食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

ビスフェノールA: 食品接触材料に関してより厳格な対策を適用

Bisphenol A: more stringent measures for food contact materials
February 14, 2018
http://ec.europa.eu/newsroom/sante/newsletter-specific-archive-issue.cfm?newsletter_service_id=327&lang=default
欧州委員会ビスフェノールA (BPA)を食品接触材料に使用することに関し、制限を大幅に厳しくする新しい規則*1を発表した。新しい規則では、規制基準(特異的移行限度: SML)がより低く設定されている(食品1 kg当たり0.6 mgだったものが0.05 mg)。SMLは、プラスチック材料が食品へ移行しても食品の安全が確保される量である。新しい規則ではまた、制限の対象を、食品や飲料の缶の表面を被覆するコーティング材にまで拡げている。さらに、2011年以降BPAの哺乳瓶への使用が禁止されているが、新しい規則では、乳児用「蓋付きマグカップ」の製造にBPA使用することも禁止され、乳児や0〜3歳児向けの食品に使われるコーティング材からBPAが移行することも許されなくなる。新しい規則は、2018年9月6日から適用される。
より詳しくは、以下のBPAに関するQ&Aのウェブページを参照のこと。
*1: http://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2018/213/oj

Questions & Answers on BPA
February, 2018
https://ec.europa.eu/food/sites/food/files/safety/docs/cs_fcm_qa_bisphenol_a.pdf
ビスフェノールAとは?
ビスフェノールA (BPA)は、ポリカーボネートなどの硬質耐久プラスチックの製造に広く用いられている化学物質で、それらのプラスチックは、ウォーターサーバー、成型機器、飲料や食品向けの再利用可能なコンテナーなど、食品接触用途に使用されている。また、食品や飲料の缶の表面を被覆するコーティング材としてのエポキシ樹脂の製造においても用いられている。さらにBPAは、感熱紙、玩具、CDなどの多くの消費者製品に使用され、医療器具においても使用されている。
BPAにより生じる健康への懸念は何か?
いくつかの研究で、BPAが健康に対し様々な影響を及ぼす可能性があることが示されている。例えば内分泌攪乱性が示唆されており、これはヒトでも起こるのではないかと考えられている。2015年に、欧州食品安全機関(EFSA)は、耐容一日摂取量(TDI)を引き下げる結論を出し、これが、BPAの食品への移行規制値としてEUの法規に明記される特異的移行限度(SML)を低く見直すきっかけとなった。ただしEFSAは、BPAは食事を介した現行の暴露水準では、どの年齢群の消費者においても健康リスクを生じることはなく、感熱紙などの全ての暴露源についても、消費者にもたらす健康の懸念は低いと述べている。
それでも、欧州化学物質庁(ECHA)は最近BPAは内分泌攪乱物質と認定したのではないか?
ECHAもEFSAも、BPAが内分泌攪乱性を有していることを示す証拠があることを認めている。しかし、ECHAがBPAについてヒトや環境と関連があると考えられる有害性を評価したのに対し、EFSAは、内分泌攪乱性やBPAへの暴露量など、健康に及ぼされ得る全ての影響を考慮して、食品中に存在するBPAによるリスクを別途具体的に評価しているのである。
なぜ欧州委員会BPAを食品接触材料に使用することを完全に禁止しないのか?
加盟国との綿密な協議を経て、欧州委員会は2月12日に、BPAがプラスチック製食品接触材料から移行しても許容される量について、大幅に厳格な限度値を設ける施策を採択した。また、この限度値の対象を食品や飲料の缶にまで拡大し、BPAへの暴露を低減することを図り、消費者の保護水準を高いものにした。さらに、乳児や幼児向けの食品接触材料におけるBPAの使用禁止も加えられた。EFSAはその任務において、不確実性やBPAが持っている可能性があるあらゆる影響を考慮に入れ、それらを組み入れてリスク評価を行っている。目下のところ、代替物質の情報は十分には得られておらず、そうした物質の安全性や有効性を確認してBPAが完全に置き換えられるにはさらに検討が必要となる。
どのような食品接触材料でBPAが使われているか?
BPAは、多くの食品接触製品で使用されている。ポリカーボネートプラスチックの製造にも用いられており、このプラスチックは硬くて耐久性があるため、ウォーターサーバー、菓子類の成型機器などの再利用を念頭に置いた製品に使われており、飲料ボトルやプラスチック容器などの台所用品にも使われている。また、飲料や食品の缶のコーティング剤の製造にも用いられている。しかしBPAは、使い捨ての水用ボトルや食品ラップなど、軟らかいプラスチック包装材には用いられていない。
食品接触材料以外の分野でもBPA対策は取られているのか?
取られている。BPAは非常に多くの製品で用いられており、他の分野での規制も存在する。EUのREACH法に基づいて、BPAは非常に高い懸念がある物質(SVHC)に認定されているだけでなく、2020年からは感熱紙に存在するBPAに関して新たな規制が適用される。玩具あるいは職場環境に関しても、従来より厳しい閾値が導入されている。一方、医療機器の分野では、将来例外措置が必要になってくると考えられる。
研究と革新のためのEUの体制作り計画であるHorizon 2020の一環として、欧州ヒトバイオモニタリング計画*が立ち上げられ、BPAのような化学物質への暴露水準が欧州の住人の健康に懸念を生じるものであるのかどうか、またBPAの代替品が安全であるのかどうかについて、検討が行われている。得られた結果は、国レベルあるいはEUレベルの政策決定に役立てられる。欧州委員会はまた、食品包装材などによりEU住人が内分泌攪乱物質に暴露されるのを最小限にするために、今後新しい戦略に取り掛かる計画である。
*: EuropeanHuman Biomonitoring Initiative (https://www.hbm4eu.eu/)
食品接触材料中のBPAに関して取られる次の一歩は何か?
欧州委員会はEFSAに対し、今後実施されることが予想される試験の結果、および残された不確実性の問題に関連する科学的データに基づいて、BPAを全面的に再評価するよう要請した。この任務は2018年春に始まることになっており、任務が完結した折には、欧州委員会は得られた知見を精査し、食品接触材料中のBPAから消費者を保護するために何らかの追加措置が必要かどうかを判断する。