食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文

  • がん募金は詐欺師に餌を与えているのか?

Is cancer fundraising fuelling quackery?
12-Sep-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-09/b-icf091118.php
膨大な金額が根拠のない治療に使われているおそれがあるのでがんの治療費のためのクラウドファンディングサイトは厳しい吟味を
BMJに発表された数字によると、近年末期がん患者が代替療法をもとめてクラウドファンディングでお金を集めることが急増している。膨大な金額が根拠のない治療法に使われ、時に害すらある。そのためクラウドファンディングサイトは患者や寄付者が搾取されないよう監視を強化すべき、とフリーランスのジャーナリストMelanie Newmanが書く。
Good Thinking Societyの集めた数字では、2012年以降英国のクラウドファンディングサイトはがんの代替療法に800万ポンドを集めている。2016年は2015年の7倍の2300以上の募集があった。
英国で最も多いお金の使い道はドイツのHallwang Private Oncology Clinicへの旅行資金だが、この病院は一部の患者は病院の名前を騙ってお金を集めるだけで治療には来ていないという
(件の病院、ポーリングのメガビタミン療法とかやってる。ノーベル賞って宣伝。
YouTuberでも他の投げ銭システムでも、お金を出して他人に愚行をさせて楽しむ本物の悪人がいるような気がする。)

  • 砂糖錠剤は慢性痛患者の痛みを緩和する

Sugar pills relieve pain for chronic pain patients
12-Sep-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-09/nu-spr091218.php
脳の解剖学と心理学的特徴でプラセボのメリットが予測できる
患者をだます必要はない。Nature Communications
砂糖錠剤で痛みが減る人は感情を司る脳の右側が左より大きい、皮質感覚領域が大きい、情緒的自己認識をもち痛みに敏感で環境に気を遣う。
(これは砂糖玉ですよ、と言った上で出る効果をプラセボと言っていいのかどうか。)

  • 乳がん検診は死亡率を減らさない

Breast cancer screening does not reduce mortality
12-Sep-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-09/au-bcs091218.php
International Journal of Cancer。デンマークのAarhus大学の研究者らが1987-2010年に乳がんになった30-89才のノルウェーの女性をフォローした研究によると、近年乳がんで死亡する女性は減っているがそれは検診と関係ない。「重要なことは乳がん検診に有用な影響が見つからなかったことである」とHenrik Støvringは言う。

  • ある種の環境汚染物質が腎臓の健康不良に寄与しているかもしれない

Certain environmental pollutants may contribute to poor kidney health
13-Sep-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-09/ason-cep090618.php
Clinical Journal of the American Society of Nephrology (CJASN)に発表されたPFASの悪影響を報告した論文のレビュー。
(こういう探し方してもあまり意味のある結果にはならない。)

  • プラスチックのBPA代用品は実験室のマウスに生殖上の問題を引き起こす

BPA replacements in plastics cause reproductive problems in lab mice
13-Sep-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-09/cp-bri090618.php
20年前、研究者らはたまたまプラスチックケージからBPAが溶出してマウスに影響することを発見した。その同じチームが今度はBPAフリーケージに使われている代用品がBPAと同様の問題をおこすことをCurrent Biologyに発表した

Is exposure to lead, cadmium associated with reduced ability to see contrast?
13-Sep-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-09/jn-iet091118.php
約2000人の観察研究で、鉛ではなくカドミウム暴露がコントラスト感度の障害に関連することが示唆された。主なカドミウム暴露源は喫煙、食品では緑の葉物野菜、コメ、魚介類。
JAMA Ophthalmology

Newspaper reporting of NHS Cancer Drugs Fund misleading
13-Sep-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-09/s-nro091218.php
英国のNHS抗がん剤基金の新聞報道を解析したところ概ねポジティブだが、批判精神を欠き患者や社会への利益に比例しない
2010年から2015年の抗がん剤基金(CDF)の新聞報道を解析したところ、効果がないという根拠が積み重なっていたにも関わらず、ポジティブな報道がCDFの存続に寄与した可能性が高いことが示された。CDFを介して14億ポンド近くが使われたが現在はNICEに再編されている。メディア報道が人々の間の、がん患者にとって役にたつのは最新の高価な薬を与えることだという強力な認識形成に寄与しているだろう
Journal of the Royal Society of Medicine。

  • 欧州の大学研究者は臨床試験の90%の結果を報告しない

Natureニュース
Europe’s academics fail to report results for 90% of clinical trials
13 September 2018
https://www.nature.com/articles/d41586-018-06676-8
しかし企業が出資した試験は70%近くが1年以内に報告される
Ben Goldacre,らがBMJに報告。大学の報告の貧弱さの背景にあるのは悪意と言うより混沌、という。
企業はガイドラインを守っている、大学の研究者はそうした分野への知識が乏しく援助者がいない。そして一部の人たちは特定の治療法にイデオロギー的に関与していて都合の悪い知見は発表しない
(大手製薬会社と比べたら大学の研究者のほうが資金も知識も足りないのはしょうがない)