食品安全情報blog過去記事

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生活スタイルの選択肢としてのベジタリアン食および必要とされるリスクコミュニケーション: BfRの調査事業で明らかにされたベジタリアンの考え方に関する知見

Vegan diet as lifestyle choice and the need for risk communication: Findings of a BfR research project published on attitudes of vegans
42/2017, 17.10.2017
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2017/42/vegan_diet_as_lifestyle_choice_and_the_need_for_risk_communication-202576.html
バーベキューで豆腐ソーセージ、その後に卵の代わりにバナナで作ったケーキを食べる?ベジタリアン食が流行っていることに疑いはない。だが、健康良い影響を与えることが証明されている一方で、リスクも存在している。 "BfRの主席教授であるAndreas Hensel博士は、次のように述べている。「動物由来食品を食べることを完全に控えている人には、特に妊婦や子供の場合、ビタミンB12や鉄のような栄養素の欠乏が起こりうる。もし、ある集団に起こりうるリスクについて情報を得ようとするなら、その集団の考え方について知っておくことが肝心である。」BfRは現在、人々をベジタリアン食に向かわせ、それを続けようとさせるように影響を与える個人的および社会的要因に関し、実施した研究事業で得られた知見を(ドイツ語で)公表している。この事業で明らかになったことの一つは、ベジタリアンが持っている既存の信念を理解するために、効果的なリスクコミュニケーションが必要であるということである。その目的は、ベジタリアン食と組み合わせることができる、毎日の生活のための具体的な秘訣を提供することである。 ベジタリアン食を取り入れようと決断した集団の割合が増えているが、どのような利益と不利益がそのような決断から生じるかは、科学的見地からはまだ必ずしも明らかになっていない。いくつかの研究では、ベジタリアン食は、例えばコレステロール値を下げたりあるいは2型糖尿病のリスクを下げたりするなど、健康に良い影響を与えることが示されている。同時に、完全なベジタリアン食は、健康を害するリスクを高めることがある。何故なら、植物ベースの食事は、いくつかの特定の栄養素の適切な供給を確保することをより困難にするからである。非常に重要な栄養素とみなされるものには、ビタミンB12と並び、例えば、いくつかのミネラル、特定のアミノ酸、長鎖オメガ-3脂肪酸が挙げられる。これは、特に妊婦や子供など、脆弱な集団に当てはまる。2016年にDGE (German Nutrition Society: ドイツ栄養学会)は、最新の科学文献に基づいて、ベジタリアン食に対する立場を採択した。そして「DGEは妊婦、授乳中の女性、乳児、子供、青年にはベジタリアン食を推奨しない。」という結論に達した。
BfRは、この話題に焦点を当てることを決定し、適切なリスクコミュニケーション戦略を開発する活動に着手した。調査事業が立ち上げられ、対象とした集団にインタビューを行う中で、合計42名のベジタリアンに彼らの考え方を尋ねた。平均的な集団と比較して時にはかなり目立った違いがあることを考慮しながら、得られた知見から一般化された意見が導かれた。
調査によると、ベジタリアンは平均以上の教育を受けており、栄養素について十分な知識を持っている。例えば、42名のうち40名は、ベジタリアン食はビタミンB12欠乏という結果を招く可能性があることに気付いている。多くの回答者はそのため彼らは規則的にこのビタミンを補っていると述べている。だが、情報提供の必要性もある。例えば食品中の鉄の供給源に関する知識は、断片的である。それでも、回答者の大多数は、この特別な形式の食事が持つリスクに気付いている。インターネットは、ベジタリアンダイエットに興味がある人のための最も重要な情報源として挙げられている。
この調査は、考え方の均一性を強調するものとなっている。ベジタリアン食支持の決断は、一般的に倫理上の問題に突き動かされている。例えば、ほとんどのベジタリアンは、洋服などの他の分野についても、動物製品なしでやっていけることもほのめかしている。回答者の圧倒的多数は、動物製品を許す雑食性の食事に戻ることを想像することができない。そしてベジタリアン食になる強力な理由として特に妊娠を挙げる人はいなかった。
調査の過程において、ベジタリアン食を危険または異常とくくってしまうと、対象集団の本質に到達することがかなり難しくなることが明らかとなった。効果的なリスクコミュニケーション戦略は、既存の強い信念を理解しようとするものでなければならない。これには、ベジタリアンが彼らの栄養的な嗜好を補うために利用できる具体的なガイドラインも含まれ得る。