食品安全情報blog過去記事

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  • 食事と鬱についての観察研究への専門家の反応

expert reaction to observational studies on diet and depression
September 26, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-observational-studies-on-diet-and-depression/
Molecular Psychiatryに食事と鬱についての観察研究の系統的レビューとメタ解析が発表された
King’s College London精神医学心理学神経科学研究所NIHR臨床講師で南ロンドンとMaudsley NHS財団の理学療法部長Brendon Stubbs博士
これは重要で新しく質の高い研究で、我々全てに健康的ライフスタイルを薦めるさらなる推進力を加えるものである。これまで食べものが身体的健康に影響することは知られてきたが精神、特に鬱への影響は包括的に評価されてはいなかった。このしっかりしたメタ解析は地中海あるいは抗炎症食(つまり魚や豆やコメ、野菜、果物の多い食事)が将来の鬱症状発現を予防するかもしれないという興味深い根拠を提示する。しかし限界もある。一つ目は人々が実際に食べたものを正確に思い出すのは困難で、この研究は人々の思い出す能力に頼っている。二つ目は地中海食や炎症性の少ない食事をしている人たちは運動やタバコを吸わない、睡眠などの他の健康的ライフスタイル要因も同時に行っているあるいは肥満などの身体的健康問題が少ない傾向がある。著者らは一部を調整しているが全ての要因を考慮するのは困難である。三つ目は含まれる研究のほとんどが横断研究であり、著者らは縦断研究のサブグループ解析を行ってはいるものの、食事が原因であると明確に言うことはできない。最後に、研究により食事情報の収集や「鬱」の測定方法が極めてばらばらで不確実性が加わる。しかしシグナルは一貫しているように見える。
Glasgow大学代謝医学教授Naveed Sattar教授
良い食生活は鬱を予防するかもしれないが、この根拠は植物の多い食事が鬱予防になると証明する十分なものではない。これまでの根拠は単純に精神衛生状態の悪い人は食生活が悪いということを示している。
この系統的レビューは観察研究のみを対象にしたもので十分注意が必要である。関連が真かどうかを知るためには大規模RCTが必要でそのような試験を行うには相当な努力が必要であろう

  • ミツバチへのグリホサートの影響についての研究への専門家の反応

expert reaction to a study on the impact of glyphosate on honey bees
September 25, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-a-study-on-the-impact-of-glyphosate-on-honey-bees/
PNASに発表された研究がミツバチがグリホサートを飲み込んだ時の影響を調べている
Imperial College London進化生態学者Andres Arce博士
Mottaらはグリホサートを餌で与えたらミツバチの腸内細菌が変わるかどうかを調べている。細菌マイクロバイオームはミツバチの健康にたくさんの役割を果たしているのでマイクロバイオームに影響するどんな農薬でもミツバチの健康に間接的に影響する可能性がある。この研究ではグリホサート暴露でミツバチの微生物叢が変わる可能性があり、さらにそれが昆虫の病原体への感受性を上げることにより健康に影響するようであることを示した。また1日以上の長期間の暴露を検討することと多数のストレス要因を検討することの重要性を強調する。この研究は動物と微生物と複数のストレス要因の間のより複雑な相互作用を調べるようになってきた傾向の一部である
Sussex大学生物学教授Dave Goulson教授
近年腸内細菌が健康維持に重要であることがますます明らかになってきた。こうした細菌が広く使われている農薬に感受性であることは懸念である。現実世界でミツバチがどう暴露されるか不思議に思うかもしれない。グリホサートは植物を殺すので、花は死にミツバチにとっては興味がなくなる。それでもしばしばミツバチの食糧倉庫に検出される。
ミツバチを研究してきた我々はもう随分前にコロニーの健康はたくさんの相互作用するストレス要因に悪影響を受けると結論している。それは殺虫剤混合物、病原体、栄養不良などでそれに除草剤が加わったように見える
オーストラリアメルボルンRMIT大学化学准教授Oliver Jones博士
これはミツバチの腸内にいるある種の細菌(ミツバチマイクロバイオーム)へのグリホサートの影響を調べた極めて複雑な仕事である。著者らはグリホサート暴露がミツバチの腸内の細菌の種類を変えて、その変化が、病原体への感受性を上げる可能性があるのでミツバチの全体的健康に負の影響を与えるかもしれないと言う。
この仕事は新しいアプローチの興味深いものであるが、私に言わせると使ったグリホサートの濃度は高い。また暴露は比較的喚起間で観察された変化が短期的なものか長期にわたるのかはわからない。さらに農薬に暴露された大人のミツバチのうちたった20%しか回収されておらず残り80%への影響はわからない。
最も高用量のグリホサートに暴露されたミツバチでの影響がより低い濃度の暴露群より三日後ではるかに小さな影響しか示さないのは混乱する結果である。この影響が再現できることは示されているが説明はされていない。
この論文はグリホサートがミツバチの腸内細菌に干渉する可能性があることのみを示したもので、それが実際に環境中でおこっていることを示したものではないことに留意すべきだろう。オーストラリアなどではグリホサートは使われているがミツバチはうまくやっている。
従って簡単に言うと、私はこの仕事をミツバチの健康に関する面白い断片ではあるが全体像ではないと思う。

  • 「1080を投下した下流の水でも喜んで飲む」−Belinda Cridge

SMC NZ
‘I would be happy to drink the water downstream of the 1080 drop’ – Belinda Cridge
Published: 27 September 2018
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2018/09/27/i-would-be-happy-to-drink-the-water-downstream-of-the-1080-drop-belinda-cridge/
オタゴ大学の毒性学者Belinda Cridge 博士がHawke’s Bay Todayに書いている
「1080(フルオロ酢酸ナトリウム)に比べてたらもっと少ないデータと根拠で家庭や労働環境での使用を認められている化合物はたくさんある。これは国際規制の失敗ではなく、化学物質としての1080について我々がどれだけ知っているかを強調する。何十年にもわたる研究をとおして、我々はこの化合物の作用機序や分解産物、環境中での挙動などについて非常に良く知っている。初期に失敗したからこそより良い配送方法としてペレットが開発された。これにより鳥やその他の固有種が1080を食べる可能性が劇的に減った。」