食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他

  • 政府は人々のコメ依存を減らしたい

Government to reduce people’s dependency on rice
25.10.2017 | UkrAgroConsult
http://www.blackseagrain.net/novosti/government-to-reduce-people2019s-dependency-on-rice
インドネシア政府は他の炭水化物源を薦めることでコメ依存を減らすために働いている。一人あたりのコメ摂取量が他のアジア諸国に比べて多すぎる。農業大臣は多様化促進プログラムで一人あたりのコメ消費量を現在の年124kgから90kgにしたい。韓国40kg、日本50kg、タイ70kg、マレーシア80kgである。理想は50kgだが90kgに減らせたら良い。
(農業大臣が単一作物に依存するのは良くないと言うの、おもしろい。危機管理を考えているのだろう)

  • グリホサートゲート:IARCの「あらかじめ決まっていた」がんの知見の政治と科学

Glyphosate-gate: Policy and science implications of IARC’s ‘predetermined’ cancer finding
Geoffrey Kabat (Albert Einstein College of Medicineのがん疫学者 )| October 24, 2017
https://geneticliteracyproject.org/2017/10/24/glyphosate-gate-policy-science-implications-iarcs-predetermined-cancer-finding/
2015年3月にIARCが除草剤のグリホサートを「おそらく発がん性」とラベルする報告を出した。この判定が科学と農業コミュニティーを仰天させた。グリホサートは世界で最も広く使用されている除草剤のひとつで、安価で効果が高く毒性が低い。IARCの判定はこの化合物を評価した全ての他の機関に反する。
フランスのリヨンにあるIARCは、この評価を16人の専門家からなるワーキンググループで行った。このワーキンググループは、さらに、ヒトの根拠、動物の根拠、メカニズム/実験室での研究の小グループに分割された。そして動物実験の根拠が「十分」だとして「おそらく発がん性」とした。
IARCの分類についてあまりよく知られていないことは、暴露量を考慮しないということである。そうではなく「ハザード」−なんらかの条件下でがんをおこす可能性を評価する。現実世界での実際の暴露を考慮した「リスク」ではない。言うまでもなく、IARCの評価を声高に伝えるメディアの見出しからは、人々はそれが実生活で直接健康に影響するとみなす。実際の暴露量がどんなに少なくても。
過去数年、科学者がIARCのやりかたに疑問を呈してきたが、IARCは批判に応える代わりに自分たちの方法はしっかりしたもので改良の必要はないと主張し、批判者は利害関係者だと仄めかしてきた。しかし実際にはIARCの報告は科学者の精査とジャーナリストの調査によりますます不穏な問題が明るみに出てきた。ここに3つの大きな、それぞれ別々の背景情報を示す
動物実験と疫学根拠の再解析
2016年8月にRobert TaroneがEuropean Journal of Cancer PreventionにIARCの分類についてのコメントを発表している。TaroneはNCIの統計学者で、IARCが引用した動物実験を再検討した。通常その種の実験では、ある系統の齧歯類が1群以上の「処置群」と対照群に分けられる。そして「処置群」には検査対象となる物質−この場合はグリホサート−が用量を増やして投与され、対照群には何も与えない。動物が死ぬと調べられ、試験の終わりには残った動物は殺して腫瘍がないかどうか調べられる。
重要なのは投与群で対照群より腫瘍が多いかどうかである。比較的小規模実験では多寡にばらつきがあるが処置群で一貫して腫瘍が多いかどうかを探る。最も説得力があるのは用量−反応相関があるときで、つまり量が多いと腫瘍が多い。さらに、発がん物質なら雄でも雌でも一貫性があるだろう。
TaroneがIARCの報告で発見したのは、IARCが議論の中で特定の齧歯類のポジティブな結果を強調し、同じ実験であっても矛盾するネガティブな結果は明確に無視したということである。さらに不適切な統計手法が使われていて、実際よりデータを印象的に見えるようにしている。Taroneは「このワーキンググループが引用したグリホサートの齧歯類での全ての発がん性試験のデータからは、グリホサートが動物の発がん物質であるという十分な根拠にはならないことは明確である。発がん性についての限定的根拠があると言うことすら困難である」と結論している。
ヒト(疫学)研究をレビューして、TaroneはIARCの非ホジキンリンパ腫とグリホサートの関連についてもまた根拠を総合的に判断したのではなく都合の良い特定の研究を好んだ結果であることを発見している。
・対モンサント訴訟での供述調書からの暴露
Davis ZarukがChristopher Portierの関係するモンサントへの訴訟に関する供述調書を検討した。(略)
・グリホサート報告のIARCによる編集プロセス
(Reutersの報道の件、略)
これら全てがIARCは予め決まっている物語に沿うように根拠を編集したことを指摘する。
何が賭けられているのか
IARCの2015年の意見は米国での裁判の基礎となっただけではなく、環境活動家、反GMO団体、オーガニック食品企業ロビイスト達の強力な武器となった。EUではここ2年間グリホサートの再認可が反グリホサート活動に惑わされた政治家により阻止されている。グリホサートの禁止は収量の減少と生産コストの増加、よりリスクの高い除草剤の使用により農家と消費者の両方に害となるだろう。
IARCのグリホサートの決定に関する暴露は科学的根拠、政治、世論の関係についての重大な教訓を含む。環境中に残留する化学物質の安全性に関する決定は困難で利用可能な根拠の、妥当な専門性をもつ専門家による批判的吟味が必要である。これは妥当な根拠を資格のある専門家が集まって正直に検討することでのみ可能になる。環境と健康に関する疑問をとりまく環境が極めて熱が高く分極しているとき、活動家が人々の懸念に訴えて何かが原因だという説に支持を得るのは極めて簡単である。しばしばこの懸念は我々の食品や水や環境に存在する微量の化学物質に関連する。しかし議論の両側は平等ではない。どんなに疑わしい、弱い根拠であっても正の関連についての根拠は直ちに重大な脅威として受け容れられる。一方優れた根拠であっても脅威が存在することに疑問を提示するものは、心配した市民を説得する同じパワーを持たない。
関連するもう一つの点は利益相反に関する一方的でナイーブな見解である。確かに企業には明確な関心があり、それは考慮すべきである。実査それは考慮されるようになっている。しかしイデオロギーや専門による影響も考える必要がある。我々は環境活動家やその活動に協力している科学者に利益相反がないと騙されている。IARCのグリホサート評価に関連する最近の暴露はこの問題を浮き彫りにする。科学者や科学機関は透明でなければならない。「私達は公平だから信じろ」と言うのではなく、規則に従って「信頼して欲しいが検証して欲しい」あるいは「信じなくていい、でも検証して」と言うべきである。
今回の暴露は、強い信念が関係する大きな影響のある問題、相当な額のお金、そして出世のチャンスがある場合には個人だろうと権威ある機関だろうと、利益相反がないとみなすことはできないことを明確に

