食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

天然ミネラルウォーターのウランレベルと乳児用ミルクを溶かすのに使うこと

URANIUM LEVELS IN NATURAL MINERAL WATER AND USE TO RECONSTITUTE INFANT FORMULA http://www.food.gov.uk/multimedia/pdfs/tox200527uranium.pdf
ウランは環境中に広く存在する金属元素で、地表水より地下水に多く含まれる傾向がある。その濃度は地域により異なる。ウランの重大な毒性は腎毒性で、WHOは腎毒性をエンドポイントにしたTDIから、飲料水中ガイドラインを設定している。
FSAは現在天然ミネラルウォーターは他の飲料水より溶解しているミネラルが多いため、乳児用ミルクを溶かすのには不適切であると助言している。乳児用ミルクは水道水又は飲料水基準に合致した水を使って溶かすべきだと助言している。しかしながらCouncil Directive 80/777/EECでは天然ミネラルウォーター製造業者に「乳児に適する」表示を許可する規定を設けている。英国ではそのような表示は許可されていないが、EU加盟の他の国からの「乳児に適する」というラベルのついたミネラルウォーターは自由に流通できる。英国では基準に合致した水について乳児用の表示を認めるための規制改正を準備中である。
現在ミネラルウォーターや温泉水、水道水のウラン濃度については規制値がないためFSAは2004年に瓶詰め水中のウラン濃度について調査を行った。その結果ある種のミネラルウォーターを乳児用ミルクを溶かすのに使った場合、WHOによるウランのTDIを超えることがわかった。そのためCOTが意見を求められた。
天然に環境中に存在するウランは+2, +3, +4, +5 及び +6価で主にUO2+の+6価である。放射性核種としては234U、235U、238Uの3種があり、99%以上が238Uである。放射能による影響についてはここでは問題にしない。ウランに栄養学的機能は知られていない。
ウランの毒性は近位尿細管におけるナトリウム輸送依存性及び非依存性ATP輸送の阻害とミトコンドリアの酸化的リン酸化阻害による傷害である。他に生殖毒性・発生毒性が報告されている。WHOは最も感受性の高い毒性指標として腎毒性を選択し、雄ラットの91日間試験におけるLOAEL 0.06mg/kg bw/dayを元にTDI 0.6microg/kg bw/dayを設定した。さらにTDIの80%を飲料水にあてて体重60kgの成人が1日2Lの水を飲むとして飲料水中ガイドライン値15 microg/Lを設定した。
FSAのミネラルウォーター調査結果からは、体重4.5kgの乳児が1日700mLのミルクを飲むと仮定した場合の暴露量は、総TDIで17検体、飲料水TDIで23検体がWHO基準を超える。(超過しているブランドの水については個別に表に記載してある)
COTはこのWHOのTDIについてどう考えるか、乳児についても適用できるか、等の意見を求められている。



Biotechnology and Biological Sciences Research Council (BBSRC) http://www.bbsrc.ac.uk/Welcome.html
(英国の基礎的戦略的生物学研究出資機関)