- 視点:栄養疫学研究改訂の課題
The Challenge of Reforming Nutritional Epidemiologic Research
John P. A. Ioannidis August 23, 2018
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2698337
オープンアクセス
栄養研究者の一部と一般の人々のうちの多くが、しばしば栄養要因の疫学的関連を因果関係だとみなしそれを根拠に公衆衛生政策やガイドラインを作っていいと思っている。しかし現れつつある栄養疫学の姿は科学の基本原則にみあわない。この分野は過激な再構築が必要である。
近年更新された前向きコホート研究のメタ解析によると、ほぼ全ての食品は死亡リスクと統計学的に有意な関連がある。ビタミンなどの重要な栄養素の相当な欠乏、食品の極端な過剰摂取、カロリー過剰による肥満は確かに死亡リスクを増やすだろう。しかし特定の栄養素や食品の摂取量が少し違うことや、同じカロリーの異なる食事パターンが、生存率にどこでも劇的に影響するだろうか?
コホート研究からメタ解析した根拠を寿命全体にわたる因果関係だと想定して、基本の寿命を80年として、毎日ヘーゼルナッツを食べると寿命が12年延びて、コーヒーを毎日3カップでも12年延びて、みかんを1日一個で5年延びる。逆に卵を1日1個食べると6年寿命が短くなり、ベーコン2マイだと10年も短く、タバコより悪い。これらは本当か?著者らはこの知見を報告するのにしばしば因果関係を表現する言葉を使っている。疾病負担研究やガイドラインもこれらの推定を保証し、著者が欠点を追加していたとしても結果はしばしばメディアで因果関係として報道される。
こうした食事にまつわるリスク又はベネフィットの疑わしい推定は、ほぼ間違いなくこの種の研究におけるバイアスの積み重ねの大きさと膨大な調整しきれない交絡要因と選択的報告を反映しているだろう。栄養に関する変数のほぼ全てが相互に関連があり、従ってある一つの変数が健康に影響するとしたら、他の多くの変数もデータが多くなれば有意な関連があるだろう。研究がますますビッグデータを使うようになると、ほぼ全ての栄養上の変数が、ほぼ全ての結果に関連するだろう。
栄養研究は人々の科学についての認識に悪影響を与えてきた可能性がある
(いろいろ略。是非読んで。特に因果関係と相関関係をごっちゃにして断定する部分のある津川本の信者は。)
- 魚油は糖尿病の人の心臓発作や脳卒中を予防しない
Fish oils do not prevent heart attack or strokes in people with diabetes
26-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/esoc-fod081618.php
ASCEND試験の結果が欧州心臓学会とNew England Journal of Medicineに発表された。
2005-2011年の間に15480人の糖尿病患者に魚油サプリメント(1日1g)を無作為に割り付けた研究。平均7.4年のフォローアップ
- 退院後の経口抗血液凝固剤の延長使用は非致死性の血栓を減らす
Extended use of oral anticoagulant after hospital discharge reduces non-fatal blood clots
26-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/esoc-euo081618.php
MARINER試験の結果が欧州心臓学会とNew England Journal of Medicineに発表された。
- 血圧とコレステロールを下げる薬は10年後も生存率を改善し続ける
Blood pressure and cholesterol lowering drugs continue to improve survival after a decade
26-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/esoc-bpa081618.php
ASCOTレガシー試験の結果が欧州心臓学会とLancetに発表された。
(サプリメントと違って薬は効く)
- 減量薬は心血管系イベントを増やさない
Weight loss drug does not increase cardiovascular events
26-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/esoc-wld081618.php
CAMELLIA-TIMI 61試験の結果が欧州心臓学会とNew England Journal of Medicineに発表された。ロルカセリン。EUでは認められていないがFDAが2012年に認可していてその市販後安全性調査の一部でもある。参加者12000人でBMIの中央値は35 kg/m2。最初の1年での減量はロルカセリン群4.2kg、プラセボ1.4kg。
(プラセボでもライフスタイルの改善は指導しているのだが・・BMI 35で医者に通って薬飲んでも痩せる気がないんだよね)
- 毒蛇による被害の世界的課題に対応する
Addressing the global challenge of snake envenoming
Geoffrey K Isbister, Anjana Silva
THE LANCET, Volume 392,ISSUE 10148, P619-620, August 25, 2018
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31328-X/fulltext
毒蛇に噛まれる可能性の高い地域:ホットスポットの世界的地図作製
Vulnerability to snakebite envenoming: a global mapping of hotspots
Joshua Longbottom, et al.,
THE LANCET, Volume 392,ISSUE 10148, P673-684, August 25, 2018
コメント及びペーパーオープンアクセス
ヘビの住む地域で、抗毒素が無く医療資源が乏しいあるいは医療にアクセスできないため多くの被害が出ていると推定されるが15年前に注意換気したものの見逃されている
- フィールドからの報告:はしかアウトブレイク−アラスカ 2017年5月−2017年7月
Notes from the Field: Mumps Outbreak — Alaska, May 2017–July 2018
CDC
Weekly / August 24, 2018 / 67(33);940–941
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/67/wr/mm6733a6.htm
自称ハワイあるいは太平洋諸島出身とするアンカレッジ住人7人のはしか症例が確認された。前年のはしかアウトブレイクでMMR接種を推奨したにも関わらずはしかが拡大し続けている。患者の多くが予防接種を推奨される回数していない
(アラスカに反ワクチンの集団がいる?)
