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パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)及びそれらの塩 CONTAMパネルの意見

Perfluorooctane sulfonate (PFOS), perfluorooctanoic acid (PFOA) and their salts Scientific Opinion of the Panel on Contaminants in the Food chain [1]
21/07/2008
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902012410.htm
パーフルオロアルキル化物質(PFAS)は、温度・化学・生物安定性の高い中性及び陰イオン性界面活性剤からなるオリゴマーやポリマーを含む多様なフッ素化合物の集合名詞である。パーフルオロ化合物は通常疎水性であるが同時に疎油性のため、難分解性塩素化合物のように脂肪組織に蓄積することはない。その中の重要なサブグループがPFOSやPFOAの属するパーフルオロ有機界面活性剤である。
現在検出方法はLC-MS/MSであるが、GC-MSも前駆体検出には使われる。こうした方法による食品からの検出報告は少ない。適切な分析データがないため、暴露量推定には多くの仮定が用いられた。従ってこの意見で示された食品中の量や暴露量は指標とすべきではない。
PFOSやPFOAやその他のパーフルオロ化合物は工業や消費者用に広く使われている。布地やカーペットの防水・防汚加工、食品用紙製品の油耐性加工、消化剤、採鉱や油井界面活性剤、床磨き、殺虫剤の製剤用などである。多様なパーフルオロ有機化合物が環境中に広く検出されている。

PFOS
ヨーロッパでの食品中PFOSの分析結果は限られている(主に魚)。PFOS濃度は通常PFOA濃度より高く、肝臓の濃度が身の濃度より高い。PFOSは魚に蓄積することが示されており、速度論的生物濃縮係数は1000-4000と推定される。魚での50%クリアランス時間は100日程度と推定されている。
データは比較的汚染地域のものがあり過剰推定である可能性が高いが、ヒトのPFOS暴露源としては魚が重要であるようだ。ヨーロッパでは他の食品については信頼できる指標となりうるデータは極めて少ない。飲料水の寄与は0.5%以下であろう。しかしながら魚の重要性は全ての研究で支持されているわけではなく、未だ同定されていない重要なヒト暴露源がある可能性もある。PFOSへの暴露は前駆体やその他の暴露源による可能性もある。
そのような可能性のある暴露源は食品と関係するかもしれない(容器や調理器具)しハウスダストなどのように技術圏からの直接暴露によるかもしれない。
魚や水産物のデータに基づく食事からのPFOS暴露量は平均的消費者で60 ng/kg体重/日で、魚を多く食べるヒトでは200 ng/kg体重/日である。一方最近の研究では暴露量はもっと低いことが示されており、推定の不確実性を示している。
子どもから大人になるにつれて食品以外からの暴露経路の重要性が減少すると考えられている。食品以外からのPFOSの暴露の寄与は平均総暴露量の2%以下と推定される。魚をたくさん食べるヒトではもっと低いと考えられる。
PFOSは吸収されると排出が遅いので体内に蓄積する。PFOSの急性毒性は中程度である。亜慢性や慢性毒性試験では主な標的臓器は肝臓で、他に発達毒性が見られる。他の感受性の高い影響としてはラットやカニクイザルでの甲状腺ホルモンや高密度リポ蛋白質(HDL)濃度変化がある。PFOSにはラットに対する非遺伝毒性メカニズムによると考えられる肝腫瘍誘発性がある。
PFOS暴露された労働者における疫学研究では発がんリスクが高くなるという根拠は得られていない。血清T3やトリグリセリド濃度の増加は見られているが齧歯類やサルで見られたのは反対である。一般人に関する限られた疫学データからは出生時体重減少や妊娠期間減少リスクは示唆されていない。
カニクイザルでの亜慢性毒性試験からCONTAMパネルはTDI設定根拠となるNOAELを0.03 mg/kg体重/日とし、不確実係数200を用いてPFOSのTDIを 150 ng/kg体重/日とした。追加の不確実係数2は重要な試験の期間が比較的短いことと体内濃度速度論を補完するためである。
60 ng/kg体重/日の食事からの摂取量は150 ng/kg体重/日より少ないが、高暴露群では若干TDIを超過する。
CONTAMパネルは、PFOSの体負荷のかなりの部分が他の暴露源や前駆体に由来することは認識している。しかしながらヒトの体負荷に関する信頼できるデータがないため、不確実性を承知の上で定常状態に達したヒトと動物の血中濃度を比較することにした。NOAELにおけるサルでの血中濃度と一般人における血中濃度の差は200から3000の間である。この差があるのでCONTAMパネルは一般人におけるPFOSが有害影響を示す可能性は低いと考える。

PFOA
ヨーロッパでの食品中PFOAの分析結果は限られている(主に魚)。PFOA濃度は通常PFOS濃度より低い。PFOAは魚に蓄積するがPFOSより少ない。PFOAの食事以外からの暴露(主に室内暴露)は総暴露量の50%と高い。
魚はPFOAの重要な暴露源とみなされている。飲料水は16%以下の寄与と推定される。限られたデータに基づき、CONTAMパネルは指標となる食事からの暴露量は平均で2 ng/kg体重/日、高暴露群で6 ng/kg体重/日とした。
PFOAは吸収されやすく、排出は種や性により異なる能動輸送メカニズムに依存する。PFOAの急性毒性は中程度である。亜慢性や慢性毒性試験では主な標的臓器は肝臓で、他に発達毒性や生殖毒性が比較的低い濃度で見られる。ラットにおいて主に肝腫瘍頻度を増加させるが間接的/非遺伝毒性メカニズムによると考えられる。
PFOA暴露された労働者における疫学研究では発がんリスクが高くなるという根拠は得られていない。一部に血中コレステロールやトリグリセリド、甲状腺ホルモンの変化との関連が示されているが一定の傾向はない。最近の二つの研究で妊娠女性のPFOA暴露と出生時体重の減少との関連が報告されているがこれらは偶然によるものかPFOA以外の要因による可能性がある。
NOAELとしては雄ラットの亜慢性毒性試験の0.06 mg/kg/日を同定した。長期毒性試験ではNOAELがもっと大きい。多数のマウスや雄ラットにおける肝臓に対する影響の10%増加ベンチマーク用量の95%下方信頼限界値(BMDL 10)は0.3-0.7 mg/kg/日の範囲内である。従ってTDI設定のためにはBMDL 10の0.3mg/kg/日に不確実係数200を用いて1.5 microg/kg体重/日とした。
ヒト指標暴露量2 -6ng/kg体重/日は1.5 microg/kg体重/日より十分低い。
ラットにおけるBMDL10での血清濃度は職業暴露のないヨーロッパ市民の血清PFOA濃度より3桁高く、CONTAMパネルは一般人におけるPFOAが有害影響を示す可能性は低いと考える。但し発生毒性については不確実性がある。
最後にCONTAMパネルは食品や生体中のPFASについてのさらなるデータが、特に暴露傾向を探るために得られることが望ましいとしている。

(ペルフルオロのほうが正しいけどこれまでパーフルオロと書いてるので)