食品安全情報blog過去記事

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ファクトシート:ニューヨーク市の学校の建物のPCB

Fact Sheet: PCBs in New York City School Buildings
April 2008
http://www.nyc.gov/html/doh/html/epi/pcb.shtml
地元新聞社の検査で一部のニューヨーク市の学校の建物の外側のコーキング(水漏れ防止材)からPCBが検出されたとされる。高濃度のPCB暴露は健康に悪影響があるため、生徒や保護者が心配になるのも理解できる。しかしPCBがあるからといって必ずしも健康に悪影響があるわけではない。傷のない建物のPCBは
通常暴露源にはならないし健康影響もない。
PCBとは何か?
PCBは広く土壌や空気や食品中に存在する人工物質である。1977年以前に建材や電気製品に広く使われていた。その後使用されていないが古い家や学校や病院や事務所のビルのコーキング剤やシーラント中に検出される。我々の環境中のPCB濃度は時間とともに減少しているが、築30年以上の建物にはPCBが含まれる
可能性がある。
PCBの健康影響は?
われわれのほとんどは体内に幾分かのPCBを持っているが、そのせいで健康に問題が出ている人はほとんどいない。しかし高濃度暴露は危険である。職業暴露や事故でPCBに大量に暴露されるとニキビが出たり皮膚が赤くなったりする可能性がある。PCBは実験動物にある種のがんを誘発し、高濃度ではヒトでもがんを誘発する可能性がある。また妊婦とその子どもの研究では母親の高濃度PCBは子どもの体重や短期記憶や学習に関連する可能性が示唆されている。
人々はどのようにPCBに暴露されるか?
ほとんどの人は体内にPCBを持っているが主な暴露源は食べ物である。魚や肉やミルクにはごく微量のPCBが含まれる可能性がある。また汚染されたものを取り扱ったり汚染された空気や埃を吸うことによっても暴露される。このような暴露リスクが高いのはPCBを含む製品を修理したり分解したりする職業の人であ
る。室内空気は一般的にはPCB暴露源とはならず、室内空気の汚染源としてコーキング剤はあまり重要ではない。
コーキング剤のPCBへの暴露について知られていることは?
PCBは1950年から1977年にかけてコーキング剤や弾性のあるシーラントに使用されていた。汚染されたコーキング剤が壊されたり劣化したりするとそこから出るダストにPCBが含まれる可能性がある。こうしたダストを吸入したり、特に子どもが、汚れた手を舐めたりすると暴露する可能性がある。学校建物外壁の
シーラントが剥がれて周辺の土壌を汚染したため、子どもたちを守るために土を入れ替えたという報告がある。室内のコーキング剤も壊れてダストや空気のPCB濃度が上がる可能性はあるが、コーキング剤がPCB暴露源となることは滅多にない。室内空気や埃中のPCB濃度はコーキング剤の種類や室内の状況により様々であるが、健康リスクがあるほどのレベルになることはほとんどない。建物のコーキング剤とビル内で働く人々の健康影響の関係を示した研究はない。
今週ニューヨーク市の教育省は最近報道された各学校の室内空気についてたくさんの検査を行ったが、連邦規制値を超える値は見つかっていない。
PCBを含むコーキング剤を使っている建物でのPCB暴露を削減するためにできることは何か?
接触を避けること、掃除をすること、手を洗うこと。
PCB含有コーキング剤を壊す可能性のある修理をするときの注意は?
PCB含有コーキング剤を剥がしたり捨てたりする場合には周辺を汚染する可能性がある。窓を付け替えたりするようなことは訓練された労働者が行うべきである。
医療機関の検査でPCB暴露がわかるか?
血中・脂肪中・母乳中PCB濃度を測ることはできる。そうした検査は研究には有用であるが、ある人がいつどれだけ、どこから暴露されたのかを知ることはできない。また有害影響が出るかどうかもわからない。もし暴露によると思われるなんらかの症状があるなら医師に相談すべきである。