- 兵器となったヘルスコミュニケーション:ツイッターのボットとロシアの煽りがワクチン議論を増幅する
Weaponized Health Communication: Twitter Bots and Russian Trolls Amplify the Vaccine Debates
David A. Broniatowski et al., American Journal of Public Health DOI10.2105/AJPH.2018.304567
https://ajph.aphapublications.org/doi/10.2105/AJPH.2018.304567
2014年7月から2017年9月にオンラインで収集したワクチン関連メッセージのボットと平均的ユーザーの割合を比較した。ボットは反ワクチンメッセージを拡大しロシアの煽りは両側に極端で分断を促進する
- 世界は燃えている
A world on fire
23-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/nsfc-awo082318.php
NASAのワールドビュー。最も炎が集中しているのはアフリカで農業によるようだ。他の地域では北米は山火事、南米は山火事と人のおこしたものの両方。オーストラリアのいつもの山火事も今年は激しく長い
(地図。農業の環境破壊の大きさを視覚化。)
- リスクの低い甲状腺がんを「がん」と言わないことが治療の選好や患者の不安にどう影響するか
How not saying 'cancer' for low-risk thyroid cancer may affect treatment preferences, patient anxiety
23-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/jn-hns082118.php
JAMA Otolaryngology - Head & Neck Surgeryに発表された550人のオーストラリア男女のオンライン調査。がんという用語を取り除くと患者の不安が減って侵襲性の低い治療を考えるようになる可能性がある
- The Lancet:アルコールは毎年世界中で万人の死亡に関連
The Lancet: Alcohol is associated with 2.8 million deaths each year worldwide
23-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/tl-tla082218.php
・世界的には3人中1人が飲酒し、女性の2.2%と男性の6.8%が毎年アルコール関連の健康問題で死亡している
・アルコール使用は2016年の世界の早期死亡と障害の7番目のリスク要因で、15-49才にとっては主要死因である。この集団では結核、交通事故、自傷に関連する
・50才以上ではアルコール関連死の主要原因はがんである
・著者はアルコールに安全な量はないという。虚血性心疾患への良い影響は他の有害影響により打ち消される、とくにがん。
(プレスリリースがデータを含み長い)
新しい科学的研究:アルコールの安全な量はない
New scientific study: no safe level of alcohol
23-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/ifhm-nss082218.php
(別のところからのプレスリリース)
- アメリカ人の食事はどのくらい健康的?健康的食生活指数が答えを出すのに役立つ
How healthy is the American diet? The Healthy Eating Index helps determine the answer
23-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/e-hhi082218.php
Journal of the Academy of Nutrition and Dieteticsに最新版の健康的食生活指数(HEI)の説明が掲載された。2015-2020アメリカ人のための食事ガイドラインにあわせたもの。
栄養士は必修。モバイルやウェブ技術の進展とあわせて、将来的により正確な評価と助言ができるようになるだろうとのこと
- おなかの脂肪を減らす「ある奇妙な技」?心臓に健康的な食生活!
'One weird trick' to cut belly fat? Follow a heart-healthy diet!
23-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/wkh-wt082318.php
米国スポーツ医学会の公式雑誌ACSM's Health & Fitness Journal®に掲載された記事によると、インターネットであなたが見つけるだろう多くの宣伝とは違って、流行のダイエット法のどれもお腹の脂肪を特異的に取り除くのに役にはたたない。腹部脂肪を標的にした魔法のダイエット法や食品、栄養素、あるいは生物活性のある物質はまだない。しかし食物繊維の多い飽和脂肪の少ない心臓に健康的な食生活は腹部肥満の予防や減少のための良い方法である。
オープンアクセス
TARGETING ABDOMINAL OBESITY THROUGH THE DIET: What Does the Evidence Say?
https://journals.lww.com/acsm-healthfitness/Fulltext/2018/09000/TARGETING_ABDOMINAL_OBESITY_THROUGH_THE_DIET__What.8.aspx?PRID=ACSM_PR_082318
(緑茶および緑茶カテキンも根拠なし)