  • EUではグリホサートについて同意できない

No consensus on glyphosate in the EU
October 25, 2017
https://cen.acs.org/articles/95/i43/consensus-glyphosate-EU.html
加盟国は更新期間について合意できなかった
EUはグリホサートの使用の再認可についての重要な決定を延期した。
欧州議会は10月24日にグリホサートを禁止するという拘束力のない決議を通過させた。欧州委員会は10月25日に10年更新案についての投票を計画していた。しかし議会での投票のあと、委員会は提案を取り下げた。現在のEUでのグリホサートのライセンスは12月15日に切れる。
グリホサートの使用に関する議論は2015年にWHOのがん機関がおそらく発がん性と分類してからEUでは過熱し続けている。今月初め欧州委員会にはグリホサートの使用禁止と農薬認可プロセスの改革を求める130万以上の署名が届けられた。
EU当局は2016年6月にグリホサートの15年間の再認可投票に失敗した。その代わり規制担当局が安全性を評価するための18か月の延長を認めた。それからECHAはグリホサートに発がん性の根拠はないと宣言しEFSAも同じ結論に達している。
しかしEU加盟国は再認可期間について合意できていない。現在欧州委員会は7-8年の範囲での合意を目指している。
農業団体や農薬メーカーはEU当局に15年の更新を強く求めている。「更新されなければ食糧供給と農業保全が脅かされるだろう」と欧州農家と農業協同組合の代表Copa and CogecaのPekka Pesonen委員長は言う。グリホサートの更新の失敗は「我々の組織と意志決定者への消費者の信頼を無くし一部の少数派の意見が主役を務めることを許す」
EU当局はこの議題について11月6日の会合で議論する予定。
(グリホサートについてはとにかくフランス語の記事が多い)

  • これらのベビーフードやミルクにはヒ素、鉛、BPAが含まれる、新しい研究

These baby foods and formulas tested positive for arsenic, lead and BPA in new study
Oct. 25, 2017
https://www.usatoday.com/story/news/nation-now/2017/10/25/these-baby-foods-and-formulas-tested-positive-arsenic-lead-and-bpa-new-study/794291001/
水曜日に発表された警鐘的研究は多くのベビーフードにヒ素が含まれることを発見した。そして見つかった汚染物質はそれだけではない。NPO団体クリーンラベルプロジェクトは過去5ヶ月間に購入したベビーフード、乳児用ミルク、幼児用飲料野スナックを調べた。その結果はピアレビューのある雑誌に発表されてはいないが530製品を調べ、65%がヒ素、36%が鉛、58%がカドミウム、10%がアクリルアミドを含むことを発見した。これら全ての化合物は乳児に危険である可能性がある
最悪のものの中にGerber, Enfamil, Plum OrganicsおよびSproutなどの主流ブランドが含まれる。また「BPAフリー」と謳っている製品のうちの60%にBPAが含まれる。
このプロジェクトで最も多く発見された汚染物質はヒ素で、約80%の乳児用ミルクから検出された。最も高いのはコメを用いたベビーフードである。
クリーンラベルプロジェクトはカリフォルニア環境健康ハザード評価室の情報をもとに製品に★でランキングをしている。クリーンラベルプロジェクトの最高責任者で食品安全科学者のJaclyn Bowenは「赤ちゃん業界はアメリカの最も脆弱な集団を守るためにもっと良い仕事をする必要がある」という。

