食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 新しい臨床試験によると、コオロギを食べることはお腹に良いかも

Eating crickets can be good for your gut, according to new clinical trial
3-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/uow-ecc080318.php
Scientific Reportsに発表された、18-48才の20人の男女に朝食に粉末コオロギ25gを2週間食べてもらったクロスオーバー試験。血液と便を調べている

  • 熱波と健康

Heatwaves and health
The Lancet Editorial|
Volume 392, ISSUE 10145, P359, August 04, 2018
世界中で記録的暑さが報告され熱中症患者が多数出ている。気候変動により熱波はますます激しく頻度が高くおこるだろう。現在熱波には定義はなくその脅威への理解も乏しい。これを機会に気候変動の健康への脅威を認識しさらなる温室効果ガス排出抑制対策等を。
原子力以外の発電のリスクって過小評価されてるよね)

  • 甲状腺障害流行の普通でない原因

An unusual cause of epidemic thyrotoxicosis.
Wartique L, , et al.,
Acta Clin Belg. 2017 Dec;72(6):451-453
4人の患者が突然の激しい頭痛と頻脈に襲われ血中TSH濃度が低くT4濃度が高かった。これは甲状腺ホルモン摂取による中毒で、原因は牛の甲状腺を含む首の部分の肉を食べたことだった。

  • 魚の胆嚢を食べたことによる急性腎障害:カンボジアからの症例

Acute Kidney Injury due to Fish Gallbladder Ingestion: A Case Report from Cambodia.
Sovann K.
Blood Purif. 2017;44 Suppl 1:22-25.
22才の女性がニキビの自己治療方法として魚の胆嚢を食べて水様便、腹痛、嘔吐、尿減少などで緊急血液透析を行った。アジアでは魚の胆嚢中毒は頻繁にある。
(中毒の報告は多いのだけれど民間薬とみなされている?)

  • 放し飼いの鶏卵中ハロゲン化難燃剤濃度の変化とヒトの食事暴露評価:中国南部のかつて電子廃棄物リサイクルが行われていた場所でのケーススタディ

Level changes and human dietary exposure assessment of halogenated flame retardant levels in free-range chicken eggs: A case study of a former e-waste recycling site, South China.
Huang CC, et al.,
Sci Total Environ. 2018 Sep 1;634:509-515.
Baiheの村での2013年と2016年の比較。改善しているがまだ懸念材料である
(村の人が家の周辺で放し飼いにして自分たちで卵を食べているという状況なので摂取量推定は多い。地産地消はハイリスク、の典型的な例。そして鶏卵の汚染物質は放し飼いにすると一般的に増えるのでオーガニックの卵のほうが汚染物質は多く含まれる。)

Peak AAA fatty acid homolog contaminants present in the dietary supplement l-Tryptophan associated with the onset of eosinophilia-myalgia syndrome.
Klarskov K, et al.,
Toxicol Lett. 2018 Sep 15;294:193-204.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378427418302236?via%3Dihub
1989年の昭和電工トリプトファンによるEMS発症に関して。
1989年にダイエタリーサプリメントとして販売されていたL-トリプトファンの使用に関連してEMSアウトブレイクがおこった。最終的に米国だけで1500人以上の患者、38人が死亡した。EMSはカナダ、ドイツ、ベルギー、フランス、イスラエル、日本でも報告された。米国のその後の解析で問題のL-トリプトファン昭和電工が製造した製品が原因であることが示唆された。それはBacillus amyloliquefaciensの組換え系統を用いて発酵により製造されたもので、HPLCとLC-MSの分析で60以上の汚染物質が見つかっている。そのうちEMSとの関連は6種類とされ、ピーク UV-5, E, 200, C, FF およびAAAと名付けられた。それら全ての構造がわかっている。EMSと最も関連が深いのはピークAAAで、これは二つの構造異性体である。
EMSの原因としてトリプトファンそのものが原因である説やキノリン酸原因説などが提唱されてきたがが、汚染物質説が1981年のスペイン毒油症候群(TOS)との関連で支持される。TOSはスペインの路上営業者がオリーブオイルとして詐欺的に販売したアニリンを混入した調理油が原因の好酸球増加を伴う病気で症状はEMSに類似する。2年で2万人以上の患者、300人以上が死亡した。
この研究では発酵過程で生じる一連の脂肪酸縮合産物類似体の構造を同定し、それがTOSの原因とされる汚染物質と構造的に類似することについて議論した。
トリプトファンと細胞膜脂質の反応でできるものが脂肪酸アニリンの反応でできるもとに類似。脂肪酸と複素環の縮合物が構造的にプロスタグランジンに類似していて好酸球を呼び寄せる?というメカニズムを示唆。そして30年も前の事件がまだ決着していないのだが、確実に言えることは健康食品のリスクは高いということ。)