食品安全情報blog過去記事

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健康に関する研究を解釈する:科学委員会はジャーナリスト向けにTipsを提供する

Interpreting Health Studies: Science Panel Offers Tips for Journalists
October 29, 2007
http://www.acsh.org/news/newsID.1630/news_detail.asp
健康に関する研究の誤った解釈が広がっている。特に相関関係と因果関係を混合して健康に関する助言に混乱と不信を招いている。
ACSHは新しい出版物「相関関係と因果関係を区別する:ジャーナリスト向けの資料」において、科学研究を解釈する時の基本的問題と落とし穴について説明している。このペーパーはジャーナリストや消費者が科学研究を理解するための助言を提供するものである。
ニュース報道にはいろいろな食品や薬品や環境化学物質やサプリメントのリスクやベネフィットに関する見出しが溢れている。しかしある暴露による健康影響の因果関係とされるものはしばしば矛盾するもので時間とともに変わる。
ACSHの報告書は、科学者が暴露による健康影響を探るときに使ういくつかの研究方法について説明している。さらに暴露と健康影響の相関関係が真の因果関係であるかどうかを区別するための重要な判断基準を提示している。例えば喫煙を肺ガンは因果関係であるが、マッチを持っていることと肺ガンは単なる相関関係である。最も使いやすい判断基準には
・ 時間:因果関係があるなら影響より先に原因があるはず
・ 強さ:相関関係が強ければ強いほど因果関係についての信頼性は高い
・ 用量反応性:暴露量が増えれば反応が多くなる場合にはそうでない場合より因果関係への信頼性は高い
・ 一貫性:繰り返し、異なる研究者が、異なる場所や環境・時期で関連が見られる場合には因果関係の可能性が高い
・ 生物学的妥当性:疾患や健康に関する生物学的知識と一致している場合には因果関係の可能性が高い
結果の重要性に関する軽はずみな楽観主義(注:信頼性の低い研究結果をもとに○○の原因は△△だ、と報道すること)は消費者に科学的根拠への不信や科学全体の無視をもたらす。不幸なことに、拡大解釈や誇張により、消費者は害のない暴露量なのに危険だと信じ込んだり、逆に危険だったり効果のないな商品を有効だと思ったりする。

PDF版 24ページ
Distinguishing Association from Causation:A Background for Journalists
http://www.acsh.org/docLib/20071029_AssociationCausation.pdf
ジャーナリスト向けに、報道する際の注意点として挙げられているのは
・ 研究の結論ではなく研究デザインに注意する。その実験はヒトのデータなのか、試験管内なのか?
・ 交絡因子について尋ねる。研究のバイアスやその他の弱点を明らかにする。
動物実験については精査する。きちんと対照群が設定されているか、方法論は広く受け入れられているものか、ヒトのモデルとして適切か、濃度は、など。
・ 実験は確かなものか。ピアレビューのある科学雑誌に発表されているか、まともな研究機関に所属していない著者の研究には取扱注意。
・ 文脈や解析を紹介する。先行研究や関連する研究との関係で紹介する。
・ 著者自身による拡大解釈に注意する。研究者は自分自身の仕事をしばしば拡大解釈する。関連分野の他の研究者に尋ねると弱点がわかるかもしれない。
・ 未知の部分を説明したいという誘惑に抗う。人間は不確実なことを嫌う。何かがおきたときに理由がわからないと落ち着かない。そのように説明したくなるのが自然である。
・ あなたの知性を使う。信じられないような発見については信頼性はどうだろうというのが最初の質問であるべきである。