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食品添加物・香料・加工助剤及び食品と接触する物質に関する科学委員会(AFCパネル)の香料に関する意見

Opinion adopted by the AFC Panel on 7 October 2004
19 November 2004
http://www.efsa.eu.int/science/afc/afc_opinions/698_en.html
香料として使われる物質及び食品中の香料成分、特にシアン化水素酸(HCN)の健康影響についての意見。
植物中のシアン発生性配糖体はHCNが放出されない限りは比較的毒性が低い。HCNは植物組織が壊れたり腸内細菌が持っているベータグルコシダーゼの働きで配糖体が酵素的に加水分解されることにより生じる。
HCNは経口投与では速やかに吸収されて前進に分布する。腸管から吸収されたHCNはより毒性の低いチオシアネートに代謝される。またビタミンB12や含硫アミノ酸と結合する経路もある。解毒が負荷を上回ると急性毒性が発現する。
加工植物摂取によるヒトでの中毒や慢性的神経学的影響が報告されている。急性症状は息苦しい・吐き気・嘔吐・目眩・頭痛・動悸・過呼吸・呼吸困難・徐脈・意識消失・痙攣・死亡である。
果物の仁などで死亡例がある。
慢性毒性では甲状腺機能の障害や神経傷害が報告されている。甲状腺障害は解毒代謝物であるチオシアネートによる。
キャッサバを食べる民族でHCNと神経障害や甲状腺腫瘍に関連があるとする疫学研究があるが環境因子や食事要因などの交絡因子が多く、適切な長期毒性試験はない。
限定的なデータではあるが英国では香料からの平均一日HCN摂取量は46microg/人、高摂取群(97.5パーセンタイル)では214 microg/人で、それぞれ0.8及び3.6microg/kg/dayに相当する。ノルウェイでは95及び372microg/人又は1.4及び 5.4microg/kg/dayである。
キャッサバは200g食べると60kgの成人で30microgHCN/kgの摂取量になる。JECFAによればこの量では急性毒性は生じない。市販のマジパンペーストで検出された最高量は20mg/HCN/kgであった。
委員会は現在の香料成分からのHCN暴露量は急性毒性を誘発することはないと考える。
慢性暴露に関してはNOAELやTDIを設定するには不十分である。