の障壁を取り除くのを支援することである。このEUガイドラインは、寄付の提供者と受領者が、食品衛生や消費者へ伝えられるべき食品情報などの、余った食糧についての関連要件を確実に尊重することを促すもので、それによって安全な食糧寄付が実践されるようになる。このガイドラインはまた、付加価値税など、食糧寄付に当てはまるEUの規則について、共通の解釈がなされるよう促す。ガイドラインの採択を歓迎し、欧州委員会 保健・食品安全総局(DG Sante)長官のVytenis Andriukaitis氏は、次のように述べている。「世界食糧デーにあたる今日、良い報告ができてとても嬉しい。EUではおよそ55万トンの食糧が、EUの食糧銀行を通じて610万の人々に再分配されている。しかし、これは再分配を通じて廃棄せずに食糧貧困対策に使うことができると推定される量のほんの一部に過ぎない。今日採択されたガイドラインは、業界や慈善団体の活動をやり易くし、それによって最も必要な人々へ供給されるようにする。それだけでなく、各国の管轄機関や事業者がEU内で食糧寄付を進める上で役立つ参考書となる。このEUガイドラインは、欧州委員会が、食糧の損失と廃棄に対するEUの活動機構(EU Platform on Food Losses and Food Waste)の構成員と密接に協力し、加盟国、国際機関、産業界、食糧銀行および他の慈善団体も交えて作出したものである。EU食糧寄付ガイドラインについての告知は次のリンクから参照できる。https://ec.europa.eu/food/safety/food_waste/eu_actions/food-donation_en
EU食糧寄付ガイドライン(抄訳)
COMMISSION NOTICE of 16.10.2017; EU guidelines on food donation
https://ec.europa.eu/food/sites/food/files/safety/docs/fw_eu-actions_food-donation_eu-guidelines_en.pdf
1. 緒言
1.1 背景
2015年、EU内の人口の1/4にあたる1億1910万人が貧困に瀕し、4250万人が1日おきにしかしっかりした食事にありつけない。一方で、年間約8800万トンの食糧が廃棄され、それに関連して1兆4300億ユーロが浪費されていると推測されている。
FAOによれば、生産された食糧の約1/3が損失されたり廃棄されたりしている。そうした食糧のために全ての水の1/4が使われており、中国と同じ広さの農耕地が必要とされている。食料廃棄はまた、世界の温室効果ガスの8%の放出につながっている。こうした中、EUの連邦食糧銀行(FEBA)は、610万の人々に53万5000トンを再分配できているに過ぎないのが現状である。
1.2 目的
・余剰食糧の提供者と受領者が、EUの規制の枠組みで定められた関連要件(食品の安全性、衛生、履歴管理および信頼性、付加価値税に関する事項など)を遵守することを推進する。
・余剰食糧の再分配に適用されるEUの規則について、EU加盟国の規制当局の間で共通の解釈がなされるよう促す。
このガイドラインは、EUの枠組みで対処が必要な問題に焦点を当てている。欧州委員会では、国レベルで食糧寄付に関する関連規則やガイドラインが策定されることを強く望んでいる。
2. 対象範囲
所有者から無償で供給を受ける食品事業者による食品の収集および再分配
2.1 再分配とは?
廃棄されるかも知れない余剰食糧を回収し、集め、必要とされる人々に分配すること。
このガイドラインには、所有者から無償で食料品が得られた場合に適用されるEU法規の関連条項を明確にするねらいがある。
2.2 余剰食糧とは?
食品の生産や流通の段階で様々な理由により生じる可能性がある。最終製品(生鮮肉、果物、野菜を含む)、半加工製品および食品成分が含まれるが、ヒトが消費するのに適したものであり、食品安全に関する全ての要件を満たしていなければならない。
2.3 行動する人は誰?
