食品安全情報blog過去記事

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トランス脂肪:「恐怖」の解剖

Trans Fats: Anatomy of a Scare
Elizabeth M. Whelan, Sc.D., M.P.H.
December 6, 2006
http://www.acsh.org/healthissues/newsID.1427/healthissue_detail.asp
The Americanに掲載された記事。
ニューヨーク保健省のトランス脂肪使用禁止票決に関して、メディアや消費者の反応と科学者の対応を記述。
近年の米国人のトランス脂肪摂取量は総カロリーの3-4%で、最近のトランス脂肪追放活動で減少傾向にある。1990年代初頭までは、飽和脂肪を含む牛脂の代わりにトランス脂肪を含む部分硬化植物油を使うのは健康に良いと一般的に考えられていた。最近になってトランス脂肪は善玉コレステロールを減らし悪玉コレステロールを増やすことがわかってきた。
不確実性はあるが、全てのトランス脂肪を不飽和脂肪に置換できれば理論的には心臓発作を3-6%減らせると推定されている。しかし現実には全てを不飽和脂肪で置換するのは困難で、飽和脂肪に置換されることもあるため影響はさらに小さいだろう。トランス脂肪反対活動家はトランス脂肪禁止により全米で24万人の冠動脈系心疾患による死亡が予防できるとしているが、FDAの推定では新しい規則により全米で240-480人の冠動脈系心疾患による死亡が予防できると推定している。
心疾患のリスク因子の全体的削減のために推奨するべきことは、禁煙(タバコを吸い始めない)・血圧測定・飽和脂肪とトランス脂肪の両方を削減して不飽和死亡を摂ることである。また高コレステロール血症の患者はスタチン系の薬剤が適切である。
一方メディアの報道ではトランス脂肪は「食品中の最も危険な成分」「毒」「ゴミ」
「実験室で作り出されたフランケンシュタインのような怪物」「トランス脂肪は赤ちゃんを殺す!」「(トランス脂肪を含む食品は)逮捕されないテロリストが販売している」「アルカイダより多くのアメリカ人を殺している」とされている。
何故これだけトランス脂肪に関する事実と一般の認識が違うのか?
一つは食品は常に感情的な問題になりやすいこと、二つめは消費者が肥満とトランス脂肪の問題をごっちゃにしていること、三つ目はトランス脂肪フォビアはより広い食品産業批判の一部であること、四つ目は栄養学や公衆衛生の主流専門家がトランス脂肪に関する議論を忌避したためにバランスの取れた報道がなされなかったこと、である。



RSSL Food e-news: EDITION 315: 29 NOVEMBER - 06 DECEMBER 2006より
http://www.rssl.com/OurServices/FoodENews/Newsletter.aspx?ENewsletterID=186