食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

雑誌からいくつか

  • 農学:世界を変えることのできる5人の農作物研究者

Nature 456, 563-568 (2008)
Agronomy: Five crop researchers who could change the world http://www.nature.com/news/2008/081203/pdf/456563a.pdf
世界の食糧危機を克服できる可能性を秘めた科学者を紹介する記事
小麦のさび病原因菌と闘うオーストラリアの分子生物学者Peter Dodds
小麦を多年草にして不耕栽培しようとするカンザスの農業環境主義者Jerry Glover
灌水量をへらし収量を上げる技術を開発している香港の植物生理学者Zhang Jianhua
キャッサバ改良計画を推進する米国のRichard Sayre
熱帯地方での米の収量を劇的に上げるためのC4光合成体を作ろうとしている分子生物学者Julian Hibberd

(Natureが遺伝子組換えを全面的に支持しているようにも見える記事を載せてる。潮目が変わった?相変わらず日本は取り残されている。)

  • 沈黙のコスト?

The cost of silence?
Natureのエディトリアル
Nature 456, 545 (4 December 2008) | doi:10.1038/456545a
南アフリカの間違った政策によるAIDS死亡者の解析は科学の主導者への教訓を残す政治主導者が間違えたことによるコストが定量化されることはあまりない。南アフリカの当時の大統領Thabo Mbekiの指導の下でおこったAIDSの流行のような、人々の命が犠牲になったような場合にはそのような疑問に科学的に答えることがさらに重要である。
今週P. Chigwedereらが発表した論文(J. Acq. Immun. Def. Synd. 49, 410 415; 2008)は南アフリカにおいて抗レトロウイルス薬が使われなかったことによる2000年から2005年の死者の数を33万人と推定した。南アフリカの経済学者Nicoli Nattrassが別の方向から推定した値と一致している(Afr. Affairs 107, 157 176; 2008)。そして35000人の赤ちゃんが不必要にHIV感染して生まれてきた。
Mbekiは9月に退陣し、その後継者Kgalema MotlantheはMbekiの主な共犯者である保健大臣のManto Tshabalala-MsimangとBarbara Hoganを交代させた。
南アフリカでおこった不必要な死亡は、今となっては悪名高い大統領の諮問機関によるものである。この委員会の不十分な報告書が、Mbeki大統領と内閣がAIDSとHIVの関係は疑わしいと主張することを可能にした。AIDSがHIVによるということを真っ向から否定する人たちと合意に到達するのは不可能だった。
Mbeki大統領は科学委員会の意見が一致しないことを根拠に抗レトロウイルス剤を使用しない政策を継続した。2006年後半になっても南アフリカの保健省は国際AIDS会議でニンニクとビートの根とレモンジュースがAIDSの流行の解決法だと主張していた。
今になってみれば、当時のような構成員からなる委員会は支持してはならなかったのだ。諮問委員会の設立を南アフリカのいくつかの科学団体が明確に支持したが、Mbeki批判によりやめた。Mbeki内閣とともに、この委員会にも結果への責任はある。この悲劇からは教訓を得られる。階級社会の歴史をもつ若い民主主義国家においては、さらに植民地となった過去があると、科学的組織は独立性を確保するだけでは不十分で、政治的闘争にかき消されないようにしなければならない。


  • 幸福は感染する

BMJプレスリリース
Happiness is infectious
http://www.bmj.com/content/vol337/issue7682/press_release.dtl#4
Framingham Heart Studyでは、21-70才の5124人の人生と健康について1971年から2003年までフォローした。参加者の血縁や友人、近所の人、一緒に働く人などの社会関係と精神衛生に関するデータから、幸せな人のそばにいると幸せになる可能性が高いことを見いだした。さらに幸福が感染するには物理的に近いことが重要である。
オープンアクセス
Dynamic spread of happiness in a large social network: longitudinal analysis over 20 years in the Framingham Heart Study
BMJ 2008;337:a2338
James H Fowler and Nicholas A Christakis
http://www.bmj.com/cgi/content/full/337/dec04_2/a2338
(ごはんは美味しく喜んで食べる人と食べたいな。)

  • 汚染ヘパリンによる有害事象アウトブレーク

NEJM
Outbreak of Adverse Reactions Associated with Contaminated Heparin
Published at www.nejm.org
December 3, 2008 (10.1056/NEJMoa0806450)
2007年11月19日から2008年1月31日までの期間にヘパリンによる有害事象113人の患者で152件を同定した。Baxter Healthcare社のヘパリンが最も強く反応に関連し、このヘパリンには過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)が含まれていた。疫学データや症状から、原因はOSCSであると結論した。
(一応確定ということらしい
これまでの経緯は
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/archive?word=%a5%d8%a5%d1%a5%ea%a5%f3