食糧供給網の各段階で食料提供者や受領者になる人。ガイドラインでは、剰余の食糧を再分配する食品事業者の具体的な責任と義務を、EU食糧法、特に一般食品法(General Food Law)と呼ばれるEC規則No 178/2002に定められているものとして明確にしようとしている。
余剰食糧の再分配網は複雑で、様々なタイプの活動者、活動団体や活動手続きが関与している。提供者団体、受領者団体(後方活動団体と前方活動団体; 前者は寄付された食糧を食糧供給網などの活動者から受け取る。後者は広報活動団体などから寄付された食糧を受け取り受益者に提供する。)、個人受領者、仲介団体などが関与する。
教会、学校、地域の催しなどにおける、私人による散発的な食糧の処理、調製、保管および分配は、このガイドラインの対象から除外される。
3. 食糧の再分配:活動者の役割と義務
余剰食糧の再分配には、一般食品法の規定が当てはめられる。無料、有料にかかわらず、食品を『市場に載せている』とみなされる。食糧再分配団体(ROs)でも慈善団体(COs)でも、余剰食糧を受け取る団体は、食品事業者とみなされる。
食品事業者の役割は、一般食品法の17条で定義されている。その(1)項において、食品事業者は、食品法の要件の実現に積極的に加わり、そうした要件が満たされているかどうか検証しなければならないと規定されている。また、特定の法規に基づく他の義務要件(例えば危害分析に基づく重要管理点方式: Hazard Analysis and Critical Control Points Principles (HACCP))にも密接に関連し、食品事業者がEUや各国の食品法の全ての要件を遵守するという基本的な責任も提示されている。
食品事業者は、特に食品の安全性と消費者への情報提供において妥協してはならない。食品を冷蔵保存して低温流通を維持するなどの措置が必要とされる。HACCPのような優良な衛生慣行を取り入れる必要がある。また、最終消費者にリスクがあり得るような製品の場合は、寄付を拒否する判断も行わなくてはならない。食品の安全に関する要件は、一般食品法の第14条に定められている。そこでは、1)安全でない食品を市場に載せてはいけないこと、2)健康を害するおそれがあり、ヒトが消費するのに適していないと思われる食品は安全でないとみなすべきであること、が規定されている。
一般的な履歴管理に関する要件も、一般食品法で定められている。食品の生産、加工および流通のあらゆる段階で履歴管理が確立されていなければならない。余剰食糧の再分配に関わる団体は、食品の入手元を記録し、他の業者に食糧を提供する場合は提供先も記録しておかなければならない。
安全でない食品の撤収、回収および告知の要件は一般食品法の第19条に概説されている。1)安全要件を満たしていないとみなした場合は速やかに市場から撤収し管轄官庁に連絡する。消費者に渡った可能性がある場合は効果的かつ正確に撤収の理由を知らせ、場合によっては回収措置を取る。2)食品の包装、表示、安全性および完全性に関係のない小売りや流通活動を行うことを責務とする食品事業者であっても、安全要件を満たしていない食品を撤収する手続きを取り、追跡のための関連情報を提供し、生産者、加工業者、製造業者および管轄官庁と協力する。3)食品事業者は、市場に載せた食品がヒトの健康を害する恐れがあるとみなした場合には、管轄官庁に速やかに連絡し、リスクを避けるために取られた策を伝えるなど、リスクを除くために協力する。
3.1 再分配団体と慈善団体の活動
COsは、ROsと共に、食品の保管と配送に限られた『小売り』("retail")活動に従事する食品事業者とみなされ(EU食品衛生規則)、また食糧の『大量調達者』("mass caterers")とみなされる(EU食品表示規則)。
3.1.1 余剰食糧の選別
複数個を1単位として販売しているもので、そのうちの一部がヒトの消費に適さない場合、食品事業者がそれらを除外して残りを再分配することは禁止されない。例)袋入りのミカンの1つにカビが生えていた場合や複数個が1包装となっているヨーグルトのうち1個のフタが剥がれていた場合、など。
ただし、詳細な評価(一般食品法の実施に関する欧州委員会のガイダンスで概説)を行って食べても安全なことが確かめられなくてはならない。
3.2 追跡可能性
食糧の提供者は食品事業者であり、食品の履歴を追跡できる体制を構築することが求められる。ただし、一個人が地域の活動や他の慈善事業や慈善団体においてその時だけ食品を提供するような場合は、追跡可能性に関する義務は生じない。
動物由来食品、発芽野菜生産用の種などは、過去の安全危機事例に照らして、特別な規則に基づいた追跡可能性が求められる。