  • 乳児用ミルクとベビーフードプロジェクト 要約

Infant Formula and Baby Food Project Summary
http://www.cleanlabelproject.org/product-ratings/infant-formula-baby-food/
60ブランド500製品の130以上の毒素(重金属やBPA、農薬、汚染物質等)を調査してランキングを発表している
その結果ベビーシリアルでトップにあるのがほぼオート麦で最低ランクがほぼコメに。特に玄米は厳しい
(非常に多くの報道がなされている。ヒジキ入りのベビーフードとか知ったらどう思うだろう。日本では報道されないだろうな、ハチミツのネオニコより相当身近でリスクもそれなりなんだけど)

  • 核の風景を変えるため廃棄物を再分類

Natureエディトリアル
Reclassify waste to shift the nuclear landscape
24 October 2017
http://www.nature.com/news/reclassify-waste-to-shift-the-nuclear-landscape-1.22880
米国エネルギー省は核廃棄物をリスクに従って分類すべき
合理的な変更ができない問題は恐怖と政治不信を伴う惰性。

  • 若さを維持するために、ゾンビ細胞を殺せ

To stay young, kill zombie cells
Megan Scudellari 24 October 2017
http://www.nature.com/news/to-stay-young-kill-zombie-cells-1.22872
死ぬことを拒否している自分の細胞を殺すことが強力なアンチエイジング戦略であることがマウスでわかった。ヒトで試されようとしている。
老化細胞といわれるもう分裂しない細胞を除去することでマウスの病気を減らせることがわかってきた。バイオテクノロジー企業や製薬会社が老化細胞を殺す薬物の試験をしたがっている

  • Trumpの科学アドバイザー不在期間が現代の記録更新

Wait for Trump's science adviser breaks modern-era record
24 October 2017  Lauren Morello
https://www.nature.com/news/wait-for-trump-s-science-adviser-breaks-modern-era-record-1.22878
ホワイトハウスにおける科学職のトップが空席のまま9か月以上経った
以前の記録は2001年のBush大統領の276日。1976年にホワイトハウスに科学技術政策オフィスができてから最長。ちなみに最短はBarack Obama前大統領の47日。

  • 気候変動のヒト健康影響−専門家の反応

SMC NZ
Human health impacts of climate change – Expert reaction
October 26th, 2017.
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2017/10/26/human-health-impacts-climate-change-expert-reaction/
Royal Society Te Apārangiの新しい報告書によると気候変動は直接的−熱波や気候イベント−およびメンタルヘルスに負荷をかけて間接的にヒト健康に影響を与える。
この報告書についての報道へのリンクと専門家の反応
(NZでは気候変動のニュースが継続して大きく取り上げられている)

  • TIMEはヨガの空中浮遊インストラクターに基づいて科学記事を書く:彼らが使える他のアイディア

TIME Has A Science Article Based On A Yogic Flying Instructor: Here Are More Ideas They Can Use
https://www.acsh.org/news/2017/10/25/time-has-science-article-based-yogic-flying-instructor-here-are-more-ideas-they-can-use-12021
反科学軍が気勢を上げている。JAMAに(尿中グリホサートが増えたという)レター(短報でピアレビューがない)を発表してNew York Timesなどの反科学支持の記者がニュースを書きTIMEのAlice Parkの支持も得た。Parkの記事は単なるプレスリリースの書き直しで、人々を恐がらせることを目的にしている。彼女がジャーナリストなら情報源である自称教授のPaul Millsがどんな人物か知るべきだろう。彼の肩書きは"Professor-In-Residence"(臨時教授?)で定年まで勤める権利はない。さらにもっと調べると彼はこの肩書きを使ってお金を儲けるために法廷で専門家として証言している。そして彼の「神経科学」の学位が超越瞑想とヨガの学校であるMaharishi University of Management から授与されたものであることがわかるだろう。この学校は大学として認証されていない。この学校について詳しくない人のために言うと、この学校は代替医療帝国を築いたインドの宗教指導者が創設した。従って多分Millsの信念に科学はないだろう。彼は長寿のためにオーガニック食品を食べるよう主張している。
Parkの次の記事ために、彼が書いた論文を紹介しよう。
「死者との主観的コミュニケーションに関連する電気的活性」
統合医療のエピジェネティックメカニズム」
超越瞑想と空中浮遊訓練の対ホフマン反射への影響」
等々。TIMEはこうした信じられない主張をもとにたくさんの「科学」記事を書くことができるだろう
最後にTwitterの反応を紹介しよう。このニュースに反応して多くの人がMillsをグリホサートの専門家だとみなしている。これはジャーナリズムの失敗だけではなくJAMAの編集の失敗でもある。