食品安全情報blog過去記事

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色素と多動

Colours and hyperactivity
Andrew Wadge
http://www.fsascience.net/2007/09/06/colours_and_hyperactivity#comment
9月12日付けコメント
コメントしてくれた人たちに感謝する。これまでにない、素早いたくさんのコメントがあったため他のことが考えられない。子どもの食べるものを変える方法や多動への影響など寄せられた心配や意見はもっともである。
大事なのは科学が正しいかどうかを確認することだけではなく、科学を伝える際に心をつかむことだと思う。
明日我々は食品企業や消費者の代表者と会合を持つ。そこで企業と今回の研究で使用された色素類についてどう対応するかを検討する。これにより人々の懸念の一部が幾分解消されることを希望する。
ブログに寄せられたコメントを読むと同時に、私はここ数日間のメディア報道をフォローしている。コメンテーターが、何故我々が添加物を使用禁止にしないのかと言っているのを聞いた。FSAの長官Deirdre Huttonが土曜日のFinacial Timesで明確に述べたように、我々は公衆衛生上明白なリスクがないのに何かを単純に禁止にすることはできない。
一部に何故我々が研究対象を保存料の安息香酸と6つの添加物に限定したのかとの疑問がある。これはこれらの色素が歴史的に子どもの行動への影響を懸念する声が大きかったからである。また研究が始まった時点で子ども向け商品に多く使われていたからである。もしもっとたくさんの数の添加物を検査するとしたら、試験対象の家族に大きな負担となり、とても実行可能とは思えない。
この問題は先週論文が発表されてから速度を増している。我々は欧州委員会やEFSAに緊急に対応するよう要請している。またFSAの運営委員会も来週の公開会合で議論する。


(注:
この研究の詳細技術報告書は以下
2007年9月10日改訂版
http://www.food.gov.uk/multimedia/pdfs/additivesbehaviourfinrep.pdf
PDF 188ページ

Lancetが読めない人はこちらをどうぞ。こっちの方が詳しいけど。
当然のことながらベースラインスコアでは男の子の方が多動傾向、とか、先生や第三者の観察者のスコアに比べて保護者のスコアの動きが際だつことなどがわかる。
ちなみに前の論文は
The effects of a double blind, placebo controlled, artificial food colourings and benzoate preservative challenge on hyperactivity in a general population sample of preschool children
http://adc.bmj.com/cgi/content/full/89/6/506
この研究では保護者の評価で「著しいプラセボ効果」が証明されている。
「添加物の影響」というのはプラセボ効果に比べると無きに等しい。それでも影響があったと著者が主張しているところに疑問を感じる。心理学とはそういうものなのか?

研究を主導したJim Stevenson教授(心理学)のサイトはこちら
http://www.psychology.soton.ac.uk/people/ShowProfile.php?username=jsteven

今後の実験に関しては、数値の意義がよくわからないので、陽性対照が欲しい。例えば食品中に良く入っていて興奮作用があることがわかっているカフェインならどれくらいの量でどれくらいスコアが上がるのか、とか。もっとも一時的影響であるためこのプロトコールではダメだろうけれど。いずれにせよこれだけでは何も言えない。)