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FSAIの科学委員会は、健康を守るためにビタミン類とミネラル類の新しい上限を提唱する報告書を発表

FSAI Scientific Committee Report Advocates New Upper Limits for Vitamins and Minerals to Safeguard Health
5 June 2018
https://www.fsai.ie/news_centre/press_releases/vitamins_minerals_supplements_05062018.html
FSAIの科学委員会は本日、30種類のビタミン類やミネラル類のうち21種類について、アイルランド国内のフードサプリメントに許容される最大安全濃度を確立するのに適用できる方法の概要を、フードサプリメント業界向けに、報告書にして発表した。この報告書では、アイルランドの住人におけるこれらの栄養素の耐容上限摂取量が設定されており、フードサプリメント業界は、この値を指針として、アイルランドの市場に置かれるビタミン類やミネラル類を含むサプリメントの一日量に関し、安全を確保できる。フードサプリメント中のビタミン類やミネラル類の最大安全量はEUの法律で設定されているが、精密な値はまだ確立されていない。FSAIは、フードサプリメント業界とともに、アイルランド国内で安全なビタミンおよびミネラルサプリメントが市販されるようにするためのガイダンスを策定する活動を行っていく。報告書は、「フードサプリメント中のビタミン類やミネラル類の安全性(The Safety of Vitamins and Minerals in Food Supplements)」という題名で、FSAIのウェブサイトから閲覧可能になっている。
FSAIの科学委員会の助言には、フードサプリメントに使用する栄養素の量が安全であることを業界が保証できるようにするのに役立つ、新しいリスク評価アプローチが含まれている。それによれば、こうした微量栄養素について、それぞれの年代のそれぞれの性別において安全な最大食事摂取量が設定される。この情報は消費者にとって非常に有用なものとなり、過剰なビタミン類やミネラル類の量を良く理解するのに役立つであろう。この報告書では、ビタミン類やミネラル類の安全量が年齢や性別によってどのくらい違うかについての概要も明示している。
FSAIの最高責任者であるPamela Byrne博士は、以下のように述べている。「食品法の下では、アイルランドで初めて市販される全てのフードサプリメントは、FSAIに届け出なければならないことになっている。アイルランドの市場に置かれFSAIに届け出されるフードサプリメントの数は年々増加しており、フードサプリメント業界は、この新しいガイダンスを理解し、それに従って製品の組成を改善し、消費者が理解しやすい表示を付す義務がある。
「FSAIに届け出られるフードサプリメントの数は、2007年に700件だったものが2017年には2,500件になり、300%を超える伸びを示している。それらの届け出られたもの中で、消費者の安全にリスクを生じるかについてより詳細な検査が求められる製品の数も増え続けており、そうしたフードサプリメントの95%以上が、ビタミンやミネラルの含量が高かったために詳細検査が必要となった。我々は、これらの製品の数の増加に懸念を抱いている。特に、子供、妊婦、高齢者などのアイルランドの住民の中の脆弱な集団における安全性が懸念される。この包括的な報告書に基づいて、FSAIは業界に対し、年代や性別といったグループごとに製品に求められる栄養素の量に関し、確固としたアドバイスとガイダンスを提示できる。」
「フードサプリメントを摂取することに関して一般住民に我々がアドバイスすることは、健康なライフスタイルを維持するためにはフードサプリメントは必要ないということである。FSAIは、果物や野菜を多く含むバランスの良い食事と十分な運動を推奨している。FSAIが推奨しているフードサプリメントは、妊娠活動を行っている女性に対する一日400 µgの葉酸と、生後12ヶ月までの全ての新生児に対する一日5 µgのビタミンD3だけである。
FSAI科学委員会の議長であるAlbert Flynn博士は、次のように述べている。「どのようなビタミンやミネラルを摂取するにせよ、その人にとって安全な量は、年齢や性別によって異なる。」
アイルランドの住民は、多様でバランスの取れた食事が間違いなく健康にとって重要であることを益々認識するようになってきている。しかし、食事にフードサプリメントを取り入れている人もいて、それも”多いほど良い”という誤った思い込みが為されている場合もある。ビタミン類やミネラル類の中には、多く摂りすぎると健康に有害影響を及ぼし得るものがある。これが特に起こりやすいのが青少年で、彼らは、成人と栄養要求が異なり、かつ体格が小さいにもかかわらず、フードサプリメントからビタミン類やミネラル類を成人と同量摂取してしまうことがある。アイルランドの食事の実態に関する最近の調査では、ほとんどの住人が十分な量を超えるビタミン類やミネラル類を通常の食事だけで摂取できていることが分かっている。」
FSAIは、この報告書の中で、EUでフードサプリメントの成分として許可されている30種類のビタミン類やミネラル類全てをレビューしている。それらのうち21種類の栄養素については、耐容上限摂取量が設定されており、過剰摂取した場合の有害影響の概要も報告書に収載している。例えば、継続的に過剰量のビタミンDを摂取した場合、ビタミンD中毒(ビタミンD過剰症)となり、高カルシウム血症が引き起こされ、そこから特に腎臓に関連した合併症が生じる場合がある。FSAIは、製品が安全かどうか、市場の全ての食品が安全でなくてはならないという規則が守られているかどうかを評価するため、フードサプリメント中のビタミン類やミネラル類の量を検査することも含め、市場の監視を続けていく。
FSAIは、フードサプリメント業界の代表者と協力してガイダンス文書を作成して、業界がこの報告書の内容と知見、および自分達の製品に関連して取るべき行動について理解を深める支援とするつもりである。
FSAIの科学委員会の研究およびこの報告書の内容の審議には、ヨーロッパの専門科学委員会などの研究成果のレビューが含まれている。例えば、欧州食品安全機関や北米医学研究所の研究成果などであり、これらの機関は、栄養素の上限摂取量に関するガイダンスを提供している。この報告書を担当したFSAIの作業部会は、ビタミン類やミネラル類の分野に通じたアイルランドおよび英国の専門家学者で構成された。

