食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

FDA、有害性が疑われる未確認のホメオパシー薬品から消費者を守るため、リスクに基づいて対応の優先順位を決めるという方針を示す

FDA proposes new, risk-based enforcement priorities to protect consumers from potentially harmful, unproven homeopathic drugs
December 18, 2017
https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm589243.htm
2017年12月18日、FDAは、ホメオパシー薬品と表示された製品を対象に、新しく、リスクに基づいた対応を行っていく方針を示し、そのためのガイダンス案を公表した。ホメオパシー療法の名で深刻な疾患や病態に対処できるとして市場に出回り、その実何の臨床的効果を示すことのないものが流布されている状況に取り組みやすくなる。また、有害成分を含んでいたり、CGMPに適合していないホメオパシー(を語る)製品にも対応しやすくなる。
法律上、ホメオパシー薬品も、承認、不良化、虚偽表示に関して他の医薬品と同様の要件を満たさなくてはならないが、ホメオパシーを語る処方薬や非処方薬が、1988年以来のFDAの施策に基づく承認を得ずに製造・販売されている。
FDAの局長であるScott Gottlieb博士は、次のように述べている。「ホメオパシーを謳った製品には、製造が粗悪なもの、活性成分を含むが適切に試験がされておらず、患者への情報開示もされていないものが多く認められる。FDAの規制の取り組みは、ホメオパシー薬品市場の複雑さに対応するものでなければならず、そのためによりリスクに基づいた対応を行う必要がある。」
この新しい対応では、多くのホメオパシー製品は、新しいガイダンス案に記載されたリスクに基づく分類からは外れ、市販されたままになり、以下のような製品に焦点が当てられるようになる。
・ 安全性への懸念が報告された製品
・ 重大な安全性の懸念を生じることが疑われる成分を含むか含んでいると謳っている製品
・ 投薬経路が経口や経皮以外である製品
・ 深刻な、あるいは生命を脅かす疾患および病態を抑止もしくは治療するために使用することを目的とする製品
・ 虚弱な人向けの製品
・ 品質、効力または純度が法律で定められた基準を満たしていない製品
こうした製品の例は、ベラドンナやマチンのような成分を含む乳児および子供向けの製品や、がんや心臓病などの深刻な病態用に市販されている製品である。
ホメオパシーは、1700年代の終わりころから始まった代替医療行為であり、2つの主要な原理に基づいている。すなわち、健康なヒトに症状を惹起する物質は希釈して病気の治療に用いることができる(「同じものが同じものを癒す」)ということと、希釈すればするほど効力が強まる(「超微量の法則」)ということである。植物、鉱物、化学物資、ヒトや動物の排出物など、様々な起源から作られる。一般に、薬局、小売店、ネットで購入できる。
この10年間に市場が指数関数的に大きくなり、30億ドル業界となっている。
2016年9月、FDAベラドンナを含むホメオパシー生歯用錠剤およびゲル剤に警告を発した。ベラドンナは、2歳未満の子供に深刻な有害作用を示し、その後発作や死亡など、予測不可能な結果をもたらす。FDAの研究所の分析の結果、ホメオパシー生歯用錠剤の中に、高濃度のベラドンナを含むものが確認された(検出濃度はばらつきがあった)。同様の事件が2010年に起きている(Hyland社製生歯用錠剤)。FDAの査察では、製造管理が基準を満たしていないことが示された。
その他にも、亜鉛を含むホメオパシー経鼻薬(嗅覚が損なわれる可能性があった)や、効果のないホメオパシー喘息薬、マチン(げっ歯類の屠殺にも使われる毒性の高いストリキニーネを含む)等の有毒成分を含むホメオパシー薬品などに対し、数多くの警告を発してきた。
ホメオパシー製品はFDAでは承認されておらず、安全性、有効性および品質に関して現行の基準を満たしていない可能性がある。」と、FDAの医薬品評価研究センターの所長であるJanet Woodcock医学博士は述べている。
2015年4月、FDA公聴会を開き、利害関係者からホメオパシー薬品の使用状況について情報を取得し、FDAホメオパシー製品に対する規制の枠組みについての意見を聴取した。また、FDAの意見聴取窓口にも9,000を超える意見が寄せられ、それらの意見を考慮して、リスクに基づいた対応についての今回のガイダンスを作成するに至った。
ホメオパシー製品への対応を再考しているのはFDAだけではない。2016年11月、FTCは、薬局の店頭で売られるホメオパシー薬品の有効性と安全性の文言を、同様の健康効果を謳う他の製品と同じ基準で規制するという、新たな施策を表明した。FTCは、販売会社に対し、特定の病態を治療できる等の健康効果の文言に関し、それに見合った信頼できる科学的証拠を提示できなければならないと述べている。
FDAは、このガイダンス案に関するパブリックコメントを90日間募集する。
FDAはまた、MedWatchプログラムにおいて、医療関係者や患者から、ホメオパシー薬品や他の医薬品での有害事例や品質不良事例の報告も求めている。