食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

貝の海産毒 エソトキシングループ CONTAMパネルの意見

Marine biotoxins in shellfish Yessotoxin group[1] - Scientific Opinion of the Panel on Contaminants in the Food chain
3 February 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902314590.htm
エソトキシングループの毒素(YTX)は世界各地のカキやイガイやホタテやアサリなどのろ過摂食性の貝類に検出されている。それらは海の渦鞭毛藻Protoceratium reticulatumが作る。YTXは11の連続したエーテル環と1つの不飽和側鎖と2つの硫酸エステルからなるポリエーテル化合物で、90以上が知られているが完全に構造がわかっているのは数十である。最も重要な毒素は1a-ホモYTX、45-ヒドロキシYTX及び45-ヒドロキシ-1a-ホモYTXである。YTXは通常の調理温度では熱に安定であるようである。
YTXグループ毒素の毒性学的データは限られており、主にマウスでの急性毒性である。ヒトでのYTXによる有害影響報告はない。一部の国では以下のような毒性学的等価指数TEFが採用されている。1a-ホモYTX=1、45-ヒドロキシYTX=1、45-ヒドロキシ-1a-ホモYTX=0.5。少ない数のマウスの腹腔内投与での死亡率ではしっかりした根拠のあるTEFは設定できないので暫定的にこの値を用いる。
YTXの動物での慢性毒性データはなくTDIは設定できない。YTX毒素の急性毒性についてはヒトでの事例がないため動物のデータからARfDを設定することにした。
YTXの毒性作用メカニズムはよくわかっておらず毒性を誘発する分子機構も不明である。関係があるとされてきたのは4つの分子機構、すなわち細胞内画分のカルシウム移動修飾、細胞内cAMP濃度の変化、蛋白質処分の修飾、アポトーシスである。
経口による急性毒性試験では死亡や臨床的毒性徴候はみられていない。従ってYTXはLD50が100-500 microg/kg体重と報告されている腹腔内投与に比べて、経口では毒性が低いことを示す。
経口投与では7.5 mg/kgの単回投与で光学顕微鏡下で心毒性が観察されておりこの時の無影響量は5 mg/kgである。心筋の超微細構造変化がこれ以下の用量で一貫性なく報告されている。これらの変化は可逆的である可能性があり、酵素の血清中への漏出は伴わない。また光学顕微鏡では心筋傷害の徴候はない。従ってCONTAMパネルは光学顕微鏡で確認された心毒性のNOAEL 5 mg/kgが最も信頼できる用量として使うことにした。しかし超微細構造変化を有害影響とみなすべきかどうかについてはっきりしないため、デフォルトの不確実係数100に追加の2を用いてARfDを25 microg YTX当量/kg体重と設定した。
YTXの急性影響から保護するためには、健康リスク評価においては長期の平均的摂取量ではなく一度に食べる最大の摂取量を使うことが重要である。CONTAMパネルはこれを貝の身400gとした。
現在のEU規制値 1mg YTXでは400gの貝から摂るYTXは 400 microgとなり、これは体重60 kgの成人の場合6.7 microg/kgでARfD 25 microg YTX当量/kg体重より低く健康リスクはない。またARfD丁度のYTXを含む貝の濃度は3.75 mg/kgとなり、これは現行のEU規制値より上である。
現時点では妥当性を確認されたYTXの定量法はない。