食品の履歴を追跡できる体制の構築方法については、ガイダンス文書(Guidance on the implementation of Articles 11, 12, 14, 17, 18, 19 and 20 of Regulation (EC) No 178/2002 on General Food Law. Op. Cit., pp. 15-22.)に詳述されている。
以下の情報が提示されることが求められる。
〇供給者の名前と住所、供給された製品の識別情報
〇購入者の名前と住所、配布された製品の識別情報
〇取引/配送の日付、可能な場合は時刻まで
〇容量ないしは重量
記録の保管は5年間が望まれるが、ROsとCOsでは2〜5年が適切であると考えられる。
最終消費者へ配布される場合は、受領者についての記録は必要としない。
通常の小売業者や食品調達業者などがROsやCOsに食品を渡す場合、食品の受領者だけでなく、引き渡し側も履歴を残す必要がある。
ROsは食品の供給者と食品を引き渡した団体の両方の記録を付ける必要があるが、COsは食品の引き渡し先は最終消費者なので、食品の供給者の記録だけで良い。
魚介類や水産物については、一般的な追跡可能性規則を補足した特殊な規則が設けられており(EC規則No 1224/2009第58条)、それらの捕獲にまで遡れる情報を保持することが求められている。
4. 食品の安全に関する問題が生じた場合の第一義的責任と法的責任の判断
4.1 法律関連
第一義的責任と法的責任
食品事業者の第一義的責任には、食料供給網全体における、自らが管理している活動が関係している。加盟国はこのことに関して、国レベルの法規を持ち込むことはできない。
食品事業者の法的責任は、実際には、食品に関わる特定の法要件に違反があった場合に生じるものであり、加盟各国の国内法令でみられる民事または刑事責任に関する規則に由来している。ただし、それぞれの活動者の法的責任については、やはり一般食品法が定める責任要件を満たしているかどうかが基本となる。
不良食品に対する生産者の法的責任(欧州理事会指令85/374/EEC)
不良食品によって生じた損害の法的責任は、生産者に帰せられることになる。生産者の定義は、実際に製造した者だけでなく、生産者として自分を表記した者も含む。
不良食品が見つかった場合、法的責任の審査では、生産者が一般食品法に定められた所定の責任要件を正しく満たしていたかどうかを考慮にいれることになる。
食品安全問題が生じたときの責任および法的責任はどうなるのか
刑事罰や民事上の責任を食品事業者に負わせる可能性のある事実や状況の認定は、各国の法体系によって異なってくる。
農業食品チェーンにおける責任の所在に関しては、一般食品法施行ガイダンスを参照されたい(Guidance on the implementation of Articles 11, 12, 14, 17, 18, 19 and 20 of Regulation (EC) No 178/2002 on General Food Law. Op. Cit., pp. 12-14.)。
4.2 余剰食糧の再分配との係り
寄付の場合、販売流通チェーンにさらに1段階(ROsないしはCOs)が加わる。加盟国の中には、食品の所有者が移るときに交わされる文書、安全確保におけるこれら所有者それぞれの役割および責任、食品の再分配チェーンを通しての追跡可能性と消費者への情報提供について、連携協定を結んでいる国もある。
5. 衛生に関する規制と余剰食糧の再分配
余剰食糧の再分配においては、いずれの食品事業者も食品衛生に関するEUの規則を遵守する必要がある。この規則と一般食品法の一部を合わせて、『衛生パッケージ』(hygiene package)と呼んでいる。この”hygiene package”については、以下を参照のこと。
http://ec.europa.eu/food/food/biosafety/hygienelegislation/com_.rules_en.htm
・ Regulation (EC) No 852/2004 of the European Parliament and of the Council of 29 April 2004 on the hygiene of foodstuffs (OJ L 226, 25.6.2004, p. 3).
・ Regulation (EC) No 853/2004 of the European Parliament and of the Council of 29 April 2004 laying down specific hygiene rules for food of animal origin (OJ L 226, 25.6.2004, p. 22).