備考:
フードサプリメントとは、栄養学的あるいは生理学的効果を有する微量栄養素や他の化学物質の高濃度供給源であり、その目的は、通常の食事を補完することである(指令2002/46/EC)。
2002年、EU食品法は、フードサプリメントの規制を導入した。この法律の中に、フードサプリメント中のビタミン類やミネラル類の最大安全量設定が盛り込まれたが、それらの値はまだ確立されていない。EU加盟国のうち何ヵ国かは、管轄領域で市販されているフードサプリメント中のビタミン類やミネラル類のいくつかについて、最大安全量を設定するための法整備やガイダンス策定を国レベルで行っている。
様々な集団を対象としたフードサプリメント中のビタミン類やミネラル類の安全性評価が、耐容上限摂取量(UL)と呼ばれる最大安全量を用いて実施されている。ULは、フードサプリメントが摂取対象者としている集団に対しての値である。ULは、欧州食品安全機関などの国際的な科学団体により確立されており、ある栄養素をあらゆる供給源から長期にわたり毎日摂取しても、ヒトの健康への有害影響のリスクが生じる可能性が低いと判断される最大量である。

◇フードサプリメント中のビタミン類やミネラル類の安全性
The Safety of Vitamins and Minerals in Food Supplements
https://www.fsai.ie/vitamins_minerals_supplements.aspx
○ 助言(Recommendations)
1. この報告書に示された耐容上限摂取量(ULs)と95パーセンタイル摂取量を、アイルランドの市場に置かれるフードサプリメント中のビタミン類やミネラル類のリスク評価に用いるべきである。
2. リスク評価は以下のように実施されるべきである:
製造者の指示に従って摂取した場合、フードサプリメントに由来する微量栄養素の一日量(測定値)を、食事(フードサプリメントを除く)由来の、摂取量が最も多い群(95パーセンタイル)における当該微量栄養素の通常一日摂取量に加えた値が、そのフードサプリメントが対象としている集団に対するULを超えないこと。
3. FSAIは、フードサプリメントや栄養強化食品からの摂取を含め、各集団におけるビタミン類やミネラル類の摂取量を継続して監視すること。