食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

食事由来アルミニウムの安全性 AFCパネルの意見

Safety of aluminium from dietary intake[1] - Scientific Opinion of the Panel on Food Additives, Flavourings, Processing Aids and Food Contact Materials (AFC)
15/07/2008
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1178720555279.htm
欧州委員会から、AFCパネルは全ての食事由来のアルミニウムの安全性についての科学的意見を求められた。特定集団においてPTWIを超過すると推定された場合には、暴露源についての詳細情報も必要とされた。
アルミニウムは天然に環境中に存在し、採鉱や工業でのアルミニウム使用などによる人間活動に由来する放出もある。各種のアルミニウム化合物が作られ、水処理や製紙、難燃材、充填材、食品添加物、色素、医薬品などいろいろな目的で使用されている。またアルミニウム合金は食品包装や調理器具を含む各種消費者製品に使用されている。
一般人における主なアルミ摂取源は食品である。飲料水由来は僅かである。さらに医薬品や消費者製品から暴露されることがある。
ほとんどの未加工食品は5 mg/kg以下のアルミを含む。5-10 mg/kgといったより高い濃度がパンやケーキやペストリー(最も高いのはビスケット)、一部の野菜(マッシュルームやホウレンソウ、ラディッシュ、swiss card、レタス、コーンサラダ)、果物、乳製品、ソーセージ、内臓肉、魚介類、砂糖の多い食品のベーキングミックス、多くの穀物や小麦粉にみられる。平均濃度が極めて高い食品は茶葉、ハーブ、ココア及びココア製品、スパイスである。
通常は食品と接触する物質からの溶出は総摂取量への寄与は非常に少ない。しかしながら酸と塩の存在下では、つまりリンゴのピューレやルバーブやトマトピューレや塩漬けニシンをアルミの鍋やボウルやホイルで使うと食品中アルミ濃度が増加する可能性がある。またトマトやピクルスや酢を含むファストフードでのアルミの容器やトレイの使用は若干アルミ濃度を増加させる可能性がある。
陰膳やマーケットバスケット及びトータルダイエット研究により全ての食品由来のアルミ摂取量が推定されている。非職業暴露成人の水や食品からの平均食事暴露量は国や、同じ国でも調査により、大きく異なる。1日あたり1.6-13 mg、すなわち60kgの成人で0.2-1.5 mg/kg体重/週まで異なる。体重あたりで計算すると子どもは一般的に食べる量が多いのでkg体重あたりのアルミ暴露量も多い。アルミ暴露量の個人差は非常に大きい。子どもと若い人における推定暴露量は97.5パーセンタイルでフランスの3-15才の0.7 mg/kg/週からフランスの 1.5-4.5才の2.3 mg/kg/週や英国の4-18才の1.7 mg/kg/週まである。一般人における食事からの主な暴露源は穀物穀物製品、野菜、飲料のようである。
0-3、4-6、7-9、10-12ヶ月の乳児においては乳児用ミルクとベビーフードからの暴露量はそれぞれ0.10、0.20、0.43、0.78 mg/kg/週と推定される。
また各種乳児用ミルクを飲んでいる3ヶ月児における摂取量推定を行った。牛乳ベースの乳児用ミルクを飲んでいる場合平均は最大0.6 mg/kg/週で、豆乳ベースの場合0.75 mg/kg/週である。高パーセンタイル集団では牛乳ベースが0.9 mg/kg/週、豆乳ベースが1.1 mg/kg/週になる。
また牛乳ベースの場合でも豆乳ベースの場合でも、一部のブランドで平均より4倍高濃度のものがあり、そのブランドだけを飲んでいる乳児の場合上述の推定値より4倍高くなることを注記している。
母乳で育てられている乳児の場合は推定暴露量は0.07 mg/kg/週以下である。
ヒトや実験動物におけるアルミニウムイオンの経口での生物学的利用度は飲料水の場合0.3%程度と推定されるが、食品や飲料ではそれより低く約0.1%と考えられている。しかしながら経口での食品からのアルミ吸収率は化学型により少なくとも10倍の差がある可能性がある。アルミ化合物の水溶性の程度はアルミニウムイオンの生物学的利用度を上げるようであるが、消化管中の食品成分が吸収を上げたり(クエン酸や乳酸やその他の有機カルボン酸錯化剤、フッ素)、下げたり(リン酸やケイ素やポリフェノール)する可能性がある。
吸収されるとアルミはヒトや動物の全身に分布し一部、特に骨に蓄積する。血漿中でのアルミの主な輸送体は鉄結合蛋白質トランスフェリンである。アルミは脳や胎盤や胎児に到達しうる。
アルミは尿に排出されるまで各種臓器に長期間滞留する。齧歯類よりヒトの方が長期に滞留するようであるが、齧歯類からヒトの外挿を行うための情報はほとんどない。
高濃度暴露では一部のアルミニウム化合物はin vitroでDNA傷害を誘発し、in vivoでは間接的メカニズムでDNA傷害を誘発するが、AFCパネルは食事由来のアルミニウム暴露では関連性はないと考えた。
アルミニウム化合物の発がん性データは限られている。最も新しい、マウスに高濃度の硫酸アルミニウムカリウム(カリミョウバン)を混餌投与した試験では発がん性を示唆する徴候は見られていない。全体としてAFCパネルは食事由来のアルミニウムにヒト発がん性はないと結論した。
アルミニウムは高濃度で長期間非経口暴露された透析患者に神経毒性がある。 アルミニウムがアルツハイマー病や関連神経変成疾患に関連するという説があるが、これらの仮説には意見が分かれる。入手できる科学的データに基づき、AFCパネルは食品からのアルミニウムはアルツハイマー病のリスクとはならないと結論した。
一部のアルミ含有化合物はマウスやラットで神経毒性がありイヌの男性生殖機能に影響する。さらにマウスの母親への暴露で胎児毒性がありマウスとラットの生まれた子どもの神経系発育に影響する。アルミを含む食品添加物についての毒性データは極めて少ない。そのためAFCパネルはこうした影響をTWI設定に用いるのが賢明であろうと考えた。入手できるデータには多くの欠点があり、用量相関性がわからない。従ってAFCパネルはマウスやラットやイヌにおける経口投与のいくつかの研究を組み合わせて評価を行った。これらの研究のうちLOAELは神経毒性については52、精巣毒性については75、胎児毒性については100、神経系発達については50 mgアルミニウム/kg体重/日であった。NOAELについてはそれぞれ30、27、100及び10-42 mgアルミニウム/kg体重/日であった。
アルミニウムは蓄積する傾向があるため、耐容一日摂取量TDIより耐容週間摂取量TWIを設定する方が適切であると考えた。上述の研究の複合的結果から、AFCパネルはTWIを1 mgアルミニウム/kg体重/週と設定した。
一般人の食事からのアルミの推定暴露量は平均で0.2-1.5 mg/kg体重/週で、多い人では2.3 mg/kg体重/週になる。従ってヨーロッパ人の相当の割合がTWIを超過していると思われる。主な暴露源は穀物穀物製品、野菜、飲料、一部の乳児用ミルクのようである。
ヒトの食事研究のデザインと使用した測定方法のため、特定の食品や加工方法などの寄与について結論することはできない。従って詳細な暴露源解析は不可能である。