食品安全情報blog過去記事

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魚の性転換:汚染物質によるのか自然現象なのか?

ES & Tニュース
Sex-changing fish: caused by contamination or nature?
January 14, 2009
http://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/es8036912
2005年に南カリフォルニア沿岸でヒラメの雄に雌の性質がある(インターセックス)ことが報告されて、放流下水の汚染物質が魚の内分泌系に影響したのではないかという仮説が提唱された。その後の経緯のまとめ記事。
その時の結果は統計学的有意差はなく、数も少なかった。しかしいくつかの報告が仮説を支持しているように見えた。そこで2006年に南カリフォルニア沿岸水研究プロジェクトが設立されより大規模な研究が行われたが、その予備的結果はさらに困惑させられるようなものであった。ヒラメは健康そうに見えるが他の魚に比べるとホルモンレベルは異常なのである。
現在進行中の研究はNOAAも参加しhornyhead turbotを対象に調査している。この魚は堆積物中に棲み、移動せず、漁の対象でもないことから汚染物質が蓄積しやすく研究対象としては良いように見えた。しかし科学者はこの魚の生殖行動や内分泌についてはよく知らず、他にこの魚を研究している研究者もいない。3年が経過して海水や堆積物の分析や雄のヒラメの生殖腺の組織学的解析が多数行われた。373のヒラメのうちわずか1匹の雄の性腺から卵をみつけただけである。このことで研究者は本当に内分泌攪乱がおこっているのかどうかよくわからなくなっている。
下水排水からは数ppbレベルの多くの汚染物質が検出されている。海水中には検出される物質は少なく濃度も排水の400-1000分の1程度の低さである。堆積物中からはDDTやPCBsやPBDEsやノニルフェノールなどの界面活性剤などが検出されている。汚染物質と内分泌や魚の集団との関連付は難しいパズルである。
魚の性はいろいろな要因で変化する。ビテロゲニンはマーカーになりうるが、今まで考えられていたより雄に普通に存在するようで、一定数の精巣卵は魚集団全体を考えると有害影響を示すものではない。つまり我々は魚の自然な生長について知る必要があるということであり、hornyhead turbotについて今それをやっているのだ、とカリフォルニア大学リバーサイド校の毒性学者Daniel Schlenkは言う。
以下内分泌学者の反論など略
(環境系の雑誌でこんな感じなので、結局内分泌攪乱で魚がどうこうという話は何なんだろう)