5.1 全ての食糧寄付行為に当てはまる一般的な衛生要件
規則(EC) No 852/2004が全ての食品事業所に適用される。
食糧の再分配に関連する最も重要な要件は、以下のとおりである。
・ 所轄官庁への事業所の登録
・ 規則(EC) No 852/2004に定められた適正衛生規範の適用
・ HACCP現職に基づいた手順の実現
これらの食品衛生規則は、以下の者に当てはめられる唯一の規則である。
・ 半冷凍や冷凍といった温度管理を求められない保存や輸送だけを行う小売業者
最終消費者に直接供給を行う小売業者
・ 非動物由来の食品をさらに再分配するために加工することに関与する当事者
5.2 動物由来食品の再分配の場合に当てはめられる特別な衛生要件
規則(EC) No 853/2004に規定されている。動物由来食品を他の事業所に供給する場合に適用される。この業態を始める前に国の認証を受ける必要があることなどが定められている。
動物由来食品の供給がわずか(業務のごく一部)で限定的で局所的である、もしくは移送または保存に限られている場合(温度管理は必要)、規則(EC) No 853/2004の適用除外となる。
動物由来製品と非動物由来製品の『混成製品』(composite products)の場合も適用除外(ハム入りピザ、バターを使ったパンやケーキ、卵を使ったパスタなど)。
これらの除外事項が当てはまる場合でも、国内法が適用となる場合がある。
さらに詳しくは、以下を参照のこと。
・ Guidance document on the implementation of certain provisions of Regulation (EC) No 853/2004 on the hygiene of food of animal origin
規則(EC) No 853/2004が自分に適用されるかどうかはAnnex 2の判定図を参照のこと。
5.3 サービス業、ケータリング業および外食産業部門由来の余剰食糧の再分配に当てはめられる衛生要件
サービス業やケータリング業の部門では、衛生上の理由から余剰食糧の再分配はより難しくなる。外食産業部門では場合に応じて可能である。
ケータリング業者は過剰に食品を製造しないようにするのが重要である。常温保存可能な食品や配送前包装済食品(調味料、クラッカー、ビスケットなど)は、開封前で包装が損なわれていなければ再分配可能。
ケータリング業やサービス業むけの食糧寄付ガイドラインがいくつかの国で作成されている。次のウェブサイトの” Guidelines for food donation”の項から各国のガイドラインへリンクしている。http://ec.europa.eu/food/safety/food_waste/library_en
5.4 再分配を促進するための余剰食糧の冷凍
専門家は余剰食糧の安全な再分配における冷凍のメリットに着目している。
再分配目的で動物由来食品の冷凍を認める加盟国は、国内の対応策を採用し、それらを欧州議会ならびに加盟国に告知することとされている。
6. 消費者への食品情報の提供
6.1 法律関連
特に食品ラベルなどの食品情報に関する要件等は、規則(EU) No 1169/2011で定められている。最終受益者まで同じ情報が行き届くことが重要。
・規則(EU) No 1169/2011第9条1項:食品名、成分、賞味期限、消費期限などを規定
その他の関連する法律:規則(EC) No 853/2004,規則(EU) No 1379/2013
食品事業者の責任要件
規則(EU) No 1169/2011第8条で規定
・食品情報の存在と正確さを保証する
・食品情報に関与していない食品事業者でも、その食品が法令順守していないと判明したり予測されたりする場合は、そうした食品を流通させてはならない。
・消費者を誤った選択に向かわせたり消費者の安全を脅かしたりするような食品情報の変更をしてはならない。変更による責任はすべて食品事業者にある。
どのように必須の情報を提示するか
配送前包装済食品の場合、包装に直接表示するか、ラベルを張り付けて表示する(規則(EU) No 1169/2011第12条2項)。販売添付文書(commercial documents)の形で提示することが許される場合がある(規則(EU) No 1169/2011第8条7項)。大量調達者に供給する場合など。
非包装食品の場合、基本的に規則(EU) No 1169/2011第44条および、場合によっては規則(EU) No 1169/2011第9条1項(c)に従う。
規則(EU) No 1169/2011のANNEX IIにリスト表示された成分や加工助剤、アレルギー惹起物質、不耐症惹起物質の存在を消費者に伝えなくてはならない。
魚介類や水産物については、広告用掲示板やポスターなどで必須とされる情報を提示しても良い。
業者から業者へおよび業者から消費者へ
最終消費者や大量調達者にではなく他の食品事業者に食品を供給する食品事業者は、十分な情報を提示して、次の事業者が食品情報の存在と正確さを保証できるようにしなくてはならない(規則(EU) No 1169/2011第8.2条)。
6.2 余剰食糧の再分配との係り
6.2.1 配送前包装済食料品における食品情報提供要件
購入品、無償提供品にかかわらず、最終消費者に食品情報を提示しなくてはならない。間違ったラベル付けなどにより製造段階で生じた余剰食糧についても、必須情報が最終受益者に正しく届くように説明や対策が為されなくてはならない (規則(EU) No 1169/2011第8条1項)。
6.2.2 言語に関する要件
食品情報は、加盟国の消費者が容易に理解できる言語で表記されていなくてはならない(指令79/112/EEC第14条)。市場となる国固有の言語が必要となる場合もある(規則(EU) No 1169/2011第15条2項)。
6.2.3 未包装済食料品における食品情報提供要件
6.1に記載の通り。
食品がさらにケータリング業やレストラン向けに加工、調製、調理される場合には、アレルゲンの存在に係る情報に限られてしまう場合もある。
アレルゲンに関する情報を提供できるようにする方策に関しては、加盟国は自国の基準を採用しても良い(規則(EU) No 1169/2011第44条)。
6.3 日付の記載
6.3.1 法律関連
規則(EU) No 1169/2011の条項に定められている。様式についてはAnnex Xを参照のこと。
次の2種類が存在。以下のウェブサイトにリーフレットあり。
https://ec.europa.eu/food/sites/food/files/safety/docs/fw_lib_best_before_en.pdf
・賞味期限
・消費期限
消費者のさらなる理解のために、以下のウェブサイトのような図解や判定図も公表されている。
http://ec.europa.eu/food/safety/docs/fw_eu_actions_date_marking_infographic_en.pdf
https://ec.europa.eu/food/sites/food/files/safety/docs/fw_lib_da_mind-the-date_decision-tree.pdf
6.3.2 余剰食糧の再分配との係り
『消費期限』も『賞味期限』も、設定は食品製造者の責任において行われる。卵を除き、EUの法規ではその設定を明文化していない。
『賞味期限』に関しては、食品製造者は食品の質(堅い食感、色、味など)を保証することになる。
『消費期限』が表記された食品については、寄付側は、期限までの期間を十分設けなくてはならない。加盟国の中には固有の法律でその最低期間を定めているところもある(フランスの48時間など)。
『賞味期限』が過ぎたものを市場に載せることはできるが、その食品の安全性の責任は食品事業者が負う。また『賞味期限』が過ぎていることを消費者に明確にしなくてはならない。
6.3.3 卵:期限表示に関する規則と再分配の実際
クラスA(食卓卵)は『賞味期限』を提示。採卵から28日。21日以内に消費者に届くこと。よって採卵から21日以降のものは小売できない。
採卵から21日を過ぎたものは加工用に用いることができ、そうした加工品を再分配に供することができる。
7. 財務に関する規則
余剰食糧の輸送に付加価値税がかけられる可能性がある。法人税控除などの財政的手段により、食糧寄付に経済的支援が提供される可能性がある。
7.1 付加価値税(VAT: Value Added Tax)
しばしば食糧寄付の障壁として影響を及ぼす。規則を無償で配布する食品に適するように改変することにより(VAT指令第16および74条に基づく)、余剰食糧の寄付が促進される可能性がある。
2012年12月7日にVAT指令(第16および74条)をEU加盟国全部に統一して適用するガイドラインが承認された。(詳細は以下のウェブページを参照。)
http://ec.europa.eu/taxation_customs/sites/taxation/files/resources/documents/taxation/vat/key_documents/vat_committee/guidelines-vat-committee-meetings_en.pdf
ガイドラインによると、食糧の寄付は思いやりの品物の供給として扱われる。付加価値税は、寄付される製品の購入価格に対して、寄付が生じたときの状況に調節して掛けられることになる。
EU加盟国における食糧再分配へのVAT規則の適用
加盟国によって、寄付食糧の価格をゼロ評価するところもあれば、通常の価格と同じ評価とするところもある。
ほとんどの加盟国は、一定の条件が満たされている場合、食糧銀行に寄付される食品にVATをかけていない。ベルギー、クロアチアデンマーク、イタリア、ドイツ、ギリシャ、オランダ、ポーランド、およびポルトガルでは、各国固有の税法に特別な条項を設けて食糧寄付に対応している。イギリスでは、ほとんどの食品については課税しないが、菓子類、チョコレート、ビスケット、ポテトチップスなどには20%のVATを課している。スペインとスウェーデンでは食糧寄付におけるVATに関して特定の条項を設けていない。
EU法についての詳説
欧州委員会は、EUのVAT小委員会が承認したガイドラインに沿って、寄付食糧に対するVATは、その状況及びが寄付された時の食品の状況を考慮して調整されるべきであると考えている。『消費期限』や『賞味期限』に近い食品については、ゼロ課税とすることを考慮すべきと考える。
7.1 財政的支援
課税控除により食糧寄付を促している加盟国もみられる。フランス、スペインおよびポルトガルでは法人税優遇措置が取られている。
調査した加盟国のほとんどにおいて、食糧寄付により、税額控除が受けられる。
ポルトガルでは、寄付する側の売り上げの8/1000までに限り、寄付される食品の価値の最大140%が控除される。
8. EUによる他の計画
8.1 最も貧困な人たちを支援するEU基金と食糧寄付
最も貧困な人たちを支援するEU基金(FEAD: Fund for European Aid to the Most Deprived)が、EU内の最も恵まれない人達に非金銭的な援助(食糧や衣服など物質的な援助)を行うことを目的として設置されている。
FEADの資金を用いて、協力団体が食品を購入することもでき、またその輸送、保存、分配にかかる費用を補うこともできる。このようにしてFEADは食品廃棄の減少に貢献し、協力団体による意識向上活動を支援する。
規則(EU) No 223/2014は、協力団体に実費を返金することを定めているが、欧州議会はいくつかの修正案を提示している。それらの一つは、食糧寄付費用調達を簡便化するもので、定価、一括購入価格、原価を定義し、協力団体への支払いの基礎を確立するものである。
Http://ec.europa.eu/feadnetworkに、FEADを運用した食品寄付事例などを収載したフォーラムが開設されている。
8.2 農産物市場に関わる共同機構
果物や野菜は、生産量に変動があり、季節的な要因を受け、また腐敗しやすい。そのため市場で過剰にならないように、共同機構(CMO: Common Organisation of the markets)が生産者団体(POs: producer organisations)に申し入れて撤収する仕組みがある。撤収した農産物が無償で分配される場合、EUの予算により完全に財政的に支援される。
無償で分配される場合は、他の目的(肥料やエネルギー源など)に使われる場合よりも財政支援が大きく設定されている(後者では50%に制限される)。
8.3 水産養殖物の市場に関わる共同機構
EUの基本漁業政策等を達成するため、漁獲物の種類によってそれ未満の者は獲ってはいけない漁獲サイズ制限が設けられている。しかし捕獲対象とされていないのに捕獲される水産物もある。
生産者団体(POs: producer organisations)は、漁獲高を調整しているが、市場価格が低すぎる時はPOsが市場から漁獲物を撤収しても良いことになっている(2018年末まで)。これについては、後に市場に戻せるようにすることなどを条件に、財政支援が行われている。
水産業の市場に関して設けられた共同機構(CMO: Common Organisation of the markets)は、特に水産物や水産養殖物の寄付を振興してはいないが、その可能性を排除はしていない。しかし直接消費者に提供されるものについては漁獲サイズ制限や他の基準を満たしていなくてはならない。水産養殖物についてはこのような